愛犬に、少しでも長く健やかな状態でシニア期を過ごさせてあげたい。それは飼い主さんの誰もが抱く願いでしょう。そのためには、関節のケアはとても大切です。
愛犬の健康で心配なことは「骨・関節系の病気」がトップ!
Petwellが今年4月に行ったアンケートでは、愛犬の健康管理上、「骨・関節などの病気」が心配という回答が17.3%ともっとも多い結果となりました。
では、その対策として行っていることは?というと、関節ケアの一環として、食事やサプリメントといった体の中からのサポートにも重きを置く飼い主さんが結構いらっしゃることがわかります。
しかし、その一方で、「何もしていない」と回答した人が17.2%と、その他の病気が心配と回答した人を含めた全体と比較して多く見られました。愛犬の関節が心配ではあるものの、実際には何をすればいいのかよくわからないという背景が見え隠れします。
そこで、日々、関節系のトラブルを抱える犬猫を多く診察していらっしゃる、日本初のリハビリテーション専門動物病院『D&C Physical Therapy』の長坂佳世院長に、関節ケアに取り組む際のポイントについてお話を伺ってみました。

麻布大学外科学第2研究室卒業。CHI Institute(アメリカ、フロリダ州)にて、鍼治療認定資格(CVA)およびマッサージ療法認定資格(CVT)取得後、ゼファー動物病院にて一般診療、リハビリテーション診療を担当。2011年にはテネシー大学公認のリハビリテーション認定資格(CCRP)を取得し、2013年、日本では初となる犬猫のリハビリテーションに特化した『D&C Physical Therapy』を開院。飼い主や犬猫にとって負担とならない、それぞれのライフスタイルに合わせたリハビリ医療プログラムを提案している。
▶『D&C Physical Therapy』
ポイント1:1歳以上の犬はすでに関節症になっている!?
運動器疾患には股関節形成不全をはじめ、いろいろありますが、どんな犬にも関係するのが関節症。日本では成犬の2割以上が、そしてシニア犬になるとその多くが患っていると言われます。
長坂先生によれば「症状も表さず、レントゲンでは確認できない程度ですが、実は1歳以上の犬ではすでに関節症になっていると考えたほうがよい」とのこと。若いから大丈夫と油断しないほうがいいかもしれません。だからこそ、日々のケアが大事となるのですね。

ポイント2:肥満は大敵、体重を落とすだけでも予防&症状緩和に!
関節症は肥満犬に多いことも忘れてはなりません。体重を落とすことで症状をかなり軽減できるそうなので、太らせ過ぎないことは重要なポイント。海外に比べ、日本の犬の肥満率は高い(肥満15.1%+過体重39.8%=54.9%)*1という話ですから、食事内容や運動量などを見直してあげる必要も。

ポイント3:関節ケアは食事やサプリメント+αのトータルなケアで
ならば、「食事に気をつけて、サプリメントも…」とつい食品に意識がいってしまいがちですが、それだけでは足りません。
「関節症は治るものではないので(軟骨は破壊されると元に戻らない)、食事や運動、環境などトータルなケアによってできるだけ健康な状態を維持していきましょうという対処の仕方になります。
そのために、食事に関して言えば、犬にとって必要な蛋白質をしっかり摂れる、きちんとした食事を心がけること。それプラス適度な運動や環境、サプリメントなどがあるわけで、どれかが優れていればよいというわけではありません」と長坂先生は、そのバランスの大切さを強調されます。
なお、蛋白質の過剰摂取は腎臓に負担がかかるので注意を。また、人用のプロテインを与えるのもNGだそうです。

ポイント4:フードに何かをトッピングするなら1割以内に
バランスと言えば、食事内容のバランスも大切です。相乗効果を期待してか、関節によいといわれるものを手当たり次第に与えている人もいるかもしれません。しかし、「あれこれ与え過ぎるのは無駄では?」と長坂先生。
ドッグフードは栄養バランスを考えて作られているので、折角のバランスを崩さないよう、トッピングは1日の摂取カロリーの1割以内に。
ポイント5:軟骨系には足りない栄養成分を意識的に追加してあげる
そうした中で、ある程度補助的効果が期待できるのがサプリメントです。特に軟骨系は筋肉系と違い、サプリメントを使うなどして意識的にその働きを助けてあげる必要があるのだとか。
「関節は自転車と同じと考えてください。使わずに動きを止めてしまうとやがて錆びてしまう。しかし、少しでも使い続ければ錆びにくいですし、そこに油を差せばもっと長持ちする。関節も同じなんです。サプリメントはその油の役目の一端を成すものと言っていいでしょう」

ただし、サプリメントは痛み止めや治すための薬ではありません。食品のカテゴリーに入り、食事だけでは足りない栄養成分を細胞に届けて、関節の動きを少しでも楽にし、QOLを上げることを目的として使用すべきものです。
「効果には個体差があり、狙ったところに必ずしも効果が現れるというわけでもありません。毛艶や表情、行動など体全体に何らかのソフトな変化が出てくることも。それが見られない場合には、そのサプリメントでは不十分と考えられるので、他の商品に替えてみたほうがよいかもしれませんね」
ポイント6:サプリメントはエビデンスに基づいた犬用に開発されたものを
さて、サプリメント選びや使い方には悩みがつきものです。例えば、使うタイミング。遺伝的に元々関節系のトラブルが懸念される犬などは、シニア期になるのを待たず若い頃から使い始めるのもよいそうです。そして、大切な愛犬に長く継続して使うものですから、やはり品質が気になります。関節に限らず人用のサプリメントを代用しているケースもまま見られるものの、人用と犬用では成分の分子量が違う他、犬にとって安全かどうかも確かなデータがないため、代用は控えたほうがよいとのこと。

関節ケアサプリメントでよく耳にする成分に、「コンドロイチン」「グルコサミン」「ヒアルロン酸」「ASU(アボカド大豆不鹸化物)*2」などがありますが、同じ成分でも、体への吸収率に関係する分子量や成分の純度など、品質にもこだわって選びたいものです。
続けてこそ効果が期待できるサプリメント。食事や運動、環境などのケアと合わせ、愛犬の健康寿命を延ばせるように、元気なシニア犬を目指していきましょう。

*1)Characteristics of obese or overweight dogs visiting private Japanese veterinary clinics / Shiho Usui et al. / Asian Pacific Journal of Tropical Biomedicine, Volume 6. Issue 4. April 2016. P338-343, https://doi.org/10.1016/j.apjtb.2016.01.011
*2)アボカド中毒の元になるペルシンは葉や樹皮、果実の種に含まれており、これらはASUの製造に使用されておりません。
(取材・文/大塚良重)
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