犬にも厄年があり、小型犬では7歳と13歳などとも巷で言われているようです。人間同様、中高年のゾーンに入ってくる時期に、健康上のトラブルが出てくるからでしょう。
そんな厄年を目前に控えた愛犬ミィミィ(ノーリッチ・テリア、メス、6歳10カ月)のために、初の本格的なペットドックを受けることに!
今回は、犬の健康診断の受診方法や手順などをご紹介します。
ACプラザ苅谷動物病院 取締役院長 白井活光 先生
ACプラザ苅谷動物病院では、会員制サポートシステムの“ベッツケアプラン”を用意しており、約35%の飼い主さんが入会されています。入会されると、獣医師が愛犬ごとに適したオリジナルのケアや各種検査をプランニングするほか、様々な特典を受けられます。また、ACプラザ 苅谷動物病院にはCTセンターもあり、CT検査装置を利用しての検査も可能です。『末永く幸せに長生きしてほしい』と願うすべての飼い主さんのお役に立てるよう、しっかりとしたサポート体制を整えております。
▶ACプラザ苅谷動物病院
どんなプランをチョイスするか?
幸いなことに、これまで一度も大きな病気をせず、予防接種とフィラリア予防とノミ・ダニ予防のためにしかほとんど動物病院を訪れなかったミィミィ。「だからこそ、一度しっかりと健康診断をしてもらうべきなのでは?」と、ふと思い、人間ドックのように、レントゲンや超音波(エコー)検査なども含めた犬ドックを受けようと決意したのです。肉体年齢で換算すれば、犬の7歳は人間の44歳頃。ガンなど生活習慣病の発症にも要注意な時期に入ってきます。
訪れたのは、ACプラザ 苅谷動物病院 明治通り病院。
ミィミィのかかりつけではありませんが、生活環境や病歴といった詳細な問診ののち、ミィミィに最適な健康診断のプランをご提案いただきました。「本格的な健康診断を」と希望したので、心臓の超音波検査と心電図も追加していただき、最終的に、身体検査、血液検査(全血球計算、血液化学検査)、尿検査、便検査、レントゲン検査、超音波検査を実施することに。
「聴診で心臓の雑音はないので、本来は心臓の超音波検査は不要かもしれない」そうですが、取材も兼ねて心エコーも受けることにしました。
健康診断スタート!身体検査で飼い主、反省…
まずは身体検査から。
担当の白井活光 取締役院長が、肥満や痩せすぎではないか、心音などに異常がないか、皮膚、耳、眼、口の中などに異常がないか、リンパ節や関節などに異常がないか、視診・聴診・触診によって細かく確認していきます。
「乳腺腫瘍などのしこりはありませんが、腹部の皮膚に赤いところがありますよ。現時点では治療の必要はないので、1週間以内に良くなるかは確認しておいてくださいね」と言われ、びっくりしました。気づいていなかったので…。こまめに愛犬の身体を触って健康チェックしなければと、反省。
さらに、歯肉炎になっている事実も判明。「ごめん、ミィミィ。歯磨きの大切さを知りながらサボっていた飼い主が悪いよね。歯石除去したら、サボらず磨くから」と、愛犬の頭を撫でながら心の中でつぶやきました。
「耳道の入り口付近に少し耳垢が付着しています。定期的にケアをしましょう」と、白井院長。
愛犬の便は朝にしたものをサランラップに包んで持参しましたが、尿は、病院で膀胱に針を刺して採取しました。「排尿の途中で混じる可能性のある雑菌がないので、体外に排出された尿を採取するよりも検査の精度が上がる」そうです。
採尿と同時期に採血も行いました。
人間ドック同様、原則的に検査当日は、食べものを口にしてはいけません。
血液検査の結果から、腎臓や肝臓など臓器の機能を知ることができます。臓器の疾患の発見のほか、腫瘍、ストレス、内分泌異常、感染症の有無などの判断にもつながります。
尿検査からは、腎臓や尿路の異常がないかがわかります。
消化管に炎症や異常があった場合は便検査で、ある程度判明します。また、寄生虫の有無も便検査で調べられます。
検査結果からわかることをまとめたプリントも、いただけます。
超音波やレントゲン検査でわかるのは?そして、今回のドックの結果は?
