Petwellでは、犬の飼い主さんを対象に「愛犬の寄生虫対策」についてのアンケートを実施しました(2016年3月実施/WEB調査/サンプル数=197)。それによれば、フィラリア予防は9割以上の高い実施率(毎年実施している:91.4%、したりしなかったり:5.6%)。
とはいえ、フィラリア予防に関する知識については、理解されていないこともまだあるようです。そこで、知らない人が25%以上いた疑問について、寄生虫研究の第一人者である獣医学博士・佐伯英治先生に解説いただきました。フィラリア対策の季節を前に、知識に自信のない人はもちろん、よく知っているつもりの人も、正しい知識をおさらいしておきましょう。
マンションの高層階で飼っていて、「お散歩も蚊のいるような草むらには行かないし・・・」という飼い主さんの言い分。佐伯先生、いかがでしょうか?
A1. 「探索型」の蚊の飛行能力を侮るなかれ!
「フィラリアを媒介する蚊のなかでも、とくに身近なのがヒトスジシマカやアカイエカ。この2種は吸血スタイルが異なり、ヒトスジシマカが生息地でターゲットを待つ“待ち伏せ型”であるのに対し、アカイエカはターゲットを追って長い距離を移動する“探索型”。
待ち伏せ型のヒトスジシマカ
探索型のアカイエカ
もともと鳥を好適ターゲットとするため高いところを飛び(15m程度)、上昇気流にうまく乗れば、マンションの上階まで達することもあります。どこからでも住まいに侵入してくる(たとえばエレベーターや人とともに)ので、油断はできません」
フィラリアの予防期間は、「蚊が出始めて1ヵ月後から、蚊がいなくなった1ヵ月後まで」とされていますが、蚊がすっかり姿を消した11月や12月になぜ投薬が必要?というのが、飼い主さんの率直な疑問です。
A2. もしもに備えて、蚊がいなくなった1ヵ月後まで投薬を
「フィラリアの予防期間が、蚊の活動期間より1ヵ月後ろにずれているのは、フィラリアの薬が、効果が持続する“予防薬”ではなく、与えたときだけに効く “駆除薬”だからです。蚊が出始めた直後は、まだ蚊が感染力のある幼虫を保有している可能性が低いため、犬が蚊に吸血されても感染する機会は少ないものと考えられます。 万一感染したとしても、その後1ヵ月以内に薬を与えれば、それまでに感染したフィラリアの幼虫をまとめて全部駆除します。
そして蚊を見かけなくなったと感じた途端に投薬をやめてしまうと、最後の投薬以降にまだ危険な蚊が少数生き残っていて、それらに愛犬が刺されてしまうおそれがないとは言い切れません。あなたの愛犬をフィラリアの感染から100%守るためには、蚊が目立たなくなってからさらに1ヵ月後、念のために最後の駆除をしてあげるというのが、フィラリアの完全予防を保証する年間プログラムの仕組みなんです。秋口に油断して感染するケースも少なくないので、しっかり最後まで投薬してください」
月1回のフィラリア薬の投与、つい忘れることもありますよね。「遅れても、後から投与すれば問題ないんじゃない?」というのは、飼い主さんの都合のいい解釈でしょうか。佐伯先生のご判断は?
A3. 幼虫が血管に移動した後では、駆除はできません
「投薬の遅れが数日なら大丈夫でしょう。でも、1ヵ月以上遅れてしまうと、リスクはゼロではありません。蚊に刺されて犬の体内に入ったフィラリアの幼虫(感染力ある幼虫で発育段階を第3期幼虫といいます)は、数日後に第4期幼虫となり、皮下組織や筋肉と筋肉のあいだなどで成長を続けます。そして約2ヵ月で第5期幼虫に発育してここで初めて血管内に入り、やがて心臓に到着して感染後約6か月で成虫になります。フィラリアの予防薬は、血管に入る前の第4期幼虫を狙って駆除するものです。
さらに詳しく説明すれば、一般に感染後55日くらいまでの第4期幼虫には薬がよく効きますが、それ以降の幼虫に対しては効果がだんだん弱まります。したがって、投薬が1か月遅れる、つまり投薬の間隔が60日以上広がると100%の効果は望みにくくなります。ここで生き残ってしまった幼虫は、やがて心臓で成虫になる可能性があります。
投薬期間が2ヵ月以上あいてしまうと、感染したフィラリアが駆除のタイミングをすり抜けて、血管へと移動してしまう可能性がより一層高まります。そうなると成虫になるのを阻止することは不可能です」
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