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ペット住まい設計のパイオニア 一級建築士・金巻とも子さんに訊く 猫と暮らす家づくりの極意【前編】

【前編】【後編】

家は愛猫とあなたの共有の生活空間ですから、お互いにとってストレスの少ない、快適で楽しい場所であることはとても大切。それはわかっているけれど、お金のかかる猫仕様のリフォームなんてハードルが高いし、賃貸だからそもそもできないし…。とあきらめている人も多いかもしれません。けれども、お互いに快適な家づくりって、ペット用にハード面を整えなければ実現できないものなのでしょうか?

「設備よりも猫と人が楽しく上手に暮らすことが大切」と話してくれたのは、ペットと暮らす家づくりに20年以上も携わっている、ペット住まい設計のパイオニア、一級建築士で家庭動物住環境研究家の金巻とも子さん。2匹の愛猫と暮らす金巻さんのご自宅を拝見しながら、猫と暮らす家づくりの極意や部屋づくりのテクニックを教えていただきました。

金巻とも子さん
かねまき・こくぼ空間工房主宰。一級建築士、家庭動物住環境研究家、一級愛玩動物飼養管理士、東京都動物愛護推進員。多摩美術大学卒、大手建設会社設計部勤務の後、一級建築士事務所を設立。住宅・店舗の設計のほか、家庭動物(ペット)の健康な暮らしをテーマに住環境コーディネーターとしても活動。住宅密集地・集合住宅におけるペット飼育問題がライフワーク。ペットに関する新しい情報発信や、家族全員の心と体に健康な家づくりや住まい方をアドバイスしている。著書に『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)ほか。

ペット専用設備より いかに上手に暮らすかが大事!

もともと金巻さんがペットと住まいに関わるきっかけとなったのは、ペット可マンションの設計の依頼を受けたことでした。子どもの頃から集合住宅で可もなく不可もなく犬などのペットとの暮らしを見てきた金巻さんは「え?ペット可って何?ペット専用設備なんて必要なの?」と不思議に思ったそうです。そして、追求していくうちに、どんな設備があるかということよりも、いかに上手に暮らすかが大事だということを強く感じたそうです。

「多頭飼育のお宅の猫を見ていると、だらだらしていて動かない子が多い。なんでだろう?」と思い、猫についていろいろ勉強していくうちに、猫が家の中を楽しいと思ってアクティブに動き回れるように環境を整えてサポートしてあげることが大切だと気づいたと言います。

「外に出たがる猫は、家の中が安心できないとか面白くないから外に興味をもつんです。だったら、猫にとって安心安全な環境を確保しつつ、猫の興味を室内に惹きつけ、すごく楽しいと思ってもらえるようにすればいい。家をそのための『道具』としてうまく利用すれば、それが実現できます」

猫目線で考えたら、「家の中にすごくおもしろいものがある」ことに気づいたという金巻さん。その「おもしろいもの」とは、一緒に暮らす我々「人」。「飼い主は猫にとって『動くオモチャ』として相当おもしろいと思うんです。飼い主はまるで親猫のようにごはんをくれる奇特な動物でもあるし、猫の行動は大好きな飼い主さんの行動に伴っているので、コミュニケーションしやすい環境づくりを常に意識しています」

現在、金巻さんは都内のマンションで、ご主人と同居猫のマメちゃんとふくちゃんと暮らしています。

マメちゃん(8歳/メス)は千葉の動物愛護センターから引き取られました。ふくちゃん(3歳/オス)はミルクボランティアをやっている知り合いのところで出会いました。金巻さん曰く「30代くらいのオタクの男の人」っぽいイメージなんだとか。

 

猫も人も家も喜ぶ【三楽暮】な暮らし

猫とのコミュニケーションというと、飼い主が一緒に遊んであげることがまず頭に浮かびます。けれども、働いていると一緒に遊ぶ時間がなかなか取れなかったり、若猫の体力に人が追いつかずだんだんサボりがちになったり…。でも、人に頼りすぎなくても、猫目線で部屋をうまく工夫すれば、もっとシンプルになると金巻さんはいいます。

「猫との暮らしを楽しむためには、猫も飼い主も我慢しないで、ラクに過ごせることが大切。私は自分が苦労しなくても猫とコミュニケーションがとれ、掃除やケアもきちんとできて、手を抜きつつも猫に愛されたいので(笑)、愛してもらうのはどうしたらいいか?ということを考えてきました」

たとえば、飼い主の留守中でも猫が退屈しないで楽しめるように工夫することもできます。「猫にとって窓の外の景色を眺めるのは、私たちがテレビを見て楽しんでいるようなもの。窓の外が見られるようにすれば、聴覚や視覚の刺激にもなります」

さりげなくまとめられていた、猫のおもちゃやコロコロテープなども、なんだかとてもキュート!

