お困りごとNo.1、愛犬の「本気噛み」の防ぎ方、やめさせ方を学ぼう。

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犬が遊びの延長で噛んでくる「遊び噛み」と違って、「本気噛み」はいらだちや不安から来る攻撃行動で、飼い主さんからの相談が最も多い問題行動でもあります。そこで、今回は本気噛みの予防法や基本的な対処法について取り上げます。

攻撃行動は、「噛む」前から始まっている

一般に、本気で噛むことだけが攻撃行動だと思われがちですが、唸る・歯をみせる・脅すという時点で、すでに事は始まっています。ですから、カウンセリングのときは「唸る、歯をみせる、脅すといった行動が始まったのはいつですか?」という聞き方をします。「攻撃行動が始まったのはいつ?」と聞くと、噛み始めた時期ととらえられてしまうからです。

犬を唸らせたままで抱き上げる、威嚇したままで首輪をつけるといったことをし続けると、「警告しているのにわからないなら、噛むしかない
となっていきます。そこでようやく飼い主さんはハッとする。犬はずっと信号を出し続けてきたのに、飼い主さんが犬の感情を無視した対応をしてきたわけです。

本気噛みを防ぐためにできること

こうした本気噛みを防ぐには、どんなことに注意すればいいのでしょうか?

 

1.「遊び噛み」は早く消去する

できれば生後6ヵ月ごろまでに。成犬になっても遊び噛みが残っている場合は、何歳であってもやめさせること(方法はこちらを参照)遊びで人を噛むことを許せば、本気噛みもOKということになってしまいます。


2.「叩く・マズルを握る・仰向けにする」は厳禁

攻撃行動の対象がご家族の場合、犬を手で痛めつけたことがあるはずです。叩くだけでなく、マズルを握る、仰向けにするなども体罰の一種。しつけの中にこれらを組み込まないことが大切です。


3.「一人遊び」ばかりさせない

一人遊びばかりさせていると、物品に対する執着心が強くなり、人が手を出したときに、おもちゃを取られまいとして攻撃的になったりします。遊ぶときは人が介在し、「手が出てきても取られないよ」ということを犬に教えなければいけません。特に物欲が本能的に高い犬種、柴犬やテリア種など作業犬全般と暮らし始めたら子犬の時から家族と一緒におもちゃを介して遊ぶ楽しさを植え付けていきましょう。

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4.食器に手を入れても大丈夫にする

うちのパピークラスでは、「ごはんを食べるときに器に手を入れても怒らないか」を確認してもらっています。手を入れても気にしないコになってもらうことが必要です。


5.迎えるときに「性格診断テスト」をする

子犬を迎えるときに、ブリーダーさんやペットショップで「性格判断テスト」をするのもおすすめです。子犬を持ち上げたり、軽く羽交い絞めにしたときに、どれぐらい抵抗するかで、ある程度性格がわかります。もともと穏やかなで抵抗性のないコを選ぶのも一つの方法です。


6.自分に合った犬種を選ぶ

例えば、運動好きでもなく時間もかけられないという人がコーギーのような作業犬を飼ってしまうと、犬に十分な運動や遊びをさせられず、それがストレスになって攻撃的ないらだち、ムダ吠え、破壊行動につながっていきます。自分の望む暮らしに合った犬種を選ぶことも重要です。ほとんどの問題行動はその犬に適切な運動量と遊びをあたえてあげるだけでも改善がみられることが分かっています。

 

治療の第一歩は、噛む状況をつくらないこと

犬が人を噛むパターンは限られていて、大半が物品絡みか、寝ている犬を動かすときです。こうすれば噛むというのがわかれば、そういう状況をつくらないことが治療の第一歩。例えば一緒に寝ていて、飼い主さんが動くと唸ったり噛んだりするのであれば、まずは一緒に寝ないこと。また犬がベッドで寝ていて、そばを通るだけでも唸る場合は、通りがけにポーンとドッグフードを投げ与えます。何度もくり返すうちに、フードをもらえると思って唸らなくなります。
本気噛みの基本的な対処は、最初の数週間は噛む状態を回避することです。そうしないと噛む閾値が下がってきて、ちょっとしたことでもすぐ噛むようになります。人を噛んで自分の思い通りになるという経験をさせないことが大事なんです。

「ライフリワード」を上手に活用しよう

本気噛みなどの問題行動の有無にかかわらず、日頃から、飼い主さんにぜひ実践していただきたいのが、「ライフリワード」の活用です。ライフリワードとは、日常で犬にとって報酬になるもののことで、おやつや散歩、飼い主さんに遊んでもらったり、抱っこしてもらったり、犬にとってうれしいことすべてです。

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こうした大好きなことを犬がしてほしいと要求してきたときに、すぐに要求をかなえるのではなく、やさしい声で「オスワリ」と言って、指示に従ったときだけ要求を受け入れます。これをくり返すことによって、犬が自分の要求を満たすためには飼い主さんの言うことを聞かなければいけないことを学んでいきます。
指示は何度も出さないこと、威圧的にならないことが大切。このやりとりを上手に行うことで、犬の反発的な態度や攻撃的な態度が徐々に和らいでいきます。また犬が何かしてほしいときは、自分からオスワリするという良いマナーも身につけられます。

次回は、ケーススタディを中心に、より本格的な「本気噛み」への対策をみていきましょう。

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11月下旬、神奈川ではまだまだ紅葉が楽しめます♪日本は4季に合わせて気候、食べ物、風景が楽しめていいですね。

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石井 香絵

獣医師、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表、AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員 麻布大学獣医学部を卒業し動物病院で一般診療を行った後、動物行動学、行動治療を学ぶために渡米。ニューヨーク州にあるコーネル大学獣医学部の行動治療専門のクリニックに2年間所属し帰国。現在はワンちゃん、ネコちゃんの問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナー・講演活動など幅広く活躍。2013年からは、アニマル・クリスタルヒーリングのファシリテーターの養成を始める。愛…

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