ケーススタディから学ぶ|家族に攻撃的な愛犬、その原因と直し方

愛犬が家族に攻撃的で手に負えず、悩んでいる飼い主さんは少なくありません。犬との楽しい暮らしを夢見て飼い始めたのに、お互いがどんどん不幸になっていく悪循環に。今回は、愛犬の攻撃行動の原因とその改善策について、ケーススタディから学びましょう。

 

2歳の柴犬が家族に攻撃的で、今後の飼育に自信がもてません

2歳になる柴犬・テツの、家族に対する攻撃的な態度に困っています。生後3ヵ月齢で迎えた当初から、臆病でいつもビクビクして、来客があると隠れてしまうような性格でした。生後6ヵ月齢から家族に威圧的な態度を見せ始めました。ブリーダーさんからは、「攻撃的な態度を示したら、チョークチェーンを使って罰を与えるように」と言われました。つねに攻撃的なわけではありませんが、突発的に攻撃してくるため、いつ咬まれるか不安です。1年前、テツが大暴れして家族がケガをして以来、室内のケージで飼うようになり、朝晩の散歩と昼間に外でつないでおく以外はケージにいます。改善策を教えてください。

愛犬のプロフィール(仮名):テツ(2歳・柴犬・去勢済♂)

 

 

このケースの問題点はここにあった!

●ブリーダーの元で、人への恐怖心を植え付けられていた
生後3か月齢の子犬がこれほど臆病なことが気になりました。普通の子犬なら、周囲のさまざまな刺激に興味をもつ時期です。ブリーダーさんのアドバイスから判断して、ブリーダーさんの元にいるときから厳しいしつけを受け、ご家族の元に来たときにはすでに人に対する恐怖心を植え付けられていたのではないかと推測されました。

●大切な社会化期に適切なしつけを受けなかった
犬の社会化期といわれる生後4週~12週齢の時期には、子犬に、人や他の犬、将来出あうさまざまな刺激を安全に体験させることで、過度に怯えたり、いらだったりしない性格を育成していくことが大切です。この時期に、個々の犬に合わないしつけ法で接することで、問題行動の根が作られてしまいます。

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こうして改善!

1.威圧的なしつけをやめる
テツ君の攻撃行動は、幼少期から受けてきた威圧的なしつけや接し方から誘発されていました。頑固な気質をもつ柴犬には、いらだちを引き起こす威圧的なしつけは向いていません。マズルを握る、叩く、チョークチェーンで罰を与えるなど、今まで行ってきた威圧的なしつけはすべてやめていただきました。

2.家族との間に信頼関係を構築していく
テツ君は厳しいしつけを受けていたため、ご家族や他人の手、言動にいつも神経質になっていました。犬は人と楽しいコミュニケーションをとることで信頼関係が作られていきます。散歩や遊び、トレーニングを介して、ご家族や手に対する信頼性を築くレッスンを行っていただきました。
またテツ君への接し方を統一するルールを作り、ご家族全員がそのルールの下で、ほめたり触れ合ったりすることで、テツ君の葛藤やストレスを軽減していきます。
テツ君がリラックスしているとき、いつもなら攻撃するような場面で攻撃しなかったり、号令に従ったときなど、良い行動は言葉でほめることも大切です。

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3.感情を先読みして、攻撃行動が出ないように配慮する
テツ君の攻撃行動は突発的とのことでしたが、お話を伺うと、すべて明確な理由や原因がありました。攻撃行動の改善は、まず攻撃行動ができるだけ出ないように配慮することが出発点。それにはテツ君の攻撃パターンを知り、その表情や姿勢などから感情を先読みすること。ご家族には犬のストレスサインやボディランゲージの読み方をお教えしました。

4.家庭内でケージの外で過ごす時間を増やす
ケージに閉じ込め続けていては、テツ君との良い信頼関係は築けません。少しずつケージから出して、同じ空間をシェアするなかで、テツ君の良い行動をほめるレッスンをしていきました。また一度ケージから出ると戻るのを拒絶するとのことでしたので、トレーニングの一つとして、コマンドでケージの中に入る練習も同時に行いました。ケージ内を「罰を与える場所」として使用すると、ケージに入ることを拒むようになります。子犬の頃からケージに慣れさせて、犬にとって、「一番安心できるスペース」という位置づけにしていくことが大切です。

