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それってホントに体のいいの!? 猫ごはんの常識・非常識【猫専門医・服部幸のここだけの話】

猫のごはんの常識・非常識
人でも猫でも、食事は健康な体づくりの基本。それだけに皆さんとても気にされているようで、食事についての関心は高いようです。キャットフードの種類はたくさんあるし、何をあげたらいいのか迷ったり、このフードで長生きできるのかと心配したり…。

もちろん、食事管理はとても大切ですが、ポイントさえ間違わなければ、必要以上にナーバスにならなくても大丈夫、というのが僕のスタンスです。ネット上にもさまざまな情報が出回っていますが、今回は猫の食事に関連して、猫にとっていいもの、悪いものについて考えていきます。

 

ドライフードだけ食べていれば大丈夫!?

「何を食べさせたらよいですか?」
「どんなフードやブランドがいいですか?」

飼い主さんからよく受ける質問ですが、僕の答えはシンプルで、その猫のライフステージに合った総合栄養食で、なるべく質のよいキャットフードを与えること、です。激安フードなどは避け、できればプレミアムブランドと言われるメーカーのものが品質的にも安定していてよいと思います。

ドライフードしか食べたことがないとウェットの食感が苦手な猫もいますが、オトナになってから食性も変わることがあるので、「食べない」と飼い主さんが決めつけないで、何度か試してみるのもよいと思います。ちなみに、我が家の猫たちはドライとウェットの両方を食べていますが、ウェットのほうが好きみたいです。

ナイト君_572缶詰を開けると待ちきれずに食べようとするナイトくん。サプリメントを混ぜることも待ちきれません…。

 

猫は肉食だからグレインフリーがいい?

最近のキャットフードには、「毛玉ケア」「下部尿路の健康サポート」「デンタルケア」「体重コントロール」など、さまざまな+αの機能が明記されています。「総合栄養食」には、「ペットフード公正取引協議会が採用しているAAFCO(アメリカ飼料検査官協会)の栄養基準を満たしたもの」という基準がありますが、「機能」の部分にはそうした基準が定められていないのが現状です。各メーカー独自にいろいろな工夫をされているようですが、あくまでも「ケア」や「サポート」であり、治療に用いる「療法食」ではないので、愛猫が食べてその効果が実感できるかに判断は任されています。

また、一部の飼い主さんの間では「グレインフリー」のキャットフードが注目されています。肉食に特化し、穀物(グレイン)を含まないフードということですが、「肉食だから猫に穀物は不要」という理由は、僕には違和感があります。

食事3_3

なぜならば、確かに猫は肉食ですが、獲物にしているのはネズミやウサギなど草食動物ですから、その動物の腸や胃の中には穀物や植物が入っています。猫は内臓も含めて丸ごと食べているわけですから、間接的に穀物を摂取していることになり、そもそも本来の猫の食事はグレインフリーではないんです。エネルギー源となるのは、タンパク質、炭水化物、脂肪のいずれかです。肉中心でタンパク質が増えれば、腎臓への負担も気がかりです。

もちろん、穀物の量が多すぎる食事は猫にとってよいことではありませんが、切り身の肉だけで生活していたら、栄養バランスが保てず、病気になってしまうでしょう。グレインフリーフードは登場して年数が浅いので、まだなんとも言えませんが、穀物をまったくゼロにするという考え方は、僕は不自然に感じています。

 

日本の猫だから魚が好き!?

不自然と言えばもう一つ。日本のキャットフードはカツオやマグロなど魚ベースのものが多いけれど、もともと砂漠出身の猫は魚を獲物にする環境にありません。ましてや回遊魚のマグロを捕まえられるわけもないので、よく考えてみたらこれも不自然です。もしも、水族館でイルカにチキンをあげていたら不自然に感じると思いますが、猫に魚もこれくらい違和感があること。先ほども触れたように、本来はネズミやウサギを食べる動物ですから。

それがいつしか、「猫は魚好き」のイメージが定着しましたが、これは日本人の食事内容が肉よりも魚だったので、猫のごはん=魚になっただけのこと。魚を「食べる」ことと「好き」というのはまた別の話ですが、母猫の好みは子猫に遺伝すると言われているので、日本の猫は先祖代々魚を食べ続けていたことで、高い嗜好性を示すようになったということはあるかもしれません。

猫_まぐろねらう

けれども、魚だけを食べていれば病気になります。かつて、生魚や湯がいた魚ばかりを食べさせていた頃は、「黄色脂肪症」(イエローファット)という病気にかかる猫がたくさんいました。これは、マグロやカツオ、アジなどの青魚に含まれる不飽和脂肪酸の過剰摂取によって、体の脂肪が酸化して炎症を起こす病気です。マグロやカツオなどの猫缶には酸化を抑えるビタミンEなども添加されているので問題はありません。キャットフードの普及によって、今ではこの病気はあまり見られなくなりました。

 

猫草って猫用の生野菜!?

ある飼い主さんに「うちのコは猫草を食べないんですが、大丈夫ですか」と聞かれました。どうやらその人は、猫草を猫のための「野菜」だと思っていたようです。商品化されている猫草のパッケージに、「猫の生野菜」「ペットサラダ」などと描かれたものもあるので誤解されたのも無理はないかもしれませんが、それは大きな勘違い。猫草はイネ科のエン麦という植物ですが、肉食動物の猫は生の草は消化できないので、栄養になるどころか、そのままウンチに混ざって出てきます。

食事3_4

それでは、猫は何のために食べるのでしょうか?一般的にはグルーミングで舐めて胃の中にたまった毛玉を吐き出すためと言われていますが、それも人間の勝手な解釈のようにも思えます。草を食べなくても毛玉を吐きますし、胃を刺激して吐きすぎるのも猫にとってあまりよいことではありません。

猫草は食べても食べなくてもどちらでも大丈夫。僕は猫草をあげることにはあまり意味を感じていないので、うちの猫たちには食べさせていませんが、中には食感が好きで食べている猫もいるようです。

食事3_ゴロウちゃんこの猫さんは、猫草をかじるときのシャキシャキという食感が気に入っているそうです。

 

塩分は猫の健康の敵!?

猫の食べ物に関連して、飼い主さんがとてもナーバスになっているものに塩分があります。塩分はいっさいダメだと思っている人も多いようですが、それはたぶん、人間の腎臓病や高血圧が塩分の摂り過ぎと関連しているからではないでしょうか。けれども、実は猫の腎臓病や高血圧には、塩分はあまり関係がないとも言われています。適量の塩分は猫の体を維持するために必要ですし、キャットフードの中にも含まれています。

食事3_1

特に猫用のおやつなどの塩分を気にする人も多いでしょう。確かに味がやや濃いから喜ぶということはあるかもしれませんが、おやつはあくまでも少量与えることが前提の食べ物ですから、食べ過ぎれば塩分取り過ぎになってしまいます。人間でも甘いチョコレートはひとかけらならおいしいけれど、食べ過ぎれば体によくないのと同じこと。もちろん、塩分の摂り過ぎはよくないので控えるにこしたことはありませんが、塩分だけを極端に恐れる必要もないと感じています。すべては程度やバランスが大切なのです。

猫と食事については、次回ももう少しお話しします。

聞き手/宮村美帆(フリーエディター)

獣医師、東京猫医療センター院長

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