「ヒゲ」から読み取る猫のキモチ


猫の顔の左右にながーく張り出す「ヒゲ」。実はヒゲにもキモチが表れることはご存知でしょうか?

 

大切なセンサーである「ヒゲ」を、前に向けたり後ろに引いたり

ヒゲはセンサーである、というのは聞いたことがあるかと思います。ヒゲは毛が生えている場所よりも深い層から生えており、根元の周りには多くの神経細胞があります。そのため、ほんのわずかに触れたものでも敏感に感じ取ることができます。風の流れさえ、猫はヒゲで読み取っているといいます。

さて、このヒゲ、猫のキモチによっても動くんです。何の心配もない「リラックス中」は、ヒゲは自然に垂れたまま。
ですが、何か興味のあるものが現れたり、警戒しなければいけないものが出てきたときは、視線とともに、ヒゲもグイッと前に張り出すのです!

ヒゲ-1リラックス中

 

ヒゲ-2興味あり

わかりやすいのは、遊びに誘ったとき。リラックスしている猫の前で猫じゃらしを振り、遊びに誘ってみてください。興味を引かれた猫のヒゲは、前に向くはずです。

野生の猫や野良猫が獲物を捕らえるときは、ヒゲが大きく前へ張り出します。前足で獲物を押さえ込み、ガブリと噛みつくときは、獲物を取り囲むようにヒゲの先が獲物の体に触れています。それによって、一発で獲物を仕留めることのできる“首筋”を探し当てることができるのです。

ヒゲ-3小動物を捕らえようとする猫。ヒゲが獲物を取り囲むように前に張り出しているのがわかります。獲物のかすかな動きもこれでとらえられます。

ちなみに、何か怖いものがあり、ヒゲを守りたいときはグッと後ろに引き、ヒゲが頬を沿うような形になります。

 

猫にとって、ヒゲは大事な感覚器

夜行性の猫は、わずかな光でも見ることのできる目を持っていますが、至近距離のものにはピントを合わせづらく、さらに動いていないものを見分ける力は人間の1/10といわれています。動体視力や暗闇でものを見る力は優れているのに、単純な視力は人間より劣るのです。

そのとき役に立つのがヒゲです。ヒゲが顔の周りの状況を敏感に感じ取り、障害物にぶつからずに進むことができます。小枝や草などにヒゲが当たったときは、猫は反射的に目をつぶります。目が傷つかないようにするためです。人間の“まつげ”と同じ役割をヒゲは果たしているのです。

このように、ヒゲは大事な感覚器。盲目の猫はヒゲが太く、長くなるという報告もあります。視覚に頼れないぶん、ヒゲの触覚で周りの状況を感じ取るのですね。実際、目が見えていないことがわからないほど、家の中でスムーズに移動できる盲目の猫もいます。片方の目だけが見えない猫は、その片側のヒゲだけが長くなるという報告もあります。

ヒゲ-4毛のない猫・スフィンクスは、ヒゲもほとんどありません。ですから、普通の猫よりも視覚に頼る生活をしているといわれます。

 

ところで、白いヒゲと黒いヒゲがあるのは?

猫のヒゲには黒いヒゲと白いヒゲがあります。

Manolo Domina dall'altro黒いヒゲ

 

ヒゲ-6白いヒゲ

これは毛色と同じく、その猫が持つメラニンによって決まります。黒い猫はメラニンの量が多いので、ヒゲもやはり黒に、白い猫はメラニンの量が少ないので白になりやすくなります。

しかし、なかには全身は黒っぽいのに白いヒゲが生えていたり、白いヒゲの中に1本だけ黒いヒゲがある猫も。メラニンの表れ方にはバラつきがあるので、こうしたことも起こります。我が家のサビ猫のヒゲは、黒白入り混じっています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAサビ猫・ちゃー坊のヒゲは黒白入り混じり。

 

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富田園子

編集&ライター、日本動物科学研究所会員 幼い頃から犬・猫・鳥など、つねにペットを飼っている家庭に育つ。編集の世界にて動物行動学に興味をもつ。猫雑誌の編集統括を8年務めたのち、独立。編集・執筆を担当した書籍に『マンガでわかる猫のきもち』『マンガでわかる犬のきもち』『野良猫の拾い方』(大泉書店)、『ねこ色、ねこ模様』(ナツメ社)、『ねこ語会話帖』『猫専門医が教える 猫を飼う前に読む本』(誠文堂新光社)など。7匹の猫と暮らす愛猫家。 ▶HP:富田園子ホームページ ▶執筆&編集した本: 『マンガでわかる…

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