愛犬を撫でていて、指に当たるものがあるとドキッとしますよね。しこりの多くは良性ですが、なかには命に関わる悪性のものもあるので、素人判断は危険。愛犬に気になるしこりを見つけたら、動物病院で相談を。今回は「しこり」ができる病気について取り上げます。
いちばん気づきやすいのは、飼い主さん
しこりは、切除するにしても小さいほうがいいので、早期発見が重要。皮膚にできたしこりは、飼い主さんがいちばん気づきやすいため、チェックを習慣化しましょう。とくにメスの場合、6~7歳になると乳腺腫瘍が増えてくるため、定期的に胸を上から下まで触って確認を。ブラッシングだけだと皮膚まで見ないことがありますが、自宅でシャンプーをすると、全身に触るし皮膚も見えるので気づきやすくなります。サロンを利用するなら、お迎え時にトリマーさんに、いつもと違うことがなかったかを確認するといいでしょう。
しこりの診断と治療法とは?
しこりは、その大きさ、形、色、固さで、病気を判断することは難しく、切り取って病理組織検査に出さなければ確定診断はできません。通常は、獣医師の経験値による判断と、必要に応じて「針生検」を行います。
針生検は、しこりの一部を注射器で吸い出して顕微鏡で調べる検査で、その場で検査結果も出ますし、犬にも大きな負担はありません。ただし針生検は、針に入ってきた細胞をみているだけなので、結果が「問題なし」でも、100%大丈夫とは言い切れません。危険なのは、検査後、しこりがどんどん大きくなっているのに、飼い主さんが大丈夫だと信じ込んでいるケースです。しこりが悪性の場合、発見時の状態のままということはほとんどありません。悪性リンパ腫なら数が増え、乳腺腫瘍なら大きくなります。一度、問題なしの診断が出ても、状況が変わることがあるので、定期的に診察を受け、経過をみていくことが大切です。
しこりへの対処は、外科的手術で切除するか、そのままにしておくかの二択。高齢で麻酔を避けたい場合は、レーザーで焼き切ったり、ドライアイスで凍結して壊死させる方法などもあります。
しこりで考えられるのは、こんな病気
■イボ
老犬ならイボが1個や2個あるのは普通です。急に大きくなったりしなければ、そのままでも問題ありません。
■表皮嚢胞
皮膚の下に袋状のものができ、皮脂や古い角質が溜まるのが表皮嚢胞。良性ですが、大きくなって弾けることがあります。シュナウザーやシーズーなど皮脂の分泌の多い犬種によくみられます。
■悪性リンパ種
臨床所見と針生検で診断します。全身の病気となるため、切除して終わりではなく、抗がん剤治療が中心に。ただし完治は難しく、どれだけ延命できるかという治療になります。発見からの進行が早く、数ヵ月でリンパ腫が増え亡くなることもあります。ゴールデン・レトリーバーなどに多い病気です。
■乳腺腫瘍
乳腺腫瘍には良性と悪性があり、その比率は半々です。早期発見なら米粒程度ですが、時間とともに大きくなり、リスクも高まります。1ヵ所に乳腺腫瘍ができると多発するケースが多く、根治のためには2~3回に分けて乳腺を全摘出することが望まれます。
乳腺腫瘍になりやすいのは未避妊の犬で、予防目的で避妊手術をするなら、2回目の発情前、できれば初発情前に行えばより高い効果が得られます。
■脂肪腫
ほとんどが良性で、触るとプニプニと弾力があります。太っていることとは関係なく、痩せていてもできます。通常、痛みはありませんが、できる部位によっては擦れたり、引きずったりして痛むことがあります。大きくなりすぎると自壊して出血したり、犬が気にして舐めまくり、ぐしょぐしょにしてしまったり。そのままでも命の危険はありませんが、生活に支障を来すようなら、切除したほうがいいでしょう。
■組織球腫
若い犬や大型犬種に多い良性腫瘍です。自然になくなることも多いですが、なかには急速に大きくなって自壊を繰り返したり、自然退縮しないものもあります。「何かできたなと思ったら血だらけになりました」と、びっくりして来院される飼い主さんがほとんど。大型犬に多くしこりのサイズも大きいため、自壊すると派手に出血します。若いコが多いので、基本、切除することが多いです。
■肥満細胞腫
犬に多い腫瘍で、再発も多く命に関わる危険なしこりです。皮膚型と内臓型があり、消化管にできると、肥満細胞から放出される大量のヒスタミンが胃酸の分泌を刺激して、胃炎や胃潰瘍を起こしやすくなります。
皮膚にできた肥満細胞腫は、触った感じは脂肪腫と似ていて、触診や見た目では区別がつきにくいため、診断には針生検を行います。手術は、しこりと正常な組織との境目が曖昧なため、他のしこりより広範囲に切除しなければなりません。
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