愛犬の異常な“水のがぶ飲み”、疑われるのはこんな病気![獣医師コラム]

暑い夏の盛りや激しい運動の後でもないのに、愛犬が水をがぶ飲みしていたら…。単にのどが渇いて一気飲みしているだけかもしれませんが、慢性疾患が出始める6~7歳以上になると、病気の可能性も否定できません。今回は、「多飲多尿」症状がみられる病気について。いつもと違う飲み方をしていて気になるときは、一度、動物病院で健康診断を受けましょう。

高齢期に多い「多飲多尿」がみられる病気

【糖尿病】
インスリンが十分に分泌されなかったり効きが悪かったりして、細胞内に糖分を取り込めなくなり、血糖値が異常に高くなる病気です。血液中の大量の糖分を排出しようとおしっこの量が増え、失った水分を補うために、たくさん水を飲むようになります。次第に食欲はあるのにやせてくる、嘔吐や下痢などもみられるようになり、進行すれば命に関わります。

【慢性腎臓病】
猫ほど多くありませんが、猫より重症なことが多いです。老化に伴う腎機能の低下で、必要な水分が再吸収できず大量のおしっこが出るため、それを補うためにたくさん水を飲みます。進むにつれ、口から水を摂るだけでは足りず、皮下点滴が必要になることも。血液の濾過も十分にできず、老廃物や毒素が体内に蓄積されて尿毒症を起こします。

血液検査でも異常が出るので、フィラリア検査などのタイミングで調べておくといいですね。腎臓の数値は食事が影響するので、その場合は朝食抜きで受診を。

【クッシング症候群】
副腎皮質ホルモンの過剰分泌によって起こる高齢犬に多い病気で、アレルギー疾患などによるステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の長期使用が原因になることもあります。多飲多尿以外に、ビール腹のようにお腹が膨れたり、かゆみはないのに毛が抜けて薄毛になるといった特徴的な症状も。完治は難しく、治療は原因や進行状態に応じたケースバイケースとなります。

【子宮蓄膿症】
子宮内に膿がたまる病気で、発情から2か月後ぐらいに発症することが多いです。感染菌がつくる毒素が、体内の水分量を調節する抗利尿ホルモンの働きを止めてしまうため、多飲多尿に。また食欲低下や陰部から膿が出るなどの症状も出てきます。
お腹の中で膿がはじけてしまうと腹膜炎を起こして命に関わります。子宮蓄膿症と診断されたらすぐに手術になるので、2~3日様子を見ている猶予はありません。避妊手術をしていない高齢犬はもしもに備えた心の準備を

水のがぶ飲みが引き金となる病気も

【胃拡張・胃捻転】
胃拡張・胃捻転症候群は、食後の胃内にガスが大量発生し、膨れ上がった胃が捻転(ねじれ)を起こすもの。お腹が膨れる、吐こうとしても吐けない、荒い息をするなどの症状がみられ、緊急処置が必要な病気です。水のがぶ飲みや食後の激しい運動などが引き金となりやすく、大型犬や胸の深い犬種(サイトハウンドなど)はとくに注意が必要です。

運動は食後30分~1時間経ってから。運動中に水を与えるときはがぶ飲みをさせない。心がけることは人と同じですね。

日頃から、しっかり水を飲ませる配慮も大切

多飲多尿を見逃さないことは重要ですが、逆に、日頃から愛犬に必要な水をしっかり飲ませる配慮も大切です。

●犬が水をこぼさないようにと、ボトル給水器を使用している方も多いのですが、水が少量しか出ないので、飼い主さんが見ていられるときは、お皿のほうがおすすめ。

●大型犬や、首や腰が弱った高齢犬などは、お皿は床置きではなく台の上に

多頭飼育なら、複数の場所に水飲み場を。

●水は常温がよく、水道水でOK。

●水を測って与える人はほとんどいませんが、健康な犬の1日の摂水量は体重1kgあたり50cc程度がめやす。(季節や気温などによっても変化します)

ふだんから、愛犬の水の飲み方を注意して観察し、異常に気づけるようにしておきましょう。

 

関連リンク

▶Petwell犬の病気事典「犬の糖尿病」

▶Petwell犬の病気事典「犬の腎不全」

▶Petwell犬の病気事典「犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」

▶Petwell犬の病気事典「犬の子宮蓄膿症」

▶Petwell犬の病気事典「犬の胃拡張・胃捻転症候群」

 

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箱崎加奈子

獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルクリニックまりも 院長 麻布大学獣医学部卒。 気軽に立ち寄れるペットオーナーのためのコミュニティスペースを目指し、「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」を東京都世田谷区、杉並区に開業。病気はもちろん、予防を含めた日常の健康管理、ケア、トリミング、預かり、しつけなどを行う。2020年よりピリカメディカルグループの運営会社 株式会社notに参画。現在、ピリカメディカルグループ総院長を務める。 ▶アニマルクリニックまりも ▶女性獣医師ネットワーク

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