お薬嫌いの愛猫への薬の飲ませ方【動画付】咬みつく、泡を吹く、口を開けない…[獣医師コラム]

愛猫はちゃんとお薬が飲めますか?咬みつく、泡を吹いて吐き出してしまうなど、猫はとくにお薬が苦手なコが多く、投薬が愛猫はもちろん飼い主さんにも大きなストレスになっていることも。命に関わることもある大切な投薬。今回は、薬の上手な飲ませ方についてのアドバイスです。

薬の基本剤型は「錠剤」

薬のもともとの型は錠剤のものが多いですが、用途によって剤型が変わります。錠剤を砕いて粉剤として処方することもあれば、液剤もあります。錠剤をそのまま飲ませることがマスターできれば理想ですが、そのためには、まず口を開けさせてくれることが前提。小さいうちから口を触られたり、口を開けられることに慣らしておきましょう。

粉剤はご飯にかければ飲んでくれることもあります。また粉を水に溶いて、スポイトやシリンジ(針のない注射器)で飲ませる方法もあります。液剤は、粉剤と同様、ご飯にかけて飲ますことができますが、風味が変わると食べないこともあり、その場合はスポイトやシリンジで直接口の中に入れるしかありません。

ご飯と一緒に薬を与えるのはよく行われる方法ですが、猫がご飯を食べられなくなったときに薬が飲めなくなるというリスクがあります。また、スポイトやシリンジを使うときは、猫が口を開いた状態で投薬しないと、飲み込まずに全部出てきてしまいます。



苦手な薬を飲ませる工夫いろいろ

愛猫がどんな方法なら飲んでくれるのかを知っておくことが大切。まず一度、口を開けることにチャレンジしてみて、できなければ食べ物に混ぜて与えるなど、愛猫がストレスなく飲める方法を探しましょう。

ごはんに混ぜる
いつものご飯(ドライでも)に混ぜる、缶詰やウェットフードに混ぜる、錠剤をすりつぶして振りかけるなど。

好物で包む
普段、絶対におやつはあげないという飼い主さんもいますが、日常的にいろいろ食べさせておき、これなら100%食べるという“とっておき”の大好物を見つけておくと、いざというとき一緒に薬を飲んでくれる可能性が高いです。
飼い主さんから実際に聞いた工夫としては、薄切り牛肉など生肉に包む、茹でたささみやお刺身、チーズなどに埋めるなど。

スープにとろみをつけて混ぜる
粉末の薬は、片栗粉でとろみを付けた鶏ガラスープや野菜スープに入れて与える人も。

服薬ゼリーやオブラートを利用する
服薬ゼリーやオブラートに包んで与えるのも、ひとつの手。とろみがあると一緒に飲みやすくなるのでよいと思います。

口をこじ開ける
いろいろ試してもダメだったら、最後は口をこじ開けるしかありませんが、抵抗して咬まれることもあるので要注意。つかまえて口を触れるコなら、飲めるようになる可能性は高いです。あとは飼い主さんのテクニックとやる気、根気次第です。

 

錠剤はこうして飲ませる!基本の「き」

それでは、錠剤を直接、口に入れて飲ませる方法についてご説明します。写真と動画をみながら、コツをつかんでください。

1)錠剤を人差し指と親指でつまんで持つ
1-薬 inu

2)口を開く。このとき、上下に無理やり開くのではなく、空いている指で下の顎を下げるイメージ。
neko薬-2

3)錠剤を、のどの奥に落とすように入れる。
neko薬-3

4)口を閉じる
※口を閉じた後、のどを上から下へさするのも、飲み込みやすくするのに有効です。

▼猫への薬の飲ませ方を動画でチェック

ポイントは、薬をちゃんと喉の奥に入れることができるかどうか。口を開けて薬を喉の奥に落とすようにいれます。奥に薬が入らないと猫は泡を吹いて吐き出してしまいます。2~3回失敗を繰り返すと、口を開けてくれなくなってしまうので注意してください。
薬を複数与えないといけないときは、2錠を重ねて飲ませることも。うまく行けば1回で済むのがメリットです。素直に何回でも飲めるコなら分けて飲ませてもいいですが、嫌がるコはできるだけ回数を減らせる工夫を。

飲ませやすくするために、次のような市販の器具を利用するのもいいかもしれません。
●ピルクラッシャー:錠剤を砕いて粉にする器具。
●ピルカッター:錠剤を半分にカットする器具。錠剤を割って量やサイズを調節できます。
●投薬器:30cm弱ぐらいの長さのプラスチック製の器具。先端に薬をセットし、口の中に入れてピストン部分を押すと錠剤が飛び出すしくみ。口は開けるが指を入れると噛むコに有効です。

 

うちのコに合った投薬方法を見つけて

薬が苦手でも、飲めないと決めつけないこと。薬を飲ませる方法はたくさんあります。また最近は、1回の投与で効果が長く持続する長期作用型の薬剤も出てきています。薬を服用できなければ命に関わることもあるので、うちのコに合った投薬方法を見つけてください。必要なときに必要な量をきっちり飲んで、投薬期間を短くするのが理想です。

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箱崎加奈子

獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルクリニックまりも 院長 麻布大学獣医学部卒。 気軽に立ち寄れるペットオーナーのためのコミュニティスペースを目指し、「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」を東京都世田谷区、杉並区に開業。病気はもちろん、予防を含めた日常の健康管理、ケア、トリミング、預かり、しつけなどを行う。2020年よりピリカメディカルグループの運営会社 株式会社notに参画。現在、ピリカメディカルグループ総院長を務める。 ▶アニマルクリニックまりも ▶女性獣医師ネットワーク

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