猫ブームって、ホント?「猫2匹可の賃貸物件」が求められるワケとは…

前回の記事では「無いなら、作っちゃえ!」という思いついたアイデアを、下調べもなく実行した経緯をお話しました。Gatos Aptのオープンから約5年が経ちますが、ありがたいことに各種メディアからの取材オファーは、年々増加傾向です。

ここ数ヶ月、テレビ局のバラエティー番組からもお問い合わせをいただくことが多くなりましたが、ほぼ同じ理由でほとんどお断りしています。

猫は集団で遊ぶ動物じゃない

テレビ局の方とのやり取りは、毎回こんな感じ。

「最近、猫ブームなんで、番組でも猫の企画を出してます。そちらのアパートに猫を10匹以上集めて遊んでいる絵を撮りたいんです。ほら、ドッグランみたいな。」

「良くママ友会とかやるじゃないですか。お知り合いの猫を飼っている人と猫をたくさん集めて、そちらのアパートでネコ友会みたいなのをやってくれませんか?」

そして実際にロケハンをしたいと Gatos Apt を見学をされると、こんな言葉が返ってきます。

「案外、地味ですね・・・。」

Gatos Aptは、キャットウォークなどはあるものの、基本的に人間が快適に暮らせるよう猫用の工夫はインテリアにキチンと溶け込んで、違和感がないように設計しています。ですから四方八方にキャットウォークが交差しているような、猫カフェのような派手さは、確かに皆無です。こうしてGatos Aptがバラエティー番組で大々的に紹介されることは、ついぞありません。

TV局のディレクターさんは言うに及ばず、意外と 猫と犬は同じ習性だと思っている方が多いのです。

GatosApt_3-2猫の習性って、犬とは違うのです

勘違いの代表例が、「猫って集団で仲良く遊ぶんでしょ?」というもの。犬と違い、猫はあまり集団を形成せず、「個」で生活します。馴染みのない知らない猫と遭遇した場合、大抵は喧嘩になるのはこのせいです。猫にも個性があって、人懐っこい猫、猫懐っこい猫・・・様々なので一概には言えませんが、猫はお互いに仲良くなるまでに時間がかかります。一方、犬は集団で生活する社会性に富んだ習性を持っているので、時には喧嘩もしますが、知らない犬同士でもすぐに仲良くなって一緒に遊んだりすることができるのです。

知らない猫同士が一堂に会することが、確実に猫にはストレスになります。ですので、こうしたリクエストをしてくる取材はお断りをしています。

猫ブームって、ホント?

それにしても最近、「猫がブーム!」という言葉をよく耳にします。一般社団法人ペットフード協会が毎年実施し、公開しているデータを元に検証してみました。

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犬は2011年から飼育頭数が減少しているのに対し、猫は2011年から微増しています。ここで重要なのは「猫は微増」というところ。もっと遡ってデータを照らし合わせてみても、猫を飼う人の数は一定数をキープする傾向にあります(例外的に1986年公開の『子猫物語』ヒットによる増加はありますが)。
対して犬の場合、結構大きく数値が上下します。つまり、昨今言われている「猫ブーム」とは、単純に犬を飼う人の数が減ったから、相対的に猫の飼育頭数が目立つようになっただけに思えます。

さらに飼育されている犬猫の年齢分布を見ると、興味深いことが分かります。犬猫共に、その年齢が徐々に上がってきているのです。医療や食事、生活環境の変化により以前に比べ、大幅に平均寿命が高くなってきています。犬の飼育頭数減少は、寿命を迎え亡くなった犬が増えたことが大きな要因になっています。一方、飼育している人間も年々高齢化し、「飼いたくても飼えない」つまり、自分が先に死ぬ可能性が高いから飼わない人が増加しています。そのせいで犬猫ともに、0歳の飼育頭数比率が年々減少しています。今は一時的に微増の猫ですが、この状態が続くと近い将来、犬と同じように減少して行くと予測されます。

「猫を飼えない」ダントツ1位の理由とは・・・

では、「猫を飼いたい!」という意向はどうでしょう。ペットフード協会の最新資料を見てみると・・・

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犬猫ともに年々、飼育意向が低下していることが分かります。飼育意向の減少は全世代でまんべんなく下がっていますが、特に20代から30代の若年層の低下が顕著です。但し、この年齢層の意向が低いことは今に始まった話ではなく、昔から低いのです。その理由も昔と変わらず。

