目は心の窓
猫の瞳孔が明るさによって大きさを変えることはよく知られていますよね。暗いところでは大きく、明るいところでは細く形を変えます。これは取り込む光の量を変えるためです。
では、キモチによっても瞳孔の大きさが変わることはご存知でしょうか?
ドキドキと興奮したり、「何だろう?」と興味を持ったりすると、瞳孔は大きく開きます。
冷静に攻撃しようというときには、瞳孔が細く鋭くなって相手を見つめます。
これはアドレナリンのせいで、実は猫に限らず、動物全般がそうなります。
人も同じですが、日本人は瞳孔の周りの虹彩も黒っぽい色のため、瞳孔の大きさの変化がわかりにくいのです。
でも、誰かと話していて「なんとなく恐い」と感じたときには、相手の瞳孔が大きくなっていることをどこかで感じているのかもしれません。
では、興奮でも冷静でもない、穏やかで安心したキモチのときは、瞳孔はどうなっているかというと、中くらいの大きさで、少しだけ大きくなったり小さくなったりを繰り返しているといわれます。安心しているため、まぶたは大きく開かれておらず、トロンとした表情です。愛猫がこの状態のときは、「安心しているんだな。ヨシヨシ」と思ってOKです。
「瞳孔がキモチによって変化する」ことを実感するには、愛猫が落ち着いた気分のときに、目を合わせて名前を呼んでみてください。その瞬間、猫の瞳孔に変化が起きるはずです。
興奮してるけど目が細いのは?
私を威嚇するちゃー坊。本気ではなく、子猫時代の「ごっこ遊び」のようなもの。
ここで、瞳孔の大きさについて世間でちょっと誤解されているところがあるので、補足しておきましょう。
上の写真は、子猫が威嚇しているポーズです。強気のようですが実は弱気なので(「やべえ、勝てねえ」と思っている)、耳は傷つかないよう、後ろに伏せられています。完全に伏せられているので、顔が真ん丸になるのが特徴です。しっぽは恐怖でふくらんでいます。強がってみせるため、相手に対して体を斜めにしています。自分を大きく見せるためです。
こうした威嚇のときは、興奮しています。
「え、でもちょっと待って?興奮していると瞳孔は広がるんじゃないの?この子の瞳孔、細いじゃない」と、思いませんでしたか?
そうなんです。この写真を見ると、瞳孔は大きくないですよね。これを説明するのがなかなか難しかったのですが・・・。
瞳孔の大きさは、周囲の明るさとキモチの相関関係で決まります。明るい場所だと細くなりますが、興奮するとアドレナリンの影響で広がります。ただ、真ん丸くなるまで目いっぱいに広がるとは限りません。「普通に明るい場所にいるときよりは、広がっている」状態です。
同じように、暗い場所にいて瞳孔は比較的大きいけれど、冷静なキモチの場合もあるわけです。
「目は心の窓」ですが、目だけでキモチを判断することは無理。全身のポーズや周囲の状況も合わせて、判断しなければいけないのですね。
最後に、前回のクイズの答え
前回、日本猿、犬、猫の中で、もっとも表情が「少ない」のはどの動物か、というクイズを出しました。
答えは「猫」です。
そもそも表情とは、群れで生活する動物が、相手にキモチを伝えるために発達したものといわれています。日本猿は群れで生活をします。リーダーがいたり、厳しい上下関係があったりと、複雑な社会を形成しています。その中で相手と意思疎通をするには、表情やポーズでキモチを表すことが必要です。サルが表情豊かなのは、みなさん納得だと思います。
犬と猫、どちらが表情豊かという点については難しいところですが、上記の理論からいくと、犬は群れで生活するため、猫よりは表情豊かということになります。猫は基本、単独で生活する動物のため、表情筋があってもあまり役に立たないのです。
じゃあなぜ、「まったく表情がない」のではなく、「少しはある」のか?それは、完全に単独行動の動物ではなく、ゆる~い社会があるからです。俗にいう「猫の集会」がそれです。
そういうわけで、表情が少ない猫からキモチをどう読み取るか、そのポイントをこれからいろいろ教えていければと思います。
なんかごちゃごちゃ言ってるけど、見りゃキモチなんてわかるじゃん~。人間て鈍感ね
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