暑いと、すぐにハァハァと息が荒くなる犬と違って、猫の息が荒くなるのは珍しく、見つかったときは、重篤な事態であることが少なくありません。できるだけ異常に早く気づいてあげるために、過呼吸症状の出る病気にはどんなものがあるのか、なぜ息が荒くなるのかについて、知っておきましょう。
「息が荒い」症状は、重篤なケースが多い
「息が荒い」というのは、「口を開けたまま息をしている」「あえいでいる(せわしなく呼吸をしている)「呼吸をするときに、明らかに胸郭が努力している感じがする(息を吸ったり吐いたりが苦しそう)」といった状態のことです。
一般に、猫の呼吸不全はたいへん見つけにくいもので、こうした症状が見られるときは、すでに重篤な事態に陥っていることが多いんです。まず、そのことをしっかり頭に入れておいてください。
そこで、飼い主さんは、猫がそんなふうに苦しそうに口で息をする前の段階で、異常をキャッチすることが大切です。「息をするたびに鼻翼が深く吸い込まれる」「息をするたびに首の付け根がへこむ」「香箱座りからまったく横になれない」など、「ちょっとおかしい?」と疑われる様子に気づいたら、すぐに動物病院に連れて行ってください。
また、「息が荒い」以外の症状を伴っていないかも、よく観察して。例えば、息づかいだけでなく、「鼻がつまっている」「目ヤニがひどい」等が見られれば、おそらく猫風邪だろうと、診断がつきやすくなります。
過呼吸になる理由
なぜ、息が荒くなるのか。それには大きく3つのパターンがあります。
1つは、体液の電解質バランスが悪化し、アシドーシス(過剰に酸性)やアルカローシス(過剰にアルカリ性)になっており、自ら過呼吸にして、pHのアンバランスを肺の循環で修正しようとして息が荒くなっている場合。
2つめは、貧血。循環する赤血球数が少ないため、過呼吸にしないと酸素を取り込めない。
3つめは、肺そのものに何か病変があり、やはり一生懸命息をしないと酸素を取り込めないケースです。
いずれにしても、その状態を引き起こしている原因を突き止めなければいけません。
「息が荒くなる」病気とは?
「息が荒くなる」症状がみられる病気には、例えば、肺炎や喘息などの呼吸器疾患、心筋症などの心臓疾患、甲状腺機能亢進症や糖尿病などの内分泌疾患、食道の腫瘍や異物による気道の圧迫、胸水による肺の圧迫、貧血・・・等々、さまざまなものがあります。
以下に、猫に比較的多い病気を取り上げてみました。息づかい以外の症状も併せ持つので、見逃さないようにしましょう。
【肺炎】
肺に炎症が起きた状態で、正常なガス交換ができず、呼吸困難を引き起こします。
【喘息】
気道が狭くなり、息がスムーズに吐けない病気です。咳やゼーゼーという喘鳴性の呼吸をするのが特徴。
【フィラリア症】
犬と違って、フィラリアの本来の宿主ではないため、感染子虫が成虫に育つのはわずかですが、1匹の寄生でも死に至ることが。肺への寄生がメインで、呼吸困難や咳、突然死することも。
【心筋症】
猫に多い心臓疾患で、「後ろ足が急に立たなくなった」という症状で気づくことが多いです。呼吸が荒くなるのは、痛みから。
【猫伝染性腹膜炎】
ほとんどの猫が持っているコロナウイルスが体内で突然変異を起こして発症する、致死性の高い感染症。胸水がたまることで呼吸困難を起こしますが、末期の状態といえます。
【リンパ腫】
猫に最も多い「がん」。胸水がたまったり貧血になったりして、息が荒くなります。
【膿胸】
重度の風邪や外傷、歯周病から菌が肺に入るなどして、胸腔内に膿がたまる症状。胸郭が圧迫されて開かないので、呼吸が浅く速くなります。
【甲状腺機能亢進症】
高齢猫に多い病気。甲状腺ホルモンの過剰な分泌により、新陳代謝が異常に活発化し、細胞の酸素消費量が増加。肺は多量の酸素を取り込むために過呼吸になります。
【糖尿病ケトアシドーシス】
インスリンの極端な欠乏によってもたらされるアシドーシス(過剰な酸性状態)で、二酸化炭素を排出して体のpHをコントロールしようとして、呼吸が荒くなります。
【熱中症】
急激に体温が上昇すると、猫は発汗ができないため、呼吸による換気で体温を下げようとして、息が荒くなります。一刻も早く体を冷やさないと危険です。
【鼻のトラブル(鼻炎・副鼻腔炎)】
鼻炎は猫に普通にみられる病気ですが、鼻づまりになると、苦しそうな口呼吸になります。