【前編】【後編】
ホリスティック・ケアってなんとなく難しそうなイメージがあったけど、体だけでなく心の健康にもよいと聞くと興味をそそられます。そこで家庭でもできるケア方法を教わるべく、愛猫ゴロウちゃんを連れて、ペットのホリスティック診療に取り組む おくだひろこ先生 を訪ねました。
取材協力・監修 おくだひろこ先生
獣医師(おくだ動物病院副院長)・テリントンTタッチ認定プラクティショナー
動物の自然治癒能力を重視し、それを助ける治療として、鍼灸、漢方、レーザー照射治療、ホメオパシー、バッチフラワーレメディ、Tタッチ、アーユルヴェーダなどホリスティック(体、心、生活環境など全体的な視点をもって対処する)医療を実践。また行動問題のカウンセリング、治療に加え、併設のトレーニングルームで家庭犬のしつけ方教室を実施。「細胞を元気にする」調圧ルームもあり、ペットと飼い主が一緒に入れるスペースもある。著書『ネコとしあわせに暮らすための魔法のなで方』が好評。
▶HP:おくだ動物病院
6月末で1歳になる愛猫ゴロウちゃん。 あどけなさがまだ残る甘えん坊。
ホリスティック・ケアって何?
「どうぞ」と出迎えてくれたおくだ先生は、動物を愛する温かいオーラが漂っています。
キャリーバッグ越しにゴロウちゃんと対面すると、「うん、そっか。ちょっと怖いよね」とやさしく声をかけて、フラワーレメディ(※)をささっと数滴、口の中へ!早速ホリスティック・ケアのアイテムの登場です。
自然治癒力を重視し、健康を広い視点から考え対処するホリスティック・ケアは、心と体の両方に働きかけるケア方法。自宅でできるものとしては、Tタッチやマッサージ、指圧、フラワーレメディやハーブを使った手法などがあり、日常的に行うことで心と体のバランスを整えたり、自然治癒力を高めたり健康をサポートできるそう。人間という異種の動物と暮らす以上、猫は多かれ少なかれストレスを抱えているとか。ノーテンキに見えるゴロウちゃんにもストレスがあるのね。
よし、キミのためにしっかり教えてもらおう!
※レメディとは、花のエッセンスから 抽出した液体。詳しくは後篇で!
おくだ先生のところの猫で、シニア期に慢性腎不全になり、検査数値的にはかなりの重症だったにもかかわらず、ホリスティック・ケアで24歳まで長生きしたコがいたそうです。
いつものスキンシップが魔法の撫で方に
自宅ですぐに始められるのは、Tタッチやマッサージ。いつものスキンシップもテクニックをプラスすれば魔法の撫で方になるというわけです。うちのゴロウちゃんは、撫でられるのが大好きなデレデレ猫。日頃のスキンシップはばっちりなので、これは期待がもてます。
「うちのコは触られるのが苦手、撫でようとすると逃げちゃう、という人がいるけれど、それはタイミングや撫で方が間違っているのかも」とおくだ先生。「いいコいいコ」と頭や体をくしゃくしゃと撫でるのは、猫の気持ちをざわつかせパニックにさせる撫で方なのだとか。撫でられるのがあまり好きではない猫は、足などにスリスリしてきたときに、ゆっくりとやさしく撫でるところから始めるのがよいそうで、猫がやってほしそうなタイミングでやるのが基本。
リアルな猫のぬいぐるみを使いながら、テクニックを解説。「飼い主さんには猫とはどんな動物かをきちんと理解しておいてほしいですね」
「猫は個人主義だけど自己チューではないの。飼い主のことをよく見ている観察者で、そっと寄り添ってくれる。飼い主が幸せならば自分も幸せなのよ」。
なるほど。猫が望んでいるときにふれあうからこそ、ッピーなエネルギーと時間を共有できるというわけですね。
性格や行動も変化するTタッチ
まず手始めに教えていただくTタッチは、アメリカ人のリンダ・テリントン・ジョーンズ氏が開発した、皮膚を動かして神経節に刺激を与え、細胞を活性化させるテクニック。刺激によって体に意識を向けさせることで、体のバランスがよくなる、地に足が着いていない精神状態から我にかえって落ち着く、痛みや恐怖心が和らぐ、猫に自信を持たせる、細胞に働きかけて自然治癒力も高まるなどの効果が得られるそうです。
Tタッチの基本の動きは、指先などで円を描くように動かす「円のタッチ」。健康な状態をイメージしながら行うことで、細胞記憶を蘇らせることができるのでシニア猫や病気の猫にも最適。「体のどこからでも始められるので、ホリスティック・ケアの初めの一歩としてオススメよ」。
猫が緊張しているときはいきなり始めないで、やさしく体を包みこんで安心させる。
診察室で攻撃的になったり、固まってしまったりする猫にも有効で、慣れない場所で最初は少しおどおどしていたゴロウちゃんも、おくだ先生の手にかかったら、あっという間に緊張がほぐれてされるがまま。素晴らしき、おくだマジック!
魔法の撫で方、そろそろ教えていただきましょう!
■まずはごあいさつ
体の上に軽く手を置いただけの重みで、頭から尾の先までゆっくりと撫でる。体の側面から前後の足先までも同様に。撫でられるのが苦手なら、手のひらよりも手の甲で撫でると刺激が少ない。息を止めずに呼吸はゆっくりと。
■基本の円のタッチ
親指は動かさずに残りの4本の指で円を描くようにゆっくりと皮膚を動かす。円は時計回りに1周と1/4(時計の6時から1周して9時まで)。
1〜3秒で描き、終点で2秒止め、そのまま少し離れた場所に手をスライドさせて新たな円を描く。
力加減は自分のまぶたを押して気持ちいい程度。指先、指の腹、指の甲などを使って。
▼動画でチェック!
■耳のTタッチ
耳にはツボがいっぱい。免疫力アップに効果的で、気持ちを落ち着かせるのにも◎親指と人差し指で軽くはさんで、親指で小さく円タッチをしたり、つけ根から耳先にかけてゆっくりスライドさせたり。
▼動画でチェック!
★私もチャレンジ!
「指だけを動かすのではなく、皮膚を動かすのよ。そこで止めてすーっと横に」
「はい!」
コツをつかむと、やわらかい手ざわりが気持ちよくてこっちもクセになりそう。
宮村美帆さんオススメ 「もっと愛猫と仲良くなるアイテム」
ネコとしあわせに暮らすための魔法のなで方
おくだひろこ著
ホリスティック・ケア初心者におススメの入門書。この1冊にTタッチ、マッサージ、指圧、バッチフラワーレメディ、ハーブ、サプリメントなどの基礎知識が満載。テクニックも写真入りでわかりやすく、猫の性格や体調に合わせたケア方法も載っています。今回の取材ではほんの一部しかご紹介できないので、くわしく知りたい方はぜひ読んでみてください。