皆さんは、愛猫のデンタルケア、どうしてますか? たいていの猫は口に触られるのが大嫌い。歯磨きなんてとてもとても・・・が実感ではないでしょうか。
そこで、歯科治療のスペシャリスト獣医師、とだ動物病院院長・戸田 功先生に、家庭でできる猫のデンタルケアについて教えていただきました。
多くの症例を見せながら熱心にレクチャーしてくださる戸田院長
猫にデンタルケアが必要なワケ
「猫には虫歯はほとんどありませんが、歯周病、口内炎、歯頚部吸収病巣など、お口のトラブルがとても多い動物です」と、戸田先生。
なかでも最も多い歯周病は、歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)で起こる病気で、「見えている歯の部分はきれいでも、外から見えない歯肉の中で進行するので、気づきにくく、獣医師でもレントゲンを撮らないときちんとした診断はできない」という厄介な病気です。
しかも、歯周病菌は歯肉だけに留まってくれません。炎症が頬に広がったり、顎の骨を溶かしてしまったり、血流に乗って全身の臓器に運ばれる可能性も。戸田先生によれば、「歯周病が心臓病や腎臓病などを起こす直接の原因にはならなくても、悪影響を及ぼすリスクは多分にあります。実際、アメリカの統計では、歯周病がひどい子は、心臓病になる確率が高いというデータが出ています」。やっぱり愛猫のお口のケア、放っておくわけにはいきませんね。
猫のデンタルケアはこうしよう!
愛猫のデンタルケアの方法は、「もしできるなら、歯ブラシによるケアが理想」とのこと。歯ブラシには次の3つの効果があります。
1)歯垢(悪玉菌)を取る: 歯周ポケットにブラシを当て、悪玉菌をかき出してきれいにします。
2)空気を入れる: 悪玉菌は嫌気性の細菌で、酸素があるところでは増殖しにくいため、ブラッシングで歯周ポケットに空気を送り込みます。
3)ドラッグデリバリー: ジェルなどの薬をブラシにつけて、歯周ポケットへ運びます。
とはいっても、猫に歯ブラシのケアは至難の業。もしチャレンジするなら、最初は指に好物の味をつけて、歯に触る練習から始め、少しずつ歯ブラシに慣らしていくのがコツ。そこで、大事なのが「10(好):1(嫌)の法則」です。「犬や猫は、好きなものを10秒間食べている間に、1~2秒嫌なことを我慢できるかどうか。なので、歯磨きは、好物の味をなめさせては、1~2秒ブラッシングというのを交互に繰り返すイメージで」と、戸田先生。それでもだめな場合は、サプリメントやジェルを利用しましょう。
最近は、様々なデンタル用のサプリメントやジェルが出ています。猫の口内に塗ってあげることで、悪玉菌の増殖を抑えたり、免疫力を高めたりする効果があります。「歯ブラシのように直接、歯周ポケットに働きかけることはできませんが、口腔内の環境を改善してくれます」と、戸田先生もその有効性を評価。歯ブラシが使えないからデンタルケアはムリと諦めるのではなく、愛猫にできることから始めたいですね。
歯周病は、ひどい口臭や痛み、食欲不振などで猫を苦しめるだけでなく、全身の臓器にも影響を及ぼしかねない病気。家庭でのデンタルケアと並行して、年1回は動物病院で歯と歯肉をチェックしてもらい、愛猫の健康を守りましょう。
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