はじめまして。PetLIVESで記事を執筆させて頂くことになった木津です。東京・杉並区に恐らく世界初となる「猫専用アパートメント」を建て、運営しています。第一回目は自己紹介を兼ね「なぜ私が猫専用賃貸をつくろうと思ったのか?」をお伝えしたいと思います。
専用どころか猫可物件がない日本の賃貸事情
みなさんは猫と一緒に暮らしていますか? 暮らしている場所はどこですか? この質問を20代から30代の一人暮らしの人に聞くと、返ってくる答えはおおむねこういう感じ。
「いま住んでいるところはペット不可なので、黙って飼っています…」
「飼いたいけど猫OKって賃貸、ほとんどないですよね」
「仕事が忙しくてちゃんと世話できるか自信がないので飼っていません」
「飼いたくても、環境が整っていないから飼えないです」
悲しいことに、これが現状だと思うのです。
一般社団法人ペットフード協会がアンケート調査を行ったデータ(2014年度)によると、日本全国で飼われている猫は約996万頭なのだそうです(外猫、野良猫、地域猫の数は含まれていないので「日本に住んでいる猫」の数はこの何倍にもなります)。
飼育環境の調査によると、賃貸で飼われている猫はわずか14%。このうち内緒でこっそり飼っている人がどれくらいいるかは不明ですが、ほとんどの猫たちは一軒家か分譲マンションで暮らしています。
一方、同調査によると飼っている猫の種類は「雑種」がダントツ1位の79.6%。さらに「ペットの入手先」は、大別すると「野良猫を拾った」を筆頭に、ペットショップなどで買ったのではない猫を飼っている人が89.1%と大多数。つまり「期せずして雑種の野良猫を飼うことになった」人が多いようです。昔からよくある光景ですよね、子どもがダンボールに捨てられた猫を家に持ち帰り、お母さんにお願いして飼うことになるという話。いまも昔も猫を飼うきっかけはあまり変化がないのですね。
かく言うわが家の猫2匹も元野良猫です。この猫たちとの出会いが、後に私の人生を大きく変えてしまったのです。
野良猫「チー」と「ウー」との出会い
2005年から東京都・杉並区にある2階建てのテラスハウスを借り、妻と暮らしていました。小さいながら専用の庭がついた物件で、引越初日から野良猫が遊びに来ていました。もともと猫が好きだったこともあり、ペット不可の賃貸でしたが、お隣さんや大家さんに内緒で餌を与えていました(当時は野良猫に対する知識に乏しく、無邪気に餌付けしていたのです)。
ある日、小さなチビだったので「チー」と名づけたメス猫が子猫を連れてやって来ました。か細い声で鳴く小さな子猫は、目ヤニで目が見えない状態。チーは「この子を助けてあげてください」と、最終手段として連れて来たのではないかと思うのです。だって、いくら野良猫の行動範囲は狭いとはいえ、目が見えない状態の子猫が大人の猫に遅れずについて来ることは不可能ですからね。おそらく首根っこをくわえて庭先まで運んできたのだと思うのです。目の見えない子猫はやせ細り、衰弱が激しい状態でした。私たちは慌ててその子猫を保護し、近くの動物病院へ連れて行きました。
目ヤニの癒着が想像以上にひどく、2回の手術が必要でしたが、無事に手術も成功し晴れて退院できるようになりました。しかし包帯でグルグル巻きになっている子猫を庭先へ返すわけにはいきません。仕方なく親猫のチーと一緒に、「ウー」と名付けた子猫(保護したとき「ウズラがいるのか?」と思ったのです)を家の中で保護することにしました。
当時の私たちは「あくまでも一時的に保護するだけで、包帯が取れたら野良猫に戻す」つもりでした。だって住まいはペット不可物件。大家さんにバレて出て行ってくれと言われたら大変ですし、規約違反を犯している状態は決して居心地のよいものではありません。
猫を保護していることがバレないよう猫缶のラベルを剥がして捨てたり、猫を病院へ連れて行くときは大家さんや近隣住人がいないことを確かめてから出かけたり、苦労の連続でした。
そんな矢先、あろうことかチーがまた子どもを産んでしまったのです。猫に関するちゃんとした知識がなく、まさか子猫を連れたメス猫がこんな早いサイクルで妊娠できるとは思っていなかったのです。かくしてペット不可物件に5匹の猫をかくまってやらなければならない状況に陥ってしまいました。さすがにこれはマズいと思い、ペット可物件への引越を決意します。
ペット可物件を探しているうち、あることに気づいたのです。それは世の中の「ペット可」とうたっている物件は、ほぼ100%犬を指していて、猫は「不可」もしくは「1匹まで」というところしかないということに。必死の物件捜索も虚しく、引越先探しは失敗に終わりました。そして思い付いてしまったのです。
「自分たちで建てちゃえ」と。
次回『猫専用賃貸、建てちゃいました』に続きます。