続いて、飼い主も立ち会い可能ということなので、超音波画像診断装置が置かれている診察室へ。この日は、画像診断専門の竹内充彦獣医師(毎週火曜日のみ担当)が愛犬を診てくださいます。
超音波検査は、腹腔内の臓器や心臓の状態を知るのに最適です。
血流が着色されてモニターに表示されるカラー・ドプラー超音波では、心臓の血流がリアルタイムで見られるので、弁疾患などの発見が可能です。
超音波画像診断装置で臓器の状態をチェック。ミィミィには特に気になる所見はありませんでした。
カラー・ドプラー超音波で心臓の血流を確認。画面下部の波型のデータは心電図で、ミィミィは不整脈などもなく問題はナシ。
最後は、レントゲン検査。
超音波検査と違うのは、骨や関節の状態を調べるのに適している点。
臓器の形や大きさを確認したり、肺に異常がないか、腹水や胸水がないか、消化器内に異物がないかなども調べるにも重要な意味を持ちます。
ここまで、およそ1時間。ミィミィ、お疲れさま!
少し時間を置いて、担当の白井先生から、出力された「健康診断報告書」とレントゲンや超音波検査の画像をもとに、総評とアドバイスをいただきました。
「血液検査の結果も気になる点はなく、さきほどお伝えした歯肉炎を除けば、今すぐ治療が必要な病気などはありません。ただ、尿検査では細菌が見られたので、膀胱炎予防の目的で水分補給を心がけてください」とのこと。
人でも、自他ともに健康だと思っていたのに人間ドックで病気が発見されるケースも多いため、少しドキドキしていましたが、それを聞いてほっとしました。
レントゲン画像を見ながら「椎間板などのヘルニアになりそうな所見もなく、股関節の状態も犬種を考えると正常範囲です。ただ今後、肥満や老化が原因で気管虚脱になる可能性も否定できないので、ハーネスの使用で呼吸器への負担を減らしましょう」と、白井院長。
また、球状の異物も腸内に確認。健診のすぐあと、前日の散歩で拾い食いをした、木の実の種が便で排出されたのでひと安心ですが、誤飲には要注意ですね。
白井先生から「今日の結果は、ミィミィちゃんの健康な状態のデータです。異常が見られなかったことに加えて、病気が疑われた際に比較できる正常時のデータを得られたことも、本日の成果なのですよ」という言葉を聞き、あらためて、犬ドックを受けて良かったと思いました。
動物病院ごとに多種多様な健診プランの活用術
これまでミィミィは毎年、かかりつけの動物病院で、春のフィラリア抗原検査の際に採取する血液を使って行われる「血液検査による健康診断キャンペーン」を利用してきました。結果に異常があった場合は、さらに精密な検査をかかりつけ医から勧められることになります。「ついで」にできる簡便さと、1万円で十分にお釣りのくる価格なので継続できたと思います。ほかの検査に比べて安価な尿検査も、追加で依頼したこともあります。
けれども、今回受けた血液検査は通常よりも検査項目が多いという点でまず、価値の高いものでした。また、血液検査の結果は正常でも、超音波やレントゲン検査、尿や便検査でしか得られない情報があるとも再認識しました。
検査をスムーズに進めて正確な情報を得るためにも、日頃から愛犬がどこを触られても大丈夫なようにトレーニングしておくのも大切です。
人の4~5倍の速度で、肉体時計が進んでいく犬たち。
若いうちから年1回、愛犬が厄年である7歳を過ぎたら、年に2回は今回のようなドッグドックを受けさせたいものです。
最近は、犬ドックのパックプランを用意する動物病院も増えています。愛犬の状態や予算に合わせて選べる、複数のコースをそろえる病院も少なくありません。そのようなパックプランを利用してもよいですし、今回のように愛犬に必要な検査をカスタムメイドでご提案いただくのもよいでしょう。
動物病院によりますが、パックプランは検査項目の少ないコースで1万円前後から、超音波など詳細な検査を含むコースでは2万~5万円ほどに設定されています。
犬は痛みがあっても人のように口にせず、むしろ隠しがちです。飼い主が気づいたときには、すでに病気がかなり進行していたというケースも珍しくありません。
愛犬の病気の早期発見こそ、ペットドックの最大の目的。さらに、今後かかるかもしれない病気の可能性にいち早く気づけて、病気の発症予防につなげられるメリットもあります。
ぜひ、愛犬にいつまでも元気で長生きしてもらうために、定期的に健康診断を受けさせてあげましょう!
「あぁ~、疲れた。でも、病気が進行してからつらい治療をされるより、病気は防いでもらって、病気になっても早期治療ができたほうがいいから、たまには頑張るか~」(ミィミィ)