「動物がいるところにはノミがいる」都会であっても公園や河原などで、ノミを拾ってくる可能性は十分にあります。今回は、ノミの寄生が原因で発症する「ノミアレルギー性皮膚炎」のお話です。
涼しいからと油断しないで
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液成分に対するアレルギー反応によって皮膚炎を起こすもので、激しいかゆみと、腰から尾の付け根あたりに発疹や脱毛が見られるのが特徴です。
春~夏、ノミがいるのに気づかずに放っておくと、秋になってアレルギー症状が一気に出ることもあります。アレルギー体質の犬は発症しやすいのでとくに注意が必要ですが、そうでなくても、長年蓄積されてあるとき突然発症、ということもありますので油断してはいけません。いったんアレルギーを発症すると、その後は、わずか1匹のノミに吸血されただけでも激しいかゆみを引き起こしてしまいます。ノミ対策をきちんとしましょう。
室内に持ち込まれたノミは冬でも繁殖の可能性が
ノミの繁殖は、13℃以上が適温とされていて、これ以下になると、卵の孵化率が非常に低くなります。そう考えると真冬は大丈夫だと思いがちですが、実は盲点が。例えば、散歩等で犬の体にノミが付き、室内に持ち込まれると、適度な湿度があり温かい室内では、冬でも寄生~繁殖を繰り返すことができます。じゅうたんやソファー、ベッドなど、ノミにとって居心地のよい場所は、犬も好きな場所。ノミが犬に寄生する可能性も十分に考えられるのです。
また、ノミの卵はわずか0.5mm程度なので、気づかないうちに靴にくっついて家に持ち込まれることも。となると、高層マンションに住み全く外に出ない猫も決して無縁とは言えないですね。
いつまで駆虫を行うかについては、地域の気温や湿度、周囲の環境、シャンプー頻度などによって違ってきますので、かかりつけの動物病院で相談すると良いと思います。
ノミ駆除剤は動物病院で処方されるものを
ノミに刺されたり、ノミアレルギー性皮膚炎を発症して来院するケースは、実は開院した20年前に比べずいぶんと減りました。それは、飼い主さんの予防・駆虫の意識が高まったことと、良い薬が出てきたからだと思います。
最近では動物病院以外でも手に入るノミ駆除剤が出ていますが、安心して使用できるよう、動物病院で処方された薬を使用することをおすすめします。また、薬の成分が合わないからと言って駆除剤を使わないのも、ノミアレルギー性皮膚炎を招く原因になり兼ねません。動物病院では、数種類の薬の中から愛犬にあったものを選ぶこともできますから、獣医師に相談してみてください。
関連リンク
▶Petwell 犬の病気事典「犬のノミアレルギー性皮膚炎」
獣医師 小林豊和
グラース動物病院 院長
日本大学大学院獣医学研究科修了。1993年、東京都杉並区にグラース動物病院開業。生涯のホームドクターを目指し、ホスピタリティを重視した診療を実践。スタッフの得意分野を生かしたチーム医療で、きめ細かなケアをめざす。食事についての造詣も深く、オリジナル無添加ドッグフードの監修も。共著に「獣医師さんが教える手づくり愛犬ごはん(主婦の友社)」「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法(WAVE出版)」など、著書・監修は多数。