「ペットを連れて車中泊」災害時に車で犬猫と避難生活を送る by金子志織

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災害時、自動車で寝泊まりする「車中泊避難」が注目を集めています。ペットがいて避難所に入所できない、プライバシーを守りたい、余震があって屋内で過ごせないといった場合に便利な避難方法の一つですが、エコノミークラス症候群などの健康問題が心配。安全に活用する方法を知っておきたいですよね。

今回は車中泊を楽しむ雑誌『カーネル』編集長の大橋さんや、キャンピングカーを活用している犬の飼い主さんに取材しました。

車中泊は新潟県中越地震をきっかけに話題になった

まずは自動車で寝泊まりする方法が広まったきっかけを大橋さんにうかがいましょう。
「2004年の新潟県中越地震で少し話題になり、2011年の東日本大震災で目立って取り上げられるようになったと思います。災害の規模が大きいので車中泊だけがクローズアップされたわけではありませんが、広まるきっかけになったような印象です」

それ以前の阪神・淡路大震災は都市型の災害だったせいか、車で宿泊する方は少なかったようです。
「2016年の熊本地震は車中泊が長引いたことでエコノミークラス症候群になる人が増えたり、避難者数の把握が困難になったりする問題も起きました」車中泊避難が課題となり、政府は新たな指針の策定検討に入っています 。すでに地域防災計画に取り入れている自治体もあります。

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キャンピングカーショーの「ペット&防災」エリアでは、災害時に備えておきたいグッズなどが展示されていた。

 

安全に活用する方法と必要なアイテム

所有している自動車のシートやラゲッジ(荷室)のしくみを知っておきましょう。車があれば移動も避難もできると思いがちですが、家族4人が軽自動車で寝るのは困難です。ペットのための準備も大切ですが、まずは世話をする家族の健康も考えましょう。

「初心者の方はシートで寝ようとしますが、実はラゲッジのほうが快適であることも多いんです。シートやラゲッジはアレンジできるタイプも多いので、一度確認してみてください。レジャーの一環として車中泊を楽しんでみるなど、シミュレーションをしておくのもいいですね」

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災害時の車中泊には短期と長期の2段階に分けられるそうです。注意することや準備するものも変わるので知っておきましょう。

●短期/災害が起きてから3日間をしのぐ
災害が起きてから支援が届き始めるまでの3日間を乗り切るための備えです。車内のスペースがあれば多めに積んでおきます。
キャンピング用の銀マット
丈夫なレジャーシート
圧縮袋に入れた洋服3日分
保存食、水3日分

車中泊6_572×429ガスコンロのようなかさばるものより、水を使わずに調理できるレトルトが便利。

●長期/避難生活を数週間以上続ける
エコノミークラス症候群を防ぎストレスを軽減するため、車内を快適に整えます。特に寝場所をフラットにすることが重要なので、シートの段差をなくせるようなアイテムを用意しておきましょう。
短期用アイテムを多め
クッション性を向上させるアイテム
タオル類(毛布からハンドタオルまで)

車中泊5_572×429キャンピング用の銀マットやレジャーシートは保温や目隠しにも使える。


ペットを連れていく場合の備えと災害時の注意

災害時にペットを連れて車中泊する可能性があるなら、車内やドライブに慣らしておきましょう。安全に配慮した工夫やアイテムを用意することも大切です。

●車内で過ごす基本の備え
車内に慣れる練習
車を動かさず車内で短時間過ごす。自宅で使っているものを持ち込む方法もおすすめ。
ひまわり車中泊トイレの工夫
犬はトイレシートで排泄する練習、猫は自宅で使い慣れたトイレを使用。
迷子の対策
離ればなれになった場合に備えて鑑札と狂犬病予防注射済票を装着(法律で定められた義務)。飼い主の住所、氏名、連絡先などを記載した迷子札、マイクロチップも有効。
注射済票&鑑札

病気予防と寄生虫対策
ワクチン接種と寄生虫忌避剤や駆虫剤を忘れずに。

●安全で快適に過ごすための工夫
粗相をしても汚れない工夫
トイレの設置場所はフラットなラゲッジがおすすめ。シートに設置する場合は板を敷いておくと足場が安定する。ペットが過ごす場所には防水シートを敷き、粗相してもしみないようにする。
けがをさせない環境づくり
フラットにしたシートの隙間やラゲッジの金具に足を引っかけて骨折する危険がある。タオル類で隙間を埋め、金具はテープなどで養生する。
心配であればハンドグリップに係留
安全な環境にするのが難しい場合、ハンドグリップにリードをつないでおくのも一つの方法。脱走も防げる。

●災害時の過ごし方
車内で留守番させるときは温度に注意。
特に夏は5分でも命の危険がある。
脱走させない環境づくり
ドアや窓をロックし、人が出入するときにも注意する。
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誤飲の事故に注意
車中泊が長引くとゴミや異物がたまってしまうこともある。ペットが口にしないように管理する。
脱水症状を予防
ペットが自由に水を飲めるようにする。ひっくり返さないように安定した形の器を使う。

参考:「愛犬・愛猫と車中泊を楽しむ本」

 

車中泊を極めればキャンピングカーに行き着く?

