「猫学入門」前編では、猫の行動から読み取れる心理や関係性について教えていただきました。続く今回は、「猫」という存在を俯瞰して語っていただきました。
《今回お話を伺った方》
今泉忠明先生
哺乳動物学者、ねこの博物館館長、日本動物科学研究所所長。著書・監修書に『最新ネコの心理』(ナツメ社)、『猫はふしぎ』(イースト・プレス)、『猫語レッスン帖』など多数。
猫は動物の「野性」を感じさせてくれる最も身近な存在
「犬は家畜化(人が飼い馴らすこと)されて長い歴史がありますが、猫は家畜化されてからまだ歴史が浅く、その分『野性』が多く残っているといえます。そういう意味では、猫は動物の野性を感じさせてくれる最も身近な存在といえますね」
―猫が夜中に猛ダッシュで走り回るのは、「野性スイッチ」がONになったせい。野生動物としての本能を垣間見せてくれるのが猫の魅力といいます。
ちなみに、猫より野性を多く残しているペットっていないんでしょうか?
「フェレットは野性を多く残しているペットですね。ですが“人に馴れる”という面では猫のほうが上でしょう。それにフェレットは基本ケージ内で飼う動物ですから、そこが猫とは大きな違いでしょうね」
―夜、ベッドで一緒に眠ったり、朝、「ごはんくれ~」と起こしに来たり。そういった触れ合いが楽しめて、かつ野性を感じさせてくれるペットは、やはり猫が一番のようです。
ちなみに最近では、ハリネズミなど新しいペットが増えているようですが、今後、猫のように野性味があり、かつ身近な動物が新たにペットとして登場するということはないのでしょうか?
「基本的に、猫や犬より大きい動物で家畜化できるものは、馬や牛などすべて古代エジプト人がはるか昔にすべて家畜化しているんです。古代エジプト人てすごかったんですね。ネズミサイズの小動物は、今後も新しく家畜化される可能性はありますが、中型・大型の動物がペットとして増えることはないでしょう」
―ということはつまり、今後も猫はペットの中で不動のポジションに立ち続けるということですね。
個人的には、タヌキやキツネなども特に子どものときはかわいいし、ペットにできないのかなあなどと思っていましたが、子どものときは馴れても成熟すると気性が荒くなり、とてもペットとして飼うことはできないとのこと。そう考えると、犬や猫ってとっても貴重なんですね。
今泉先生のお話は、動物好きにはたまらないものがあります…!
なぜいま、猫がブームなんだろう?
―昨今の猫ブームを、今泉先生はこのように分析します。
「犬の社会は、人間の社会とほぼ同じなんです。集団で行動し、力の強い者がリーダーになり、完全なヒエラルキーがある。一方、猫は基本的に単独行動で、ボス猫がいても絶対的な権力を持つことはありません。
人間社会にもまれて疲れた人たちが、自分たちとはまったく違う猫たちの自由な振る舞いを見ることで、癒されたり開放的な気分になるのではないでしょうか」
―この日の猫カフェMoCHAも多くの男女でほぼ満席。皆さん、自由気ままな猫たちを見て、癒されているのかもしれませんね。
動物学は人間学でもある
「動物学をやっていて面白いと思うのは、動物たちの生態を知ることで、人間の生態も浮き彫りになることなんです。人間では『当たり前』のことが、他の種では『当たり前』でない。例えば人間の視界は3原色ですが、猫はほとんど色が見えず、モノクロの世界です。でもそれは夜行性の猫にとって、色が見えてもメリットがないため。夜、暗い中ではどんな色もほぼモノクロにしか見えませんよね。
ですから色を見分ける能力があっても仕方ない。その代わり、猫は少ない光でも物が見える能力を持っています。逆に考えると、人間は昼行性だから色が見える。特に赤い色がわかるのはサル類が熟した果実を見分けるための能力といわれています」
―動物を知ることは、客観的に人間を知ることにもつながる。だから動物学は面白い。思いがけず、人間学にまで話が及んだ一日でした。
今泉先生の近著『猫はふしぎ』は絶賛発売中!
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《取材させていただいた場所》
猫カフェMoCHA(池袋店)
池袋駅西口徒歩1分。天然素材に囲まれた柔らかな雰囲気の店内に、マンチカンやペルシャ、スコティッシュフォールドなどさまざまな猫たちが思い思いに過ごしています。