愛犬のジュウザがついに13歳を迎えました。シニアにさしかかった5年ほど前から何度も2頭目を検討し、何度も見送ってきました。世話の時間や医療費を考えるとなかなか踏み切れなかったんですよね。
主に私のペットロス対策が目的だったので、急ぐことはないか、と思っているうちに、ジュウザはすっかり老犬に…。最近は若返り対策として2頭目を考えるようになりました。元気いっぱいの子犬は私もジュウザも大変そうなので、現実的なのは成犬?しかし、どこからどのように迎えればいいのでしょうか。
犬の譲渡会に関わる一般社団法人Do One Goodの松原賢さんと、Dog Shelterの片岡美奈さんにうかがいました。
〈教えてくださった方〉
一般社団法人Do One Good 理事 松原賢さん
「ペットとの出会いの場所」を提供する『Do One Good PARK』を運営している。複数の動物保護団体と連携することで、決まった場所で決まった時間に譲渡会(アダプションイベント)を開催。保護犬を「かわいそうな犬」ではなく、「これから幸せになる犬」と考え、身近な存在になるように周知に努めている。Do One Goodでは、飼い主さんと犬が楽しめる『PET DAY』や、動物ボランティア勉強会『フォスターアカデミー』(主催:一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル)も企画している。
▶Do One Good PARK
Dog Shelter 代表 片岡美奈さん
駒沢エリアを拠点にしている犬の保護団体。ブリーダーの繁殖場にいた犬や、東京都動物愛護相談センターに収容された犬を保護し、新たな家族のもとへ送り出している。片岡さんはドッグトレーナーとして犬の心身のケアなども担当。一般家庭の預かりボランティアが保護犬の世話を行っているため、譲渡後も新たな家庭に慣れやすいのが特徴。譲渡後のアフターフォローも随時受け付けている。
▶Dog Shelter
成犬はどこに行けば会える?
ペットショップやブリーダーのところで出会えるのは、ほとんどが子犬です。成犬に必ず会えるのは、動物保護団体によって開催されている譲渡会や、Webの里親募集サイト。実際にたくさんの犬に会ってみたいなら譲渡会がよさそうです。今回は青山ファーマーズマーケットで開催されている、Do One Good PARKに行ってきました。
Do One Goodと連携している保護団体は約30団体。そのうち毎月譲渡会を行っているのは約10団体。青山に加えて4箇所の地域で開催しています。青山に来る方はファミリー層が多く、外国人も見かけます。
青山ファーマーズマーケットは、農家の方を中心に料理人、職人、都市部住人が参加する食のコミュニティです。そこで譲渡会を開催することになった理由を松原さんにうかがいました。
「Do One Goodの理事である黒崎さんが、青山ファーマーズマーケットの企画者なんです。市場の流通に乗らない規格外の野菜などを販売する場として始まりました。『見栄えがいまひとつでもおいしい野菜は、血統書がなくてもかわいい保護犬に似ている』という発想から、譲渡会も開催することになりました」
犬の年代別の特徴や、保護される前にいた環境の違い
多くの保護犬を世話してきたDog Shelterの片岡美奈さんによると、犬の年代によって特徴やメリットがあるそうです。
「子犬は育てる楽しみがあると思います。性格がまだ定まっていないこともあるので、成長と共に意外な一面が出てくるかもしれませんね。成犬はある程度トレーニングができています。保護団体が性格や病気、アレルギーなども把握しているので、未知数の部分が少ないこともメリットでしょう。老犬は運動量が減っているので、穏やかな時間を一緒に過ごせることが特徴です。介護が始まっても、それをやりがいと感じる方もいらっしゃいます」
この日会場に来ていた犬たち
譲渡会では子犬が人気を集める一方、老犬に「幸せな時間をあげたい」と希望する飼い主さんもいるそうです。
Dog Shelterで保護する犬は、繁殖場が7割、保健所が3割です。片岡さんは、以前の環境によってさまざまな違いがあると言います。
●繁殖場の犬
・家庭で暮らしたことがない、人とふれあったことがほとんどない
・成犬や老犬でも、子犬のように知らないことが多い(トイレ、散歩、やってはいけないイタズラ、など)
・小型犬の純血種が多い
●保健所の犬
・家庭で暮らしていた犬が大半