 

コメント
よい家庭犬を育てていくには、家族に迎えてからのしつけも重要ですが、できるだけ性格が穏やかな素直な子犬を選ぶことも大切です。できれば子犬を選ぶ際に「犬の性格判断テスト」をさせてもらうといいでしょう。例えば、子犬を床に仰向けにして優しく保持した際、過度に暴れて抵抗が強いコは頑固で気が強い性格。逆に少し抵抗するもののすぐに抵抗をやめるコは素直な性格になります。また仰向けにしただけでパニックになって泣き叫んだり、怯えて震えるような場合は、手厚いしつけが必要になります。

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牧口香絵先生のお薦め 「メディカル・ハーブ」

攻撃行動をもつ犬は葛藤、いら立ち、不安などさまざまなネガティブな感情を持っています。これらの感情の緩和にはバッチ・フラワーレメディだけでなく、メディカル・ハーブもたいへん有効です。

メディカルハーブは人や動物たちの健康維持のために使用されるハーブのことで「植物療法」ともいいます。

メディカル・ハーブには非常にたくさんの成分が含まれており、これらの成分は植物自体が生存するために作りだされています。作用は穏やかで体全身に働きます。

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例えば、苦味の成分は植物にとって害虫を遠ざけるために作っており、この成分は胃や肝臓を健康にしてくれます。
タンニンという成分は蛋白質を固める性質があり樹皮などにつけられた傷を修復します。よってタンニンの含まれたハーブには止血効果、抗炎症、皮膚と粘膜を収斂させる効果があります。このように植物自体が体を守るために作り出した物質を私達が内服また外用し、使わせてもらっているのです。

自然と密接に生活をしている動物たちは自分の体調により自ら必要なハーブを選択し摂取します。その自己選択する姿を観察し人は個々のハーブのもつすばらしい癒しの力を学びました。

大切な家族の一員となったワンちゃんの心と体の健康を保つためにメディカル・ハーブを上手に取りいれてみましょう。


ますはハーブティーからスタート!

【ハーブティの作り方】
ティーポットや蓋つきマグカップにハーブを2gいれて熱湯を200ml注ぎ、蓋をして3~5分抽出します。作ったティーは密閉容器にいれてその日に使い切ります。根などの堅い素材は5~10分抽出します。

これを飲み水としてワンちゃんにあたえます。通常は原液であたえますがはじめはお水1:1に割って与えても結構です。

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【お勧めのハーブ】

1.ジャーマン・カモミール
Matricaria chamomilla、キク科、花

ジャーマン・カモミールは世界でも最も親しまれているハーブの1つです。心身をリラックスさせるとともに消炎・鎮静・殺菌作用を発揮するためストレスによる胃炎、胃潰瘍、不眠、冷え症などの症状に用いられます。
また、怖がりなワンちゃんのストレスや不安、緊張緩和を促します

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2.バーベイン:Verbenaa officinalis、クマヅツラ科、地上部

バーベインは古代から聖なるハーブとして祭壇を清めたり、掃除をするときに、また預言や魔法の薬にはかかせないハーブでした。またキリストの血を止めるために使用された聖なるハーブです。精神的な緊張や疲労を緩和し、ストレスに耐性を作ります。緊張や苛立ちの緩和に最適です。

 

3.リンデン:Tilia europaea シナノキ科、葉・花

甘い香りのするリンデンは心身の緊張や不眠を優しくやわらげ、イライラした気持を緩和してくれる鎮静作用のあるハーブです。また体を温めてくれます

 

石井 香絵

獣医師、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表、AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員 麻布大学獣医学部を卒業し動物病院で一般診療を行った後、動物行動学、行動治療を学ぶために渡米。ニューヨーク州にあるコーネル大学獣医学部の行動治療専門のクリニックに2年間所属し帰国。現在はワンちゃん、ネコちゃんの問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナー・講演活動など幅広く活躍。2013年からは、アニマル・クリスタルヒーリングのファシリテーターの養成を始める。愛…

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