猫の便は本来、コロンとした“かりん糖ウンチ”なんですが、そうでなくても意外と放置されているケースが多いようです。一過性の下痢ならそれほど心配はいりませんが、慢性的にウンチがゆるかったり、下痢をくり返す場合は、動物病院できちんと原因を突き止めることをおすすめします。
下痢症状を引き起こす主な原因
●食べ過ぎ
猫は犬のような食いだめの習性がないため、食べ過ぎはないと言われていますが、早期離乳した場合や、保護された子猫で母猫が栄養不良だったりすると、ものすごい勢いで食べることがあります。子猫のうちは、食べ過ぎによる下痢も結構多いと思います。食べ過ぎの下痢であれば、一食抜いて胃腸を休めたり、食事量をコントロールすることで改善します。
●感染性の腸炎
感染性の腸炎による下痢もよくみられます。動物病院では、寄生虫や寄生虫の卵を見つけるための便検査は日常的に行っていますが、それだけでは診断がつかないことも多いです。
そこで、最近は、「下痢パネル」と呼ばれるPCR検査(遺伝子検査)が行われるようになっています。これは、一つの便検体で、細菌、ウイルス、原虫など、さまざまな下痢を引き起こす病原体を検出できる、たいへん便利な検査方法で、子猫に多いジアルジアも検出できます。検査会社に検体を出すので、どの病院でも行えます。
●腸内環境の悪化
悪玉菌の増加による腸内環境の悪化も、下痢の原因になります。下痢が続くと善玉菌も流れ出てしまい、さらに悪化する悪循環に。プロバイオティクス(乳酸菌等のお腹に良い善玉菌)のサプリメントなどで腸内環境を整えてあげるといいでしょう。
●ストレス
ストレスによる下痢もあります。精神的ストレスのほか、熱中症や極度に寒いなどの環境的ストレス、来客によってトイレに行けないなどの物理的ストレスとなります。大腸のぜん動運動は自律神経によってコントロールされています。ストレスの影響で自律神経の働きが乱れると、ぜん動運動が活発化しすぎて大腸での水分吸収が追いつかず、下痢を起こすことになります。
●IBD(炎症性腸疾患)
IBDは、自分の免疫で自分の腸を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。原因不明の慢性の下痢が続く場合、その多くがIBDの可能性があります。腸粘膜が炎症を起こして栄養分を吸収できず、進行すると低タンパク血症を起こすことも。確定診断には、内視鏡検査を行い、患部の細胞を採取して病理検査(バイオプシー)をする必要があります。完治は難しく、ステロイド剤や抗炎症剤などで炎症を抑えながら、食事療法で症状をコントロールしていきます。
●その他、内臓系疾患
その他の内臓系疾患からくる下痢も数多くあります。胆管肝炎や慢性膵炎、消化器系の悪性腫瘍、消化器型リンパ腫などでも下痢症状がみられます。こうした病気は下痢や嘔吐だけでなく、元気がなくなったり、食欲不振や体重減少などの全身症状もみられますので、とくに猫がシニア期に差しかかったら、下痢だけでなく全身の様子にも注意してください。
いつも「便がゆるいな」というコは、PCR検査を受けておこう
下痢も3日で治ればいいですが、それ以上続くようなら慢性症。月に1回か2回下痢をするといった間欠的に起こる場合も、「いつものことだから」と安易に片づけないこと。意外と病気が隠れているケースがあります。
また腸炎による下痢は、若いほどよくみられます。子猫の頃からどうもウンチがゆるいなという場合は、PCR検査で病原体の有無を調べておくといいでしょう。病院に行くときは便を持参してもいいですし、病院で直接とることもできます。持参の場合は、できるだけ新しい便を持って行ってください。
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