白猫は最強なのにビビリ!?白猫の性格や特徴

純白の被毛をもつ白猫。美しく目立つ存在ですよね。でも、猫のもともとの毛柄はキジトラのみ。白猫を含む、それ以外の毛柄はすべて突然変異で生まれたものなのです
今回は、白猫をつくる遺伝子や瞳の色の秘密、白猫の性格に迫ります。

※詳しくは、キジトラ猫は野性的!?キジトラの性格や特徴の記事でご紹介しています。

白色の動物は比較的生まれやすい

白になるのは白変種、黒になるのは黒変種と呼ばれ、動物全般に比較的生まれやすい色の変化。ホワイトタイガーやホワイトライオンも白変種です。

ホワイトタイガー。瞳が青いです
ホワイトライオンの赤ちゃん。かわいい…!

白変種はアルビノとは異なります。アルビノは遺伝子疾患によりまったく(あるいはほとんど)メラニン色素を作ることができないため、瞳も毛細血管が透けて赤くなるのが特徴です。

白変種はメラニンを作ることができるため、瞳は赤くありません。上のホワイトタイガーも、黒い縞模様がありますよね。紫外線から細胞を守るためのメラニンをまったくもたないアルビノは、日光に当たるとヤケドしてしまいますが、白変種はそのようなことはありません。

 

白猫の遺伝子は最強!

全身を白くする毛色遺伝子はW(Whiteの頭文字)といいます。このWの遺伝子は他のすべての毛色遺伝子より強いという特徴があります。他に黒の遺伝子をもっていようが、キジトラの遺伝子をもっていようが、Wの遺伝子があればすべて抑えて白猫にするのです。

「メンデルの法則」を覚えていますでしょうか?毛色の遺伝はメンデルの法則で決まります。全身を白くする遺伝子Wを2つもった白猫と、黒くする遺伝子Bを2つもった黒猫の間に生まれる子猫は、両親から1つずつ遺伝子をもらうためすべてWBの組み合わせになります。Wは他のすべての遺伝子より強く働くため、全員が白猫になります。
*毛柄を決める遺伝子は多くあり、法則はもっと複雑ですが、ここではわかりやすく説明するために簡略化しています。

白猫の集団。Wの遺伝子は強いので、白猫からは白猫が多く生まれます。

でも、そのわりには白猫ってあまり見かけない気がしませんか?ちなみに私はここ数年、全身白の野良猫を見かけていません。

あるデータによると、野良の白猫は全体の3%以下だそうです。白猫は希少なんですね。これには、屋外では白猫は目立ちやすく、さらにWの遺伝子が聴覚器官に影響を及ぼしやすいため、生き残りづらいのではないか、という説が語られています。

野外での白猫と黒猫。やはり白猫は目立ちますね。敵に狙われたり、狩りも成功しなさそう…汗

生き残りづらいのに白変種がゼロにはならない理由について、おもしろい説があります。太古から地球にはくり返し氷河期が訪れていました。氷河期にはあたり一面雪景色になります。雪景色のなかなら白変種は保護色となります。ホッキョクグマがその一例。地球にまた氷河期がやってくるその日のために、少ないながらも白変種の遺伝子が受け継がれているのだ…というのです。真偽は定かではありませんが、なるほどと思いました。現在も、雪国なら白猫は多く存在するのでしょうか? 気になるところです。

しかし、そもそも猫は暑い国出身の動物。雪のなかではいくら保護色だとしても生きづらそうですよね…。

雪のなかの白猫は保護色となって目立ちません。が、やはり寒そう…ちなみにこの写真はフィンランド。

 

白猫は瞳の色がバリエーション豊か

同じ白猫でも、メラニンの量は微妙に異なります。メラニンがごく少ないと瞳は青くなり、多めだとイエローに、その中間だとグリーンになります。野生色であるキジトラの瞳は必ずゴールドになるため、白猫の瞳はバリエーション豊かといえるでしょう。

●ブルー

●グリーン

●イエロー

●オッドアイ(金目銀目)

左右でメラニン量が異なると、片目が青で片目がイエローなど、左右で違う色になります。このような瞳をオッドアイ(虹彩異色症)といいます。

 

白猫には聴覚障害が多い。だからビビリになる?

全身を白くするWの遺伝子は、聴覚器官にも影響を及ぼすことがわかっています。音を聴くために必要なある器官の形成ができず、難聴になってしまう傾向があります。両目が青い白猫は65~85%、片目が青い白猫は約40%(この場合、青い目の側の耳だけが難聴になることが多い)、両目とも青くない白猫は20%の割合で難聴になるそうです。

猫の五感のなかで最も優れているのは聴覚です。野生の猫がネズミなどの獲物を狩ることができるのも、優れた聴覚あればこそ。聴覚障害のある白猫は、野生では獲物が捕れず生きてはいけなかったでしょう。白猫が少ないながらも存在できるのは、人が飼育するようになったから。

しかし現代でも、音で危険に気づきにくい白猫は交通事故に遭いやすいなどの危険があります。そのため、生きていくためには慎重で神経質にならざるを得ません。白猫にビビリな性格が多いのはこのためといわれます。

上記のような理由のほかに、神経伝達物質との関連性も考えられます。神経伝達物質のドーパミンはメラニンと同じ経路で作られるため、メラニンの量と性格には関連性があるという説があるのです。人間でも、メラニンの少ない青や緑の瞳をもつ人は内気で慎重な性格が多いというデータがあります。英語の「blue-eyed」(青い目をした)には「内気な/傷つきやすい」という意味があり、アニメでも内気なキャラクターは青い目で描かれることが多いそう(例えばシンデレラ)。人と同様に、メラニンの少ない白猫、特に青い目の白猫は内気で慎重なのかもしれません。

 

白猫の体の特徴

●白猫の鼻と肉球はかならずピンク色
メラニンが少ない白猫の皮膚は必ずピンクになります。つまり鼻や肉球はピンク。これを嫌いな人はいませんよね…!
白猫のピンクの鼻とピンクの肉球

●子猫のうちだけあるキトンキャップ
白猫にはしばしば、子猫のときだけ頭にうっすらと色がついていることがあります。成長とともに消えるので「ゴーストマーキング」「キトンキャップ」などと呼ばれます。Wの遺伝子が他の毛色を抑える力が、幼いときは完璧ではないということでしょうか。

 

白猫図鑑

最後に、いろんな白猫たちを見てみましょう。

●もちろん長毛の白猫も
長毛の白猫。キレイですね…!

●珍しいアルビノの子猫
瞳が赤いのでアルビノとわかります。猫のアルビノはシャムなどの品種でときどき見られるそうです。

●チンチラは白猫ではない

ペルシャのチンチラなどは「シェーデッド」と呼ばれる毛色。似ていますが、白猫とは異なります。シェーデッドは毛のほとんどが白いのに毛先のみに濃い色があるため、独特のニュアンスが生まれるのが特徴です。

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富田園子

編集&ライター、日本動物科学研究所会員 幼い頃から犬・猫・鳥など、つねにペットを飼っている家庭に育つ。編集の世界にて動物行動学に興味をもつ。猫雑誌の編集統括を8年務めたのち、独立。編集・執筆を担当した書籍に『マンガでわかる猫のきもち』『マンガでわかる犬のきもち』『野良猫の拾い方』(大泉書店)、『ねこ色、ねこ模様』(ナツメ社)、『ねこ語会話帖』『猫専門医が教える 猫を飼う前に読む本』(誠文堂新光社)など。7匹の猫と暮らす愛猫家。 ▶HP:富田園子ホームページ ▶執筆&編集した本: 『マンガでわかる…

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