・良くも悪くもくせがある(他の犬に吠える、男性が苦手、留守番ができない、など)
・小型犬もいるが引き取る団体が少ないシニアや中型犬の雑種が多い(東京都の場合)
「繁殖場の犬はとても素直な子が多いですね。子犬のように知らないことばかりで、どんどん吸収してくれるから教えがいがあります。譲渡会に出る前に、ひととおりの基本的なトレーニングを行います。保健所の犬は人や物事に慣れている反面、困ったくせや苦手な物事があることも。譲渡するまでにできるだけ直せるように練習します」
飼い主と犬のミスマッチを防ぐために行っていること
Dog Shelterでは飼い主さんと犬のマッチングを重視しています。例えば、小さいお子さんがいる方が元気すぎる犬を、一緒にジョギングしたい方が運動の苦手な犬を選ぼうとしている場合は、団体からアドバイスをしているそうです。
「犬の性格がわかっていたほうがミスマッチは起きにくいんです。保護した犬は最低でも2週間ほどは様子を見てからWebに情報をアップしたり、譲渡会に連れて行ったりします。犬も最初は気を使うため、本来の性格が出るまでに時間がかかることもあるんですよ(笑)」
譲渡後に家族のアレルギーや、犬の病気が明らかになることもあります。しかしそのリスクは、ペットショップやブリーダーのところから迎える子犬と変わりません。
「心配なことがあれば、ドッグトレーナーがいる保護団体を選んでみてはどうでしょう? アフターフォローの相談にも乗ってもらえると思います」
迎える前に相談する役割を担いたい
マッチングが大切なのは、飼い主さんと犬だけではありません。松原さんによれば、飼い主さんと保護団体も同じだそうです。
「例えば、飼い主さんが希望する犬種を扱っていない、単身者や高齢者への譲渡を行っていない、譲渡の条件が厳しい、といった団体もあります。理由あってのことですが、犬と暮らすのが特別なことになってしまうかもしれません。
Do One Goodでは寛容さを持って考え、飼い主さんと保護団体の間に入って相談役になれたら、と思っています。保護犬猫を家族に迎え入れたいという方から個別にお問い合わせいただければ、合いそうな団体をご紹介します」
確かに「犬を迎えたい!」と思ったとき、相談できるところはなかなかありません。Do One Goodのような、飼い主さんと保護団体の中間支援団体に相談するのも一つの方法ですね。
里親になった飼い主さんが犬を連れて遊びに来ることも。「譲渡会にいたときとは犬の表情が違うんです。幸せそうな様子を見られるなんて、いいとこ取りだなって思います(笑)」と松原さん。
最近は譲渡会が広まり、保護犬を迎えることも特別なことではなくなってきました。それに伴い、松原さんは誤った認識が広まっていることを懸念しています。
「無料で純血種の子犬をもらえるところ、と思われてしまうことがあるんです。せっかく譲渡会に足を運んでくださったわけですから、ご縁やマッチングを大切にして成犬や老犬にも目を向けてほしいと思います」
成犬は2頭目、初心者に向いている?
我が家に2頭目を迎えることを検討したとき、2歳〜5歳を想定していました。ある程度落ち着いていて長く一緒に暮らせそう、というのが理由です。もちろん、何よりも先住犬のジュウザと相性がいいことが条件です。今回お話をうかがって、むしろ2頭目にこそ性格がわかっている成犬が向いているように思いました。
ちょっと意外なことに、成犬は初めて犬を迎える方にも向いているそうです。
「初心者の方は『自分にどんな犬が合いますか?』と相談していただきたいですね。性格がわかっている成犬なら、団体からいろいろなアドバイスもできます」と片岡さん。
不安な方は、保護犬の一時預かりのボランティアから始める方法もあります。
「預かった犬は半年程度で入れ替わるので、いろいろな犬と暮らす体験ができます。保護団体の方に聞くと、ボランティアの方は最初に預かった犬をそのまま愛犬として迎えるケースが多いとか。Do One Goodでは動物ボランティアの勉強会を開催しているので、まずはそちらで学んでみるのもおすすめです」と松原さん。
寝ている時間が多くなったジュウザ。この穏やかな時間を共有できるような成犬を迎えるかもしれません。
近年、犬との出会い方や暮らし方は多様化しています。犬を迎えるとき、今はペットショップとブリーダーが大半ですが、いずれは譲渡会で、成犬や老犬を選ぶことも選択肢の一つとして自然に考えられるようになるかもしれませんね。