猫に舐められると、犬と違って痛いですよね。初めて猫を飼った人にとっては、なぜ猫の舌がざらざらしているのか不思議かもしれません。そして、猫が飼い主さんを舐めるのには何か理由があるのでしょうか?今回は、猫の舌のしくみと舐める行動の意味について。
猫の舌がザラザラなのはなぜ?
猫の舌のザラザラは「糸状乳頭」と呼ばれる無数の小突起でその先端が、ノドの奥のほうに向かって生えています。糸状乳頭があるのは舌の中央部で、味を感じる「味蕾」はこのザラザラ部分にはなく、舌の周縁部にあります。
●グルーミング時のクシ代わりに
猫は毛づくろいをする動物です。自分をきれいにするうえでは、この舌のザラザラは汚れもよくとれ、クシ代わりとしてとても役に立ちます。ただし舌にからまって毛が抜け、そのときに飲み込んだ毛が胃や腸にたまって「毛球症*」の原因になることもあります。
*<関連記事>[獣医師コラム]猫のグルーミング
●肉を削ぎ落とすのに便利
ザラザラは食事のときにも重宝します。猫は肉食動物なので、自然界では獲物を食べるときに骨についた肉を削ぎ落したりするのに舌を使っていました。今はほとんどがキャットフードですから、あまり活躍の場面はないかもしれませんが。
●コミュニケーション・ツールとしても
舐めるという行動は、コミュニケーション・ツールの一つ。仲のいい猫どうしが舐め合っている姿はよく見かけますよね。ザラザラが役立っているかどうかはわかりませんが(笑)、舌はコミュニケーション・ツールとしても役立っています。
猫が飼い主を舐めるのは、愛情表現
猫に舐められると結構痛いです。でも、これはアログルーミング(猫同士が舐め合う行為)と同じで、舐め合うのは仲良しのしるし、愛情表現なんです。なかには潔癖症で、舐められるのは絶対イヤという人もいますが、最初からダメというのは少しかわいそうな気がします。多少やらせてあげて区切りをつけるぐらいがいいのではないでしょうか。飼い主さんの気を引くために舐めることもあります。例えば、舐めたら飼い主さんが起きてくれることを学習したら、毎朝舐めに来て目覚まし代わりになることがあります。
また、知人にご主人を亡くした方がおられますが、泣いていると必ず愛猫が涙を舐めに来てくれるそうです。それも段階があって、元気がないときはゴロゴロとスリスリだけなのに、泣いてしまうほど心が落ち込んでいるときは舐めてくれるのだとか。犬には飼い主の感情を読んで慰めるという面がありますが、猫にもあるんですね。
舐めるのは、単なる愛情表現だけじゃなくて、相手の心を読んで気持ちを穏やかにするためのツールとしても使われています。猫も人との暮らしが長いので、そういうコミュニケーション能力を身につけているんだと思います。
猫が舌を出しっぱなしにするのはなぜ?
舌をしまい忘れたようにチョロっと出したままにしている。そんな猫の姿を見かけることがあります。こうした舌の出しっぱなしにも理由はあるんでしょうか?
●リラックスしている
猫が舌を出しっぱなしにするのは、リラックスした状態であることが多いです。口元の筋肉が緩んで、つい舌が出たままになる。家の中の落ち着く場所だからこそ見られる行動であって、一歩外に出たら常にいろんな刺激に取り囲まれるので、こんな油断した姿は見られません。
●鼻ぺちゃ猫種に多い
舌が出やすい猫種もいます。ペルシャやエキゾチックショートヘアのような鼻ぺちゃ系は、マズルが短いため、舌が収まりにくくはみ出しやすいようです。
●病気の可能性もある
肉体的な問題が原因のことも。例えば、犬歯や門歯を失っていると、舌ははみ出しやすくなります。さらに心配なのは病気のケースです。鼻づまりを起こしていたり、鼻炎やウイルス性疾患で鼻がいつもグズグズしている子は呼吸がしづらく、口が半開きになりがち。また、口で息をしているなら心臓系の病気も疑われます。
犬は暑いとハァハァと舌を出してパンティングをしますが、猫が開口呼吸をするのは相当具合が悪いときです。危険な兆候ですので、見逃さないようにしてください。