雨や酷暑で散歩に出られない愛犬に、自宅でストレス解消をしてあげたい!そう願う飼い主さん、必読です。今回はドッグトレーナーの倉岡麻子さんに、愛犬が自宅で心身ともに心地よい充足感を得られる“飼い主との、とっておきのコミュニケーション術”の数々を教えていただきました。
ちょっとしたゲームから、筋トレ、スキンシップまで。ポイントは、「普段やらないことをする」です!
INUDOG代表 倉岡麻子さん
埼玉県のドッグトレーニングスクールINUDOG代表。アメリカのサンディエゴにて嫌悪刺激を使わないドッグトレーニングを約3年間学び、帰国後はドッグトレーナーとして独立。出張トレーニングをメインに、預かりレッスンなどを行っている。専門学校の非常勤講師も務める。
落ち着いた犬に育てるには室内での過ごし方が大切!
皆さんは自宅で愛犬と、どんな風に過ごしていますか?
「室内では心身ともにリラックスして過ごせるのが、犬にとって一番ストレスがかからない状態なんです。だから、散歩できないからと、室内で運動がわりにガンガン遊んであげる必要はないんですよ。それどころか、家で興奮を高める経験を重ねた犬は、逆に自宅でも落ち着けずにストレスが高い状態が継続してしまう危険性もあるんです」と、倉岡さん。
なるほど。自宅ではあくまでも落ち着いた状態でいられるように、飼い主は日頃から愛犬を導いてあげるのが大切なんですね。
「飼い主さんが愛犬を室内遊びに誘うときは、犬が落ち着いているときに。これが、鉄則です。犬の眠りは人間と違って浅いので、寝ている犬を起こしても構いません。『ねぇねぇ、遊ぼうよ~』といった犬の催促に応じず、飼い主さんの発案と発信で遊び始めてくださいね」
この原稿を執筆中の飼い主の足元で眠る愛犬。このような状態のときに遊びに誘うのがベストです!
ちなみに、掘るのが大好きなテリアなのでジェルマットは少し心配ですが、このアルミの冷却グッズは破壊不可能なので留守番時にも安心。暑い季節に愛犬が涼を取るのに欠かせないアイテムのひとつです。
運動量が減る季節だからこそ室内で楽しく筋トレ!
興奮を高めずに愛犬の心身に心地よい刺激を与えるには、ゲーム感覚の筋トレがおすすめ。
「この時期、散歩量が減って室内で寝てばかりいると、犬の筋肉が衰えがちです。特に、後肢の筋肉をあまり使えていない犬が多いようです」と経験談を語る倉岡さんが、ゴールデン・レトリーバー(イングリッシュ・クリーム)の愛犬わたる君にもよく行うという、後肢を鍛える筋トレを紹介してくださいました。
【ぐるん】
1)四足で立った状態の愛犬の鼻先に、おやつの匂いを嗅がせます。
2)ゆっくりと手を動かし、匂いを嗅がせながら愛犬が後肢を使って回れるように誘導。
3)1周できたらご褒美におやつをあげます。
愛犬がスムーズに動けるようになったら、「ぐるん」などのコマンドを定着させましょう!
ポイント:左右の筋肉をバランス良く使えるように、左回り、右回り、両方同じ回数行いましょう。
【台の上で、ぐるん】
ぐるんゲームの進化バージョン。
鼻先のおやつと飼い主さんの動きで、愛犬が前肢を台の上に載せたまま後肢をコンパスのように動かしながら円を描けるように、上手に誘導しましょう。
台は100円ショップにある踏み台など、愛犬のサイズに合った使いやすい物でOK。
【バック】
1)愛犬と飼い主さんが真横に並びます。
2)愛犬が立っている状態で鼻先におやつの匂いを嗅がせながら、一緒に後ろに下がります。
3)「バック」などとコマンドをつけながら、愛犬が数歩下がったらご褒美におやつをあげます。
ポイント:まっすぐ後ろに下がれない犬には、壁を使うと簡単。飼い主さんと壁の間に愛犬を挟むようにして練習しましょう。
進化編)
犬の真正面に立って「バック」させます。必要に応じておやつで上手に誘導してあげてください。
これらはあくまでも、飼い主さんと楽しみながら行うゲームのような筋トレです。ひとつひとつの時間は短めに、愛犬が飽きないうちに終了しましょう。
遊んだあとに大切なスキンシップで落ち着く時間
「室内でゲームや筋トレやトレーニングをしたあとは、またすぐに愛犬が落ち着けるようにしてあげるのが重要です。愛犬とのスキンシップの時間をたっぷりとってあげましょう」と倉岡さんは語ります。
おやつをあげながら仰向けにさせて、お腹の皮膚の状態をチェック。
使った筋肉をほぐすマッサージをしてあげたり、なでてあげたり……。愛犬が気持ちよさそうにうっとりしている様子を見るのは、飼い主としてもうれしいものです。
倉岡さんは、散歩に行けない日はグルーミングなどを念入りにしているそうです。「湿度が高くなると耳や皮膚のトラブルが起こりやすくなるので、耳の中や皮膚をこまめにチェックしています。爪切りや歯のケアをすることもありますよ」とのこと。
やさしくなでて愛犬がリラックスしたら、歯のチェックやケアをするのもいいですね。
愛犬が爪や口の中を触られるのが苦手な場合、おやつを使いながら慣れさせるレッスンを行うのもよいでしょう。無理せず、やさしく、ゆったりとした雰囲気の中で。
興奮度を上げすぎないゲームでワクワク!
最後は倉岡さんおすすめの、室内で行うのに最適なゲームをご紹介します!シェーピング(形を徐々に作っていくという意味)ゲーム、2種類です。
愛犬が望む行動を取ったときには、「YES!」や「そう!」などの合図か、クリッカーを鳴らしてOKサインを出すのがポイント。
【付箋タッチゲーム】
1)愛犬に鼻でタッチしてもらいたい場所に、付箋を貼ります。
2)付箋に愛犬が近づいたら、「YES!」かクリッカーでOKの合図を出します。
3)愛犬が付箋に鼻でタッチしたら、OKの合図とご褒美をあげます。
【ベル鳴らしゲーム】
1)突起を押すと「チン」となるベルを事前に用意。愛犬のそばに置きます。
2)愛犬がベルに近づいたら、「YES!」かクリッカーでOKの合図を出します。
3)ベルを愛犬が足でタッチしたら、OKの合図とご褒美をあげます。
「これらのゲームをしているとき、愛犬があくびをしたり耳を掻いたりし始めたら、ゲームのルールがわからず混乱しているか、飽きてストレスを感じている証拠。ゲームは短時間で、愛犬が楽しめる範囲に留めておきましょう。ゲームを終えたら、しつこいようですが再びリラックスタイムを十分にとって、愛犬とのコミュニケーションを終えてくださいね」(倉岡さん)。
普段とは違うコミュニケーションの時間がゆっくりとってあげられるのは、散歩に出られない日のメリットとも言えるでしょう。知育玩具などで愛犬にひとり遊びばかりさせず、遊びの時間と落ち着く時間とのメリハリをつけつつ、室内でのひとときを愛犬との交流を深めながら一緒に楽しみたいと、取材をとおしてあらためて感じたのでした!