動物病院嫌いの猫を病院に連れて行く時、「今日はおとなしくしてくれるかしら」と不安な気持ちを抱える飼い主さんは多いことでしょう。けれども、飼い主さんのちょっとした態度や行動が、猫をますます不安にさせていることがあります。今回は、動物病院に来られた飼い主さんがついやってしまいがちなNG行動や、猫のためにぜひやっていただきたいことをまとめてみました。
待合室ではそっと見守って。大丈夫?と撫でることが不安を煽ることも!
動物病院に連れて行く時には、猫を洗濯ネットに入れた上でキャリーバッグに入れることをおすすめしています。キャリーバッグや洗濯ネットが猫にとって安心できる場所になっているように、日頃から入れる練習をしておくことが大切です。
そのほか、猫自身の匂いがついたバスタオルも持っていきましょう。知らない人やほかの犬や猫がいる動物病院の待合室では、猫も不安でいっぱいですから、キャリーバッグをバスタオルで被います。こうすることで、他の人や犬猫からの目隠しと防音になりますし、自分の匂いに包まれることで猫の不安も軽減します。バスタオルは、診察の際に体を包むことにも活用できます。不安傾向が強い猫の場合は、猫が安心できる合成フェロモン製剤「フェリウェイ」をタオルなどに吹きつけておくのもいいでしょう。
ぜひ、猫自身の匂いがついたバスタオルを持参して
「大丈夫だよ〜」と声をかけながら、キャリーバッグのすき間から手を入れて猫を撫でている飼い主さんをよく見かけますが、猫を落ち着かせるためにやっているつもりのこの行動から、飼い主の不安が伝わり、猫をますます不安にさせることがあります。待合室では飼い主さんは必要以上に猫に声をかけずに、静かにそっと見守ってください。
待合室での不安な時間を少しでも短くするためには、動物病院に予約を入れたり、「今から連れて行きたいのですが大丈夫ですか?」と事前に電話を入れて確認しておきましょう。
診察室でリラックスできるアイテムを自宅から持っていこう
診察室に入ったら、獣医師の指示があるまではキャリーバッグから猫を出さないでください。診察の前には問診があり、獣医師は飼い主さんの話を聞きながら、横目で猫の様子を観察しているのです。「先生にご挨拶しましょう」と獣医師のほうに無理に顔を向けさせるのも、猫にとっては怖いことなのでやめましょう。
キャリーバッグから猫を出すときも、まずは洗濯ネットごと診察台の上に出して様子をみます。怒っている猫でも洗濯ネットに入っていれば、バスタオルに包んで診察や採血・採尿などの検査ができますので、勝手に洗濯ネットから猫を出さないでください。検査や処置を行う診察台の上は、猫にとっては嫌なことをされる場所になってしまいがち。
そこで、自宅で使っているお気に入りのマットを診察台の上に敷いたり、好きなオモチャで遊んだり、おやつを食べさせたりすることで、診察台の印象をよくすることができます。ふわふわしたかつお節は、鼻でフガフガ息をしていると香りが立つので、使いやすいアイテムの一つ。猫のお気に入りのものをぜひ自宅から持ってきてください。比較的おとなしく診察できる猫の場合もそのままにしないことが重要です。何かのきっかけで苦手になってしまうこともあるのですから、今の状況が継続できるように、同様に好きなものを与えるなどして、さらにリラックスできる状況を心がけてください。
お気に入りのおやつを持参してあげましょう
飼い主さんは「うちのコ」のプロであるべき!
診察中の猫をおさえる「保定」については、その先生のやり方がありますので、「抑えた方がいいですか?」「触っていていいですか?」と確認してください。動物看護師が保定をする場合にも、愛猫に声をかけて顔をちゃんとみてあげましょう。私は飼い主さんに「猫ちゃんの名前を呼んで勇気をあげてください」と言うのですが、飼い主さんがそばにいてくれることが猫に安心感を与えます。診察台の上で猫の背中をしきりに撫でて落ち着かせようとする人も多いのですが、これはかえって猫の緊張を高めることになるので逆効果です。体に軽く手を当てるくらいはかまいませんが、撫でるなら首から上の猫が撫でられて気持ちいい場所にしましょう。
飼い主さんの中には「私たちは素人だから」と、最初からなんでもかんでも獣医師任せにしてしまう人もいます。確かに我々獣医師は治療のプロですが、飼い主さんは素人ではなく「うちのコのプロ」であるべきだと私はつねづね思っています。自分の猫のことを一番よく知っているのは、毎日一緒にいる飼い主さんにほかならないからです。愛猫が動物病院嫌いなのであれば、どうすれば少しでも病院が好きになれるか、リラックスして診察を受けることができるのか、うちのコに合った方法を飼い主さんも考えて見つけ、ぜひ工夫してみてください。