キャンピングカーに愛犬と愛猫を乗せ、日常的に車中泊をしている加藤さんと浜野さんご夫婦にお話をうかがいました。
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奥様の浜野さんは競走馬をはじめさまざまな動物写真を撮影するカメラマン。ご主人の加藤さんの運転で全国のホースレースを追いかけて出張しています。
多い時には年間100日はキャンピングカーで生活していました(笑)。愛犬のコウと猫も一緒です。キャンピングカーはキッチン、シャワー、トイレといった生活に必要なものがそろっているのが便利ですね」と浜野さん。

災害を想定して特別に備えているものはあるのでしょうか?
「実は特にないんです。家で使っているものをすべて車にも積んでいるので、猫のトイレもちゃんと用意しています。強いて言えば、コウが車から勝手に降りないように教えたことでしょうか」と加藤さん。

車中泊を極めたようなキャンピングカーは、「移動できる自宅」なのかもしれませんね。

浜野さん2_572×397自宅のリビングがそのまま車内に移動したようなつくりで居心地がよさそう。

浜野さん3_572×380車内の後方にはキッチンがあり、コンロやシンク、冷蔵庫まで完備されている。左側にシャワーとトイレ、収納スペース。右側に出入口がある。

浜野さん5_400×477キッチンの左側にある収納スペースはコンパクト。限られたスペースを有効活用できるように収納補助アイテムを使っている。

浜野さん4_572×429「キャンピングカーの設備は自分で修理できたほうが安心ですね。工具は一通りそろえ、夜間に備えてヘッドライトも用意しています」と加藤さん。

 

「車があれば安心」ではない。頼りすぎないことがコツ

災害時に加えて行楽にも便利に活用できる車中泊。最後に大切なコツを大橋さんにうかがいましょう。

「意外かもしれませんが、車に頼りすぎないことです。『いざという時も大丈夫』と過信したり、『車があるから車中泊しなきゃ』と思いこんだりしないほうがいいですね。車だけで生活を完結させるのは難しいもの。特に避難生活が長引く場合、体力やプライバシーの問題があるので高齢者や女性、子どもはペットと一緒に車内、大人や男性は避難所で寝る、 といった工夫も必要だと思います。『車を使ったほうが便利』くらいの気持ちでいてくださいね

車中泊パグ

地域や避難所の規約やルールも確認し、家族やペットを含め、周囲の人たちにとっても安全で快適な避難生活が送れるよう上手に活用したいですね!

〈お話をうかがった方〉
大橋保之さん/株式会社地球丸
車中泊を楽しむ雑誌『カーネル』編集長。雑誌名の由来は、釣り仲間に広まっていた自動車で寝ることを意味する言葉から。本誌は隔月奇数月発行、ムックは年数冊発行。趣味や目的に合わせてさまざまな車中泊を提案する。

愛犬・愛猫と車中泊を楽しむ本

編集&ライター 金子志織プロフィール画像修正_200

編集&ライター。前職はレコード会社でミュージシャンのファンクラブ運営を担当。そのときに思い立って甲斐犬を迎える。初めての子犬の世話に奮闘するうちに動物への興味が湧き、ペット雑誌、書籍を発行する出版社に転職。その後、フリーランスの編集&ライターとして独立。飼い主さんと動物たちの暮らしに役立つしつけや防災の記事から、犬のウンチングスタイルなど雑学の記事まで作成。現在も犬と猫を中心に、ペット関連のさまざまな雑誌、書籍、Webメディアの制作に携わる。愛犬は人生に大転換をもたらした甲斐犬、ジュウザ(オス・12歳)。

愛玩動物飼養管理士1級、ヒトと動物の関係学会会員
防災士、いけばな草月流師範 

▶執筆サイト: sippo(from Shi-Ba/転載記事)
▶ブログ: しましまブログ
▶主な著書

はじめての柴犬との暮らし方 (いちばん役立つペットシリーズ)

ネコの看取りガイド


『はじめてのプードルとの暮らし方』(編集・原稿/犬種標準、暮らしのコツ、困った対策、健康チェックなど)
『ネコのキモチ解剖図鑑』(編集協力)など

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