猫を飼いたいけど、飼えない20代・30代が「猫を飼えない」ダントツ1位の理由、それは

「集合住宅に住んでいて、禁止されているから」

なのです。次いで「お金がかかるから」や「別れがつらい」、「十分に世話ができない」という理由が続きます。でも猫の場合、まず最初の障壁として「猫と住めるところがないから」という問題にぶち当たのです。

実は「2匹飼い」をしている人がすごく多い

先日、行きつけのサロンの美容師さんが、捨て猫2匹を保護しました。その方がお住まいのアパートはペット不可のため、ペット可を探すべく不動産屋さんを数社訪問。思いの外、物件数自体はあったそうです。が、このマジックワードを言った途端、物件数は「ゼロ」になったそうです。その言葉とは、

「猫2匹可の物件」

私が猫専用アパートをスタートさせた5年前に比べ、猫可の物件は徐々に増えてきている実感があります。が、世の中の物件はなぜか「猫1匹まで」という条件が多いのです。

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データによれば、猫の「平均飼育頭数」は毎年、1.7匹近辺をウロウロしています。さらに詳細に見ていくと、猫の飼育頭数は「2匹」が非常に多く、1匹で飼っている人と同数くらいなのです。2匹で飼っている理由は、「猫同士で遊んでくれるから」「1匹だと寂しがるから」が大半を占めます。

ではここで、日本ではどんな猫が飼われているのか「猫の種類別」統計データを見てみましょう。

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はい、圧倒的に「雑種」ですね。「猫を飼う」きっかけは、多くのおウチで「ノラネコを保護した」「友人/知人から譲り受けた」パターンが大半なのです。犬と違い、人間に対する害が低い猫の場合、国が野良猫の捕獲に躍起になりません。なので、昔から良くある、こういう光景が日本全国で繰り広げられるわけです。

「お母さん、子猫がダンボールに捨てられてたんだよ!飼ってもいい?」

猫は多胎動物なので、一度の出産で複数匹を産みます。こうして兄弟や親子で飼う=2匹で飼うという構図が出来上がるのではないかと想像するのです。

一方、犬も雑種が一番飼育されているものの、血統証付きの純血種の比率が高くなります。「犬をペットショップで買う」に対して、猫の場合は「保護する/譲り受ける」ケースが一般的であると言えそうです。

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全国の賃貸物件オーナーさんは、このことに気付いていないのでは?と思うのです。せっかく、ペット可物件にしたのに「ペットは1匹で飼っている」という思い込みのもと、「1匹まで可」にしてしまう・・・。賃貸物件オーナーの心情としては「2匹になれば、それだけダメージを受ける可能性が倍になる!」と考えるのかもしれませんが、全国の色々な大家さんとお話する機会があるので、あえてハッキリと申しますと、飼育頭数まで気を配っている大家さん/賃貸物件オーナーは、皆無と言えます。この辺りの事情については、今度、掘り下げたいと思います。

Gatos Aptに入居される方のほとんどが、猫2匹と一緒に暮らしています。野良猫を保護した、ペットショップで購入した、ペットショップで売れ残っていた、シェルターから譲り受けた、ブリーダーから迎えた・・・出会いの経緯は様々ですが、一様に皆さんがおっしゃる不思議な共通項は

「この子に選ばれた気がした」

という言葉。実は猫が飼い主を選んでいるのかもしれませんね。

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木津イチロウ

猫専用賃貸コンサルタント、Gatos Apartment代表 レコード会社でディレクターとして12年間従事したのち、KDDI(株)ヘ転職、LISMO立ち上げに関わる。無類の猫好きが高じ、保護した野良猫たちのために家を建てることを決意する。2011年、世界初の猫専用デザイナーズ・アパートメント Gatos Apartmentを東京・杉並区に竣工。Gatos Aptを通じて知り合ったネコ好きな人々の声を聞くうち、人と猫が快適に過ごす社会を作りたいと、猫専用物件に関するコンサル業務のほか、猫に関するW…

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