金巻さんは、猫との暮らしで「三楽暮(さんらく)」というキーワードを提案しています。これは、猫も人もそして家にとっても“楽(らく)”に“楽しく”暮らせる環境づくりです。飼い主が猫との暮らしを楽しんでいれば、それが伝わって猫ものんびりリラックスできるし、猫が落ち着いていれば家に傷や汚れを付けられることも減ります。部屋の掃除が楽にできれば手入れも行き届く、というわけです。さらにそこに「インテリアとしての楽しみ」もぜひプラスしてほしいと言います。

『ペット用住対応』って汚損防止ばかりの機能性重視で、インテリアとしてはちょっと残念なものがたくさんありますよね。『いかにも猫用』だと『住まい』とするにはデコレーション過剰すぎて、メンテなど人の負担が増えている状態になりがち。暮らしを楽しく豊かなものにするために猫と暮らしているのに、『猫がいるからしかたないか』とあきらめたり、我慢したりするのはなんか違うと思うんです。

猫のための工夫が自分好みのインテリアであれば、人側の満足度も上がります。私は建築士として、猫のいる生活がどれだけ素敵だと思ってもらえるかということも考えて提案してきました。猫向け工夫は必要なコトを過不足なく、やりすぎないことがポイントです。」

言葉通り、金巻さんのご自宅は、マメちゃんとふくちゃんが楽しめる機能的な仕掛けがさりげなく随所にありながら、インテリア性の高いとてもスタイリッシュな空間になっています。

金巻さん宅のリビングはアイボリーがベース。ペットがいると汚れが目立つので敬遠されがちなホワイト系ですが、猫たちがいることを感じさせないほど、すっきりしていてきれいです。 「いろいろな色があると目が疲れるし、空間が狭く見えるので、色数は減らすようにしています」奥行き450mm、厚さ30mmの板を組み合わせ、L字形金具で固定した、本棚兼キャットウォーク。猫の通り道でもあるので、本棚はすっきり整理整頓されています。「人にとっては本棚にしか見えないけど、猫目線で見たらキャットウォーク。“THE猫仕様”みたいな感じにはしたくなかったんです」

 

部屋がボロボロになるには理由がある

「三楽暮」な家づくり成功させる鍵は、猫の習性をしっかりと理解することにあります。東京都動物愛護推進員も務める金巻さんは、ペットトラブルの相談で家庭訪問をすることがありますが、家具の配置を変えたり、ひと工夫するだけで問題解決の糸口につながることもあるそうです。

たとえば、猫との暮らしで頭を悩ませる人も多い「爪研ぎ」問題。爪研ぎ器をちゃんと置いているのに壁や家具をボロボロにしてしまうケースでは、置き場所に問題がある場合も。

爪研ぎは猫にとってはマーキングの行動でもあります。戸建てのお宅へ訪問すると、2階に比べて1階の壁のほうがひどくボロボロになっている事があります。そういったところは、周辺に外猫が多かったりして、1階は窓から外猫の姿が見えたり、ニオイが入りやすい状況です。飼い主さんも外からいろいろなニオイをつけて帰ってきたりするので、マーキングの必要性が猫には出てくるのでしょうね。玄関は外部と自分のテリトリーとの『空間の堺』ですから、爪研ぎ=猫式表札でしっかり自分の存在を示さなくてはなりません。マンションでも玄関に近い所の壁や柱のコーナーなどがやられることが多い。

行動学の資料で、マンションの玄関マットで飼い主さんが靴のニオイを落としてから入るようにしたら改善されたという例も見ました。我が家も私が仕事でいろいろな動物のニオイをつけてくるし、お客さんの出入りもあるので、玄関先に大きな爪研ぎを置いています。猫たちは私が帰宅したり、お客さんが帰ったりすると、自分の主張とリフレッシュをかねてバリバリ爪研ぎをしていますよ」

 

玄関から廊下をまっすぐ進んだ先にあるリビングのコーナーにも、爪研ぎができるキャットステップが設置されていました。

こんなふうに習性をしっかり理解して、猫目線で室内を見渡すことがポイントなんですね。金巻さんちには、ほかにもお手本にしたい工夫点がいっぱい。次回、たっぷりとご紹介します。

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※セミナーは終了しました
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日時:2018年3月3日(土)★無料(事前申込制※先着順)
時間:11:30~13:00
講師:金巻とも子(建築家)・いしまるあきこ(建築家)
場所:リビングデザインセンターOZONE(新宿パークタワー3階/東京都新宿区)

 

宮村美帆

フリーエディター、愛玩動物飼養管理士

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