「それってホントに体にいいの!?猫ごはんの常識・非常識」では、猫にとっていいもの、悪いものについてお話しました。今回は、キャットフードの与え方について考えていきます。
うちのコの適正体重と適量を知ろう
猫の食事管理で大切なのは「何」を「どれくらい」与えるかです。健康な猫ならば、ライフステージに合った総合栄養食を、1日の必要なエネルギー量だけ与えるのが基本。必要量はフードのパッケージに書かれている給与量が目安になりますが、猫の活動量によっても変わってきますので、あくまでも「目安」です。
そして、このときの「体重」は、「適正体重」を基準にするのが、健康的な食事管理のポイント。適正体重とはその猫にとって太りすぎてもやせすぎてもいない「ちょうどいい」状態のことで、愛猫の適正体重を一度獣医師に相談してみるとよいでしょう。というのも、診察室で「ちょっと太りすぎですね」と指摘すると、「え〜〜!」という人が多く、飼い主さんが考える「ちょうどいい」状態がすでに肥満状態のこともあるからです。今の日本では7〜8割の猫は肥満だと言われています。肥満は万病のもとと言いますが、人間でも100歳を超えたご長寿の方に太っている人がいないように、20歳まで生きている猫で太っている猫はほどんど見たことはありません。愛猫に長生きしてもらうためにも、適量と適正体重の見極めが大切です。
そして、本当のフードの適量を知るためには体重とセットで考えなければなりません。つまり、給与量を目安として、やせもせず太りもせず適正体重がキープできることが愛猫の本当の適量です。これは活動量や体質によっても変わってくるので、自宅での体重測定が重要です。最低でも月1回は体重を量る習慣を身につけてください。給与量が割り出せたら、目分量ではなく毎回計量カップやスプーンで量るか、グラム数を秤で量って与えましょう。
時間や回数にこだわる必要なし。食べたいときが食事時
食事の与え方について、猫の飼育マニュアルには「食事は1日2回」「置きエサ(出しっ放し)にしないで、その都度与えましょう」などとよく書いてあります。しかし、出してすぐにペロリときれいに食べてくれる猫も入れば、少しずつしか食べない猫もいるので、マニュアル通りにはなかなかいかないもの。
そもそも猫にとっては、「食べたいときが食事時」。オトナの猫がネズミを食べて生きていくためには、1日に5〜10匹くらいネズミを食べる必要があるといわれていますが、捕まえて食べてというちょこちょこ食いが、本来、理にかなっている猫の食べ方なのです。ですから、傷みやすいウェットフードの出しっ放しはNGですが、ドライフードならば何時に食べようがOKで、ある程度の置きえさも許容範囲だと思います。実際、うちの猫たちも僕たちがいる時間帯にウェットフードを与えますが、留守中は猫たちが好きな時に食べられるようにドライフードを出していきます。
置きえさで注意してほしいのは、1日の分量はしっかり決めてフードボウルに出し、食べ残しがあったら、その日のうちに捨てること。そうしないと分量の管理ができません。また、ドライフードだから大丈夫だろうと、食べ残しの上から継ぎ足しをする人がいるようですが、空気に触れればフードが酸化して傷みますし、給与量もきちんと把握できなくなります。当然のことながら、食器も毎回きれいに洗ってください。
大袋のドライフードは小分けで保存
ちなみに、皆さんはドライフードをどのように保存していますか?ドライフードの大敵は、空気に触れることによる酸化です。国産のフードは小分け包装の使い切りになっているものもありますが、外国産のフードでは、袋はジッパータイプになっているものの小分けではないものがほとんど。2kg、4kgなど大袋のほうがお値段的にはお得だけれど、酸化が心配になる人も多いのでは。
飼い主さんの中には、ジッパー付き食品保存袋に最初に小分けにしている人もいて、これはなかなかよいと思いました。フード選びも重要ですが、食べ物ですからよい状態をキープしておくことも大切ですので、保管にも気を配りましょう。
食べないときの10のヒント
「ごはんを食べてくれない」という相談もよく受けます。飼い主さんはよく「わがままで食べない」というのですが、わがままではなく「気が乗らない」んだと僕は思います。丸1日以上食べないときにはわがままよりも具合が悪いことを疑うべき。
どうしても食べないという場合には、次のことを試してみてください。これは普通食から療法食に切り替えるときのヒントとしてお話ししていることですが、普段の食事にも応用できます(ただし、健康状態に問題がある猫の場合は、かかりつけの獣医さんにも相談してください)。
1.早めに切り替える
主に療法食の場合ですが、元気がなくなってからではあまりおいしくないごはんが食べたくないでしょうから、初期の段階で切り替えることが大切です。
2.徐々に切り変える
食事を一気に全部切り替えるのではなく、1週間から1カ月くらいかけて少しずつ切り替えます。
3.与え方を工夫する
今食べているフードに少しずつ混ぜていく「ミックス法」や、今までのフードの隣に別の食器に入れて並べて与える「2皿法」など、与え方を変えて試してみましょう。
4.食器を工夫する
広くてヒゲが当たりにくい食器のほうが好むことがあります。
5.ストレス期を避ける
体調のよいときに切り替えます。
6.温める
やけどをしない程度に軽く温めたほうが香りが立って食欲をそそります。ウェットフードを冷蔵庫に入れている場合は、冷蔵庫から出したての冷たい状態よりも常温のほうが食べるかもしれません。
7.いろいろなタイプのフードを試す
食事の好みは変化するので、「ドライしか」「ウェットしか」と「これまで」にこだわらずに、まずは試してみましょう。
8.トッピングをする
かつお節などを少量トッピング。あくまでも風味付けなので、指2本で軽くひとつまみ程度に抑えます。ティーバッグにかつお節を入れ、香りをつけるのもよいでしょう。
(猫の健康状態にもよりますので、かかりつけの獣医さんに相談してから始めてください)
9.別のブランドを試す
ブランドが変わることで、食べることもあります。飽きてきたなと思ったら、変えてみればいいのです。
10.やさしくあげる
手から与えると食べることもあります。
うちのコの「好き」を見つけて楽しもう
すべての生きものの中で、「おいしいものが食べたい」という欲求が強く、一番食事にこだわっているのは人間ではないでしょうか。他の動物は本来生きていくためだけに食べていて、栄養になるものは食べる、必要ないものは食べないというのが、本来の動物の姿。
だから、猫の食事についても複雑に考えてプレッシャーを感じたり、あまり神経質になりすぎずに、もう少しシンプルに考えればいいと僕は思います。もちろん、猫に与えてはいけない食べ物は与えないなど守るべきことはありますが、猫専用の食事、つまり総合栄養食の良質なキャットフードを、愛猫に見合った適量を正しく与えることができれば、健康な生活は送れるでしょう。
ドライフード、ウェットフード、トッピングなどもいろいろな選択肢の中からうちのコが好きな物を見つける。本にこう書いてあった、獣医さんがこう言っていたではなくて、うちのコに合ったフード、与え方、好きなものを発見する。肩の力を抜いて、そこをもっと楽しんでみませんか?
聞き手/宮村美帆(フリーエディター)