一度なってしまうと長引くことが多い皮膚のトラブル。猫は不調をあまり見せない動物なので、その分気づきにくいことも。
猫にみられる皮膚トラブル
よくみられる皮膚トラブルの1つに「ノミアレルギー性皮膚炎」があります。とくに室内と外を行き来している猫にとっては、ノミの寄生は身近なものです。温かい室内に持ち込まれたノミは、冬でも寄生、繁殖しますから、季節を問わず注意してください。
もう1つ代表的なものとして「皮膚糸状菌症」が挙げられます。真菌の感染によって発症するもので、円形の脱毛がみられるのが特徴です。最近はさほど来院が多いというわけではありませんが、他の動物や人にもうつり、根気良い治療が必要になる病気です。清潔な環境を保つように気をつけましょう。
ストレスが原因の場合も
猫はストレス性の皮膚トラブルも多いものです。非常にデリケートな動物ですので、新しい家族や動物が増えた、引っ越しをした、近所で工事が始まり大きな音がするようになった、などの変化がきっかけとなって、体を頻繁に舐めるようになり、炎症や脱毛などの皮膚トラブルにつながることがあります。
皮膚のトラブルについては適切な薬で治療しますが、根本的な解決にはなりませんので、状況によっては、落ち着かせるための薬を処方しながら極力ストレスを取り除くよう努力することになります。
やっかいなことに、例えストレスが取り除かれたとしても、舐めるという行為は残ってしまい、なかなか完治しないこともあります。始めからストレス性だと決めつけるのはよくありませんが、動物病院で感染症、免疫性によるものでないことが確認されれば、ストレスということも視野に入れて向き合う必要があるでしょう。
グルーミングは猫まかせにしないで
皮膚トラブルにつながる行為として「体を舐める」ということが挙げられますが、きれい好きな猫にとって、体を舐めてグルーミングすることは日常的によくみられる行動です。ただし、ひっきりなしに舐めているようなら注意が必要です。行動をよくみてあげてください。
また、「うちのコは触られるのがニガテだから・・・」と、あまり頻繁に触れない飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、毛が短く切れていたり、薄くなっている部分はないか、ブラッシングやスキンシップをしながら皮膚の状態をよくみてあげてください。
皮膚トラブルは一度なってしまうと長期戦になることが多いです。また、口唇や口腔粘膜、首や腹部、後脚などの皮膚に発生する免疫病である「好酸球性肉芽腫症候群※」、扁平上皮癌や肥満細胞腫といった皮膚癌などの皮膚疾患もあります。少しでも早い段階で気づいて適切な処置をしてあげてください。
※白血球の一種である好酸球が多数みられる肉芽腫ができるのが特徴
関連リンク
▶Petwell連載「猫の皮膚病(皮膚炎)とは?ノミ・ダニやカビなどに要注意」
▶Petwell 猫の病気事典「猫のノミアレルギー性皮膚炎」
グラース動物病院
日本大学動物病院で4年間の研修を終了後、同学総合臨床獣医学研究室 神経科大学院研究生として在籍しながら、グラース動物病院に勤務。獣医神経病学会や獣医麻酔外科学会に所属し、国内外における多数の獣医師学会にて論文発表をするなど、知識とスキルの向上に積極的に取り組んでいる。