愛猫がキャリー(クレート)嫌いで、動物病院に連れていくのが大変。キャリーバッグを出しただけで、逃げ出して捕まえられない。そんな飼い主さんも少なくないようです。そこで、今回は猫のキャリートレーニングについてお伝えします。
猫にとってキャリー(クレート)はなぜ必要?
犬と違って、おでかけの少ない猫の場合、普段、キャリーはそれほど必要性を感じないかもしれません。しかし、「通院」や「引っ越し」「災害」「入院」…となったら、キャリーが使えないとたちまち困ります。いざというとき困らないように、愛猫をキャリーに慣らすトレーニングをしておきましょう。
使い勝手のいいキャリー(クレート)の選び方
キャリーは、どんな素材、構造、サイズのものを選べばいいのでしょうか?
クレートやキャリーには、ハードタイプとソフトタイプがあります。災害時などは安全性の確保からもハードタイプが適していますが、通院時などはソフトタイプのほうが使いやすいかもしれません。トレーニングの方法は同じですので、できればどちらにも慣らしておくのが理想です。
●ハードタイプなら、プラスチック製で扉が取り外せ、上からも出し入れできるもの
ハードタイプなら、プラスチック製のシンプルなもので、扉が取り外せるものがおすすめ。扉がバタバタすると猫が怖がって入らないので、最初の1~2週間は必ず扉を外して使います。慣れてきたら、扉を付けて全開の状態から、少しずつ扉を閉める練習をしていきます。猫の場合、病院での診療時に脅えてキャリーから出てこないことがあるので、上部にも扉があって上からも出し入れできるタイプが便利です。
リッチェル キャンピングキャリーダブルドア Sサイズ
●ソフトタイプなら、底がしっかりしていて、扉部分がメッシュのもの
ソフトタイプの場合は、形状はリュックでもショルダータイプでもかまいません。ただし、車内で使うなら、クニャクニャしたものより、底がしっかりして縦の芯材が入ったもののほうが安定して車酔いしにくいといえます。また扉部分がメッシュだと、ハードタイプの格子状の扉より外が見えないので、病院の待合室などで猫が安心しやすいかもしれません。
猫壱 ポータブルシリーズ (キャリー)
●中でくるっと回れるサイズ、大きすぎるのはNG
サイズは、猫の全身が入って、中でくるっと360度回転できる大きさが目安。猫は小さな段ボール箱が大好きなことからもわかるように、狭いほうが落ち着くので、大きすぎるのはNGです。
トレーニングは「中に入れる」だけでなく、「移動できる」まで
猫はもともと、暗くて狭い穴をねぐらにしていた動物なので、慣れればキャリーも落ち着けるスペースになるはずです。もしキャリーを取り出しただけで逃げてしまうとしたら、通院のときだけキャリーを使っていたため、キャリー=動物病院というトラウマになっているのかもしれません。トレーニングでいったん嫌なイメージをリセットする必要があります。場合によっては、キャリーも新しいものに変えたほうがいいかもしれませんね。
それでは、キャリートレーニングの方法について具体的に見ていきましょう。
1.キャリーの扉を外して、部屋の中に置きっぱなしにする
扉を外して中にタオルを敷いたキャリーを、普段から部屋の中に置きっぱなしにします。警戒心が強かったりキャリーに恐怖心を持つ猫に、キャリーは特別なものでも怖いものでもないことを認識させます。
2.おやつやおもちゃを入れて、猫が自分から入るようにする
キャリーを警戒しなくなったら、キャリーの中にお気に入りのおやつやおもちゃを入れて、猫が自分から中に入るようにします。一日のうちで何回もくり返すうちに、「ここには絶対いいものがあるはず」という期待感から、何も入っていないときもキャリーに入るようになります。猫が自発的にキャリーに入る行動を強化するため、朝晩のごはんを中で食べさせるのもいいでしょう。
3.扉を付けて練習する
慣れてきたらキャリーに扉を付けます。最初は全開から始め、少しずつ閉じていきます。最終的にパチンと閉めて、1分滞在とか、2分滞在といった練習もしていきます。
猫がストレスを感じたり、嫌がったりすることのないように、ゆっくりと練習を重ねてください。ご家族のほめる言葉やクリッカートレーニングに慣れている子でしたら、それらも上手に活用し、猫をほめながら行うこともお忘れなく。猫にとって、キャリーが心地のよい場所だという印象を付けていきましょう。
4.キャリーを持ち上げて、家の中を歩いてみる
扉を閉めても大丈夫になったら、キャリーを持ち上げて家の中を歩いてみます。それもクリアできたら、短時間、外を一周して戻ってきましょう。外に出ても大丈夫になったら、トレーニング終了。その後も、キャリーはつねに部屋の中に出しっぱなしにしておきます。
もし車の中でキャリーを使用したい場合は、家の中とは雰囲気が違うので、別に車内での練習が必要です。やはり扉のない状態から慣らして、猫が自然に入れるようになってから使ってください。練習を省いて、いきなりキャリーに押し込んで車に乗せると、どんどんキャリー嫌いになりかねません。
災害時にも備えて、今からでもトレーニングを
キャリーが必要になるのは通院時だけではありません。災害時はペット同行避難が原則、避難所でもケージ暮らしになる可能性が高いです。また、入院時は当然ケージに入れられます。キャリートレーニングができていると、避難先や動物病院でいつもと違うクレートやケージに入れられても、ストレスが少なくてすみます。
トレーニングは何歳からでもできます。これまでキャリーを使わずにきた飼い主さんも、もう成猫だからとあきらめず、ぜひトレーニングに取り組んでください。