室内飼育の猫だって夏はバテる
猫は、もともと砂漠の動物で暑さには比較的強いのですが、湿度が高いのは苦手。蒸し暑い日本の夏だと、食欲がなく寝てばかりということも。逆に、冷房による冷えすぎが体調不良を招くこともあります。
夏バテの症状を放置しておくと、慢性疾患の原因になる危険性もあるため油断は禁物。愛猫が元気で夏を乗り切れるために、今回は、かまくら げんき動物病院(神奈川県鎌倉市)の院長である石野孝先生から、ツボ刺激やマッサージの方法を教わりました。
院長 石野孝先生(写真右)
獣医師。1991年に中国にて中国伝統獣医学を学び、かまくら げんき動物病院を開業。最新の西洋医学と伝統的な東洋医学を融合させた、動物にやさしい治療を実践。
(社)日本ペットマッサージ協会理事長、中国聊城大学教授などを務める。
副院長 相澤まな先生(写真左)
獣医師。獣医大学卒業後、勤務医を経て2008年9月よりかまくら げんき動物病院へ。(社)日本ペットマッサージ協会理事や中国南京農業大学人文学院教授などを務める。
▶かまくら げんき動物病院ホームページ
まず、ツボ療法についての豆知識を。
身体機能を健やかに保つための「気」が、東洋医学では身体中を循環していると考えられています。その「気」の通り道を「経絡」と言い、その上に配置されているツボを指圧やマッサージで刺激すれば、気の流れを良くすることができるのです。
注意:マッサージは決して無理強いしないこと。あくまで愛猫が気持ちよさそうにしていることがポイントです。嫌がったらやめて、少しずつ慣らしましょう。
1:準備編
まずは愛猫に「始めるよ」の合図をしてあげましょう。
飼い主さんの手や、猫の舌先のザラザラした感覚に似ている歯ブラシを使って、愛猫が気持ちよさそうにする部分をやさしく撫でます。とくに、頭、顎の下、尾の付け根にある性感帯などは猫が触られると喜ぶポイントのひとつ。
背中には、免疫力を強化するツボや経絡がたくさんあるので、手や歯ブラシで撫でるだけでも健康促進につながります!
2:ピックアップマッサージ
皮膚を引っ張る方法でマッサージを行うと、身体の運動に近い効果が期待できるので、愛猫が嫌がらない程度の力で行ってみましょう。
最初は、頭部の皮膚をピックアップ。原理は、人間のヘッドスパと似ています。頭皮をひっぱり頭蓋骨と離せば、そこに酸素や血液を多く入れてあげられます。頭には、「百会(ひゃくえ)」という万能なツボもあるので、ぜひやってあげてください。
次に、首の皮膚を横に引っ張ったり、背中の皮膚全体を縦に持ち上げるようにします。そのまま、ゆっくりと背中の皮膚を左右にムギュムギュと「ツイスト」すれば、さらにたくさんの体操をしてあげられます。
皮膚は体温調整などをつかさどっているので、皮膚の体操による刺激によって、暑い日でも体温調整が行いやすくなるというメリットも!
3:おへそのマッサージ
おへそをマッサージすることで、腸の動きを活発にできます。夏バテによる食欲低下が見られる猫には、ぜひ行ってあげましょう。
ひらがなの「の」の字を、飼い主さんの指を使って愛猫のおへそ部分に描きます。圧力は、ほのかに触れていると感じる程度がベスト。愛猫を膝の上にゴロンと寝かせても、立たせて行ってもかまいません。
4:「腎兪(じんゆ)」のツボ刺激
免疫力をアップするツボが、「腎兪」。東洋医学では、「腎」を丈夫にすると長生きをして病気をしないと考えられています。夏の暑さに対する強壮作用が期待できます。
最後の肋骨から上にたどっていき、2つ後ろの背骨の両脇にあるツボを、親指と人差し指で挟むように、10~20回ほど揉みましょう。
5:「攅竹(さんちく)」のツボ刺激
夏バテのリフレッシュに最も効果的なのが、眉毛と眉毛の内側にあるツボです。
飼い主さんの親指と人差し指で、両側のツボをまわすようにして圧していきます。ストレスを解消するツボでもあるので、季節を問わず指圧してあげたいですね。
6:「後海(こうかい)」のツボ刺激
水を飲みすぎて下痢をしたり食欲がないなど、胃腸の調子を整えたいときは、「後海」のツボを刺激するのがおすすめ。
尾をもちあげて、尾の付け根と肛門の付け根の間にあるツボを、綿棒の先端で圧します。愛猫の様子を見ながら、嫌がるようであれば無理には行わないでください。
7:「耳尖(じせん)」のツボ刺激
耳の先には、熱を取る作用のあるツボがあります。そもそも愛猫の耳を触ってみていつもより熱いならば、猫も暑さを感じていると考えられます。
飼い主さんは耳を手で包むようにしながら、親指で、耳の先に向かってマッサージをするような感覚で刺激してあげましょう。
以上、ご紹介した東洋医学的なマッサージとツボ刺激法、いかがでしたか?
愛猫が暑がっているかどうかは、足の裏に汗をかいていたり、あまり起き上がらずにぐったりしている様子でわかると、石野先生は教えてくれました。犬と違って、暑いからといってハァハァと息をしたりしない猫たちですが、ちょっとした異変にすぐに気づいてあげるためにも、スキンシップを兼ねたマッサージやツボ刺激を日課にするのもいいですね。