人の命に関わる感染症も。今こそ知っておきたい「愛犬のマダニ対策」を獣医師が徹底解説。

フィラリア症やノミの予防はきちんとしているという飼い主さんは多いと思いますが、マダニの予防は意識して行っていますか? 野山に行かなければ大丈夫、と油断していませんか?
マダニは犬や人の体にくっついて血を吸うだけでなく、人で死亡例も報告されている重症熱性血小板減少症候群(SFTS)をはじめとする、さまざまな感染症を引き起こす原因にもなる危険な寄生虫です。
マダニの発生状況や予防法、マダニが媒介する感染症について、長野県の佐久平マール動物病院院長・土屋文人先生に教えていただきました。

<お話を伺った先生>
佐久平マール動物病院 院長
土屋 文人先生

佐久平マール動物病院土屋文人院長
日本大学学士編入後、獣医臨床病理学研究室所属、2005年卒。東京・神奈川・長野の動物病院で計7年間勤務後、現在の佐久平マール動物病院を開業。現在、Cat Friendly Clinic GOLD level申請中。
日本獣医師会、長野県獣医師会、獣医麻酔外科学会、獣医がん学会所属。

都市部でも油断大敵。愛犬に忍び寄るマダニの恐怖

飼い主
飼い主
うちはコンクリートの多い都市部だからマダニとは無縁ですよね。
土屋先生
土屋先生
いいえ。少しでも草むらがあれば、どこにいてもマダニに咬まれる可能性はあるのです!

家の中に潜むイエダニや耳に寄生する耳ダニ(ミミヒゼンダニ)のような1mm以下の微小ダニと違って、マダニの成ダニは3~4mmですから肉眼で確認できます。マダニにはいくつかの種類がありますが、フタトゲチマダニやヤマトマダニは日本全土に広く分布し、河川敷のあぜ道の草むら、公園や道路の植え込みなどにも生息しているので、都市部でも散歩の時に遭遇する可能性はあります。

散歩中草むらを嗅ぐ茶色いダックスフンド
都市部でも、散歩コースの公園や河川敷の草むらはマダニが潜んでいる可能性が。

マダニは犬だけでなくさまざまな哺乳類の血液を栄養源としており、人に寄生することもあります。シカやイノシシ、野ウサギ、タヌキ、キツネ、ハクビシンなどの野生動物にはマダニが多く寄生していることから、地方だけでなくタヌキやハクビシンの生息が確認されている都心部にもマダニの生息域が広がっていると考えられます。

側溝のタヌキ
マダニは野生動物にも多く寄生している。

最近では犬と一緒にハイキングやキャンプなどアウトドアレジャーを楽しむ人も増えており、河川敷など自然豊かな場所を訪れることでマダニが寄生する機会も増え、寄生に気づかずにそのまま都市部に持ち込むこともあります。人や犬の長距離の移動に伴ってマダニが発生する範囲も広がっていると考えられ、日本全国、どこにいてもマダニに遭遇する可能性があるのです。

 

イボかと思ったら!! マダニってどんな寄生虫?

飼い主
飼い主
けっこう身近なところにいるのですね。マダニをちゃんと見たことがないのですが、うちのコの体についたら見つけられるでしょうか?
土屋先生
土屋先生
マダニが体について血を吸うと、小豆から枝豆くらいの大きさになります!イボだと思って来院する飼い主さんもいます。

マダニは昆虫ではなくクモの仲間で、8本の脚をもち動物の血液を吸って成長、繁殖します。卵から孵化した幼ダニ(体長約1mm)は、吸血・脱皮しながら若ダニ(約1.6mm)、成ダニ(3~4mm)へと成長します。

いろいろなサイズのフタトゲチマダニ(バイエル薬品株式会社提供)フタトゲチマダニの成長による姿・サイズの違い。成長段階によって、見た目やサイズが異なる。

マダニは普段は草むらなどに潜んでいて、近くを通りかかった動物の体温や振動、呼吸による二酸化炭素などを感知して体に寄生し、吸血しておなかがいっぱいになると離れます。マダニの体は固い外皮で覆われていますが、成ダニは1~2週間かけて吸血するうちに3~4mmサイズから小豆粒くらいに膨らんで、最大で1~2cmの枝豆くらいの大きさにまでなります。犬の体に豆のような突起を見つけて、イボだと思って来院する飼い主さんもいます。

たくさん血を吸ったメスの成ダニは、動物の体から地上に落ちて草むらに戻り、一度に2000~3000個もの卵を産みます。

吸血前後のマダニ(バイエル薬品株式会社提供)吸血前後でもサイズが異なり、吸血後は100倍以上の体重になる。

 

マダニのライフサイクルと犬への寄生の図(バイエル薬品株式会社提供)マダニは吸血と脱皮を繰り返して成長。成ダニは1~2週間かけて吸血する。

 

マダニは人の命を脅かす感染症の運び屋にもなる!

飼い主
飼い主
マダニがついたら、犬はかゆがったり痛がったりしないんですか?
土屋先生
土屋先生
かゆみや痛みはあまりなく犬自身は気付かないことが多いですが、咬まれた部分が腫れてしこりになることがあります

マダニは麻酔のような物質が含まれた唾液を分泌しながら血を吸うため、ノミと違って犬がかゆみを感じることはまれで、気になって違和感を示すことがある程度です。マダニに咬まれた部分に炎症が起こり2~3ヵ月間腫れてしこりになったり、マダニの唾液によってアレルギー性皮膚炎になったり、大量に寄生した場合には貧血を起こすこともあります。

動物病院で取られ瓶に保存されているマダニ
マダニが寄生して佐久平マール動物病院に来院した犬から取ったマダニの一部。

こうした直接的な症状以上に深刻なのは、マダニがウイルスや細菌、原虫、リケッチアなどさまざまな病原体の運び屋となって感染症を引き起こすことです。マダニが動物の血を吸う時に病原体が体内に入ることで感染しますが、犬だけでなく人にも感染する「人獣共通感染症 」を媒介することがあり、中には命に関わる病気もあるので軽視できません。
 

飼い主
飼い主
わぁ怖い!マダニから感染する病気にはどんなものがありますか?

土屋先生
土屋先生
人で死亡症例が報告されているSFTSは特に注意が必要です。

【マダニが媒介する、とