日本の家庭猫の平均寿命は14~15歳ですが、それをはるかに超えて20~25歳生きる猫もいるのは、ペットニュースなどをとおしてご存じの方も多いでしょう。飼い主さんの健康への気遣いと管理が良ければ、愛猫も元気に長生きできるに違いありません。8歳以降のシニア期になると、代謝が落ちたり、筋肉や身体機能が衰えてきたりすることで、身体のトラブルも出やすくなるもの。
そこで今回は、かまくらげんき動物病院(神奈川県鎌倉市)の院長である石野孝先生に教えていただいた、シニアキャットの健康維持に最適なツボ刺激法をご紹介します。
院長 石野孝先生(写真右)獣医師。1991年に中国にて中国伝統獣医学を学び、かまくら げんき動物病院を開業。最新の西洋医学と伝統的な東洋医学を融合させた、動物にやさしい治療を実践。(社)日本ペットマッサージ協会理事長、中国聊城大学教授などを務める。
副院長 相澤まな先生(写真左)
獣医師。獣医大学卒業後、勤務医を経て2008年9月よりかまくら げんき動物病院へ。(社)日本ペットマッサージ協会理事や中国南京農業大学人文学院教授などを務める。
健康促進は毎日のスキンシップで
東洋医学は、病気になる前の「未病」のうちに養生することを目的としています。ツボ刺激とは、身体機能を健やかに保つための「気」の流れを良くするために、東洋医学で重視されるもの。
身体中を循環していている「気」の通り道を「経絡」と呼び、その上に配置されているのが「ツボ」です。飼い主さんは愛猫とのスキンシップの一環として、ツボを圧したり、撫でたり、マッサージしてあげると良いでしょう。
注意:ツボ刺激やマッサージは決して無理強いしないことが重要です。愛猫が気持ち良さそうにしていれば問題ありませんが、嫌がったらやめて、少しずつ慣らしましょう。
まずは準備から
ツボ刺激の前にまず、「始めるよ」の合図を愛猫に送ってあげましょう。飼い主さんの手のひらでやさしく、愛猫の頭から背中にかけてスーッとさすります。猫の舌先のザラザラした感覚に似ている歯ブラシを使ってさすってあげてもOK!背中には免疫力をアップする経絡が多数あるので、撫でるだけでも健康促進につながります。
1.「三陰交(さんいんこう)」のツボ刺激
風邪の予防に効果のあるツボです。加齢によって抵抗力が弱まると、猫は風邪をひきやすくなるので、毎日刺激してあげると良いでしょう。
後肢の内側のかかとから、膝に向かって猫の指4本分のところにあるのが、三陰交のツボ(青いシール)。
そこを飼い主さんの指でつかみ、後ろに引っ張るような感じでマッサージをします。
2.「山根(さんこん)」のツボ刺激
鼻の、毛の生えている部分と生えていない部分の境目にあるツボ(赤いシール)です。鼻水や鼻づまりの予防や、風邪による鼻の症状の緩和に効果があります。
眉間から鼻先に向かって、飼い主さんの指の腹で撫でるようにしてマッサージをしましょう。指で圧すときには少し強めの力で、逆に引くときには軽い力加減がベストです。
3.「睛明(せいめい)」のツボ刺激
シニア猫によく見られるトラブルのひとつである、目ヤニや涙焼けを予防や改善に効果があります。目頭と鼻の付け根の間にある睛明のツボには、涙が多すぎたり少なかったりする場合の調整作用があるからです。
飼い主さんの親指や人差し指を使って、やさしい力でツボを圧しながら刺激してあげてください。
4.ストレス解消のツボ刺激
猫の頭の皮膚を引っ張って刺激すると、頭をすっきりさせたり、ストレスを解消させることができます。
ウルトラマンのように縦長に、またカチューシャのように横長にと、飼い主さんの両手で引っ張りながら形作るイメージで頭部に多数あるツボを刺激します。
5.「腰の百会(ひゃくえ)」のツボ刺激
骨盤の一番広いところと背骨が交わる十字路にあるツボ。腰の病気予防や痛みの緩和に有効です。人差し指と中指で、ひらがなの「の」の字を書くようにして円を描きながらマッサージをしましょう。
6.肉球ぷにゅぷにゅマッサージ
足の裏にはツボが集中しているため、刺激を与えることで全身をリフレッシュできて、デトックス効果も期待できます。
まず、大きな肉球を飼い主さんの手でもみほぐすようにしてあげましょう。
そのあとは、小さな肉球1個1個をぷにゅぷにゅとマッサージします。続いて、肉球の付け根を手で挟み込むようにぷにゅぷにゅ。
最後は、飼い主さんの手のひらと愛猫の足裏をあわせて、ぐるぐると円を描くようにして全体のマッサージを。足裏全体を手で挟み込んでも行ってもOKです。
ちなみに、足裏のにおいが臭い場合、愛猫の体内の水分が過剰になっている可能性があります。東洋医学では「痰湿」(たんしつ)と呼ぶ、身体の水分がヘドロのようにドロドロしている状態かもしれません。
以上、いかがでしたか?
ご紹介したツボ刺激は、石野先生によると、1日3分でもいいので毎日続けるのが良いとのこと。
愛猫の体を触れば、皮膚の異常なども見つけやすくなるので、病気の早期治療につながるのもメリットですね。