防災グッズだけでは不十分!避難現場で役立つ愛犬を守るための対策9ヵ条

今回はペットの災害対策についてお話ししたいと思います。単に同行避難に必要なものを準備するだけでなく、日頃の生活やトレーニングで愛犬に身につけさせておきたい行動やマナーもあります。日常とはまるで違う避難現場で遭遇しかねない問題とその対策について、ドッグトレーナーの目線からアドバイスしていきます。

(1)慣れない物音に怯える!
⇒「苦手な音は克服しておこう」

災害地では、普段あまり経験しない物や音に出合うことがあります。例えば、がれきの撤去などで大きな音のする重機が入ることも。日頃から生活の中でいろんな音に慣らしておくことが大切です。震災以降、愛犬が物音に敏感になったという相談をよく受けます。音響CD、You Tubeなども活用し、苦手な音があれば克服しておきたいですね。

 

(2)道には がれきがゴロゴロ?
⇒「お散歩でパッド(足裏)を鍛える」

石ころだらけだったり、ゴミが散乱していたり、側溝やトタンなど、普段なら避けて通れる足場も、災害時は歩かなければならないことがあります。抱っこができない中・大型犬の場合はとくに必要です。お散歩量が少ない子はパッド(足裏)が薄くてやわらかく、短い距離を歩くだけで傷つきかねません。日頃のお散歩で、アスファルトはもちろん、ジャリ道など、少々歩きづらい場所も歩く練習をしておきましょう。

ペットライブス愛犬クッパはとてもタフ。こんな岩場でもまったく躊躇することなく歩きます。

(3)ハウスがいつもと違う!
⇒「どんな環境でも落ち着ける練習を」

避難所では、普段使っているタイプのハウスに入れるとは限りません。一般に自治体で用意されている物は金属製の網状のケージがほとんどのようです。普段のハウス以外にも慣らしておくと安心です。また、災害初期はハウスも用意されていないことがあります。犬は周囲が覆われ、視界が遮られると安心しやすいので、段ボールに入る練習をしたり、タオルで視界を制限するなどの工夫も。

もう一つ重要なことは、ハウスに入った状態で飼い主さんと離れること。避難場所ではペットエリアと人のエリアが別の可能性もあります。お留守番やお出かけなどを利用して、ハウスに入った状態で飼い主さんが離れる練習を積んでおきましょう

ペットライブス自治体で用意されることが多い金属製の網のケージ

ペットライブス 自宅では、落下物に備え、プラスチック製のクレートが安心ですが、避難の際には、折畳み式のソフトクレートが軽くて持ち運びに便利です。

(4)知らない人に触られる
 ⇒「場合によっては口輪の装着も」

保護されたあとの診察やボランティア・スタッフによるお世話など、飼い主さんがいない状態で知らない人に触られる可能性があります。普段から誰が触っても、おとなしくしていられるように。どうしても難しい場合は、口輪を付けて対処する方法も。そのためには日頃から口輪を付ける練習が必要です。

ペットライブス老若男女、誰にどう触られても問題ないようにしておくと安心です。

(5)知らない犬がいっぱい!
⇒「必要以上にあいさつしない落ち着きを」

他の犬に吠えたりケンカをしないことはもちろんですが、興奮して必要以上にあいさつをしたがったり、遊びに誘うのも問題です。最近は、飼い主さんの「社会化」への理解が高まり、パピーパーティやドッグランなどで小さいころから他の犬とふれあい、仲よく遊べる犬が増えています。ところが、その代償として、「他の犬を見ると興奮すること」を学習するという弊害が…。本来、「社会化」とは、他の犬と仲よく遊べるだけでなく、他の犬がいてもいないのと同じように振る舞えるようになることです。

ペットライブスよかれと思ってふれあう機会をもっても、興奮することしか学んでいないかもしれない?

(6)道にガラスや金属片が・・・
⇒「非常時に備えて靴が履けるように」

ガラスや金属片などが散乱している場所を歩かなければならないことも。急に靴を履かせようとしても、履いたことがなければ嫌がるのは当たり前。普段から靴を履く練習も必要です。デザイン性よりも携帯性など機能性重視で、マジックテープなどで固定できるものがお勧めです。

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▼天然ラテックス製の使い捨てのものもあります。
PAWZドッグブーツ
※画像はPAWZホームページよりお借りしています。

(7)寒さや抜け毛対策が必要になることも
⇒「服を着られるようにしておく」

日頃の生活では、服はオシャレで着ることがほとんどだと思いますが、避難所では抜け毛や寒さ対策、患部の保護など様々な場面で役立ちます。必ず効果があるわけではありませんが、不安傾向の強い子には下記のような商品もあります。

サンダーシャツサンダーシャツ。犬の体をしっかり包み込むことで不安感をやわらげ、問題行動を軽減するウェアです。

(8)どんなトイレ環境かわからない・・・
⇒「目標は、飼い主さんの指示で排泄できること」

ペットシーツでできるのが理想ですが、すぐに物資が届かない場合もあるので、シーツでしかできないのも問題です。指定した場所で飼い主さんの指示によって排泄できるのが、ベストです。トイレトレーニングは完璧と思っていても、犬がトイレの設置場所で覚えていると、引っ越しや模様替えで失敗することになったり、足の裏の感触やにおいで覚えている場合は、トイレシーツの種類が変わると失敗することもあります。

ペットライブス愛犬のトイレトレーニング、本当にできている?

 

(9)飼い主さんと一緒にいられなくなることも
⇒「ストレスに強い犬に育てる」

飼い主さんのことが大好きな犬の場合、つねに一緒に行動できればストレスフリーでこの上ない喜びですが、逆に災害時突然一緒にいられなくなったときのストレスは計り知れません。慢性的なストレスは免疫機能の低下も招きます。急な環境変化に耐えられるタフな犬になるよう、日頃から様々な環境で練習し、時には思い通りにならないことを経験させることも重要です。ストレスを受けることで結果的にストレス耐性をつけることができるのです。

三井翔平

ドッグトレーナー(スタディ・ドッグ・スクール所属)、学術博士、国際資格 CPDT-KA(Certified Professional Dog Trainer - Knowledge Assessed) 麻布大学大学院獣医学研究科博士後期課程にて犬と人のコミュニケーションに関する研究を行い博士号を取得。その後 ドッグリゾートWoof 専属チーフドッグトレーナーを務め、日本テレビ系「ザ!鉄腕!DASH!!」のダメ犬・デブ犬克服大作戦をはじめとしたTV番組にも出演。現在はスタディ・ドッグ・スクールを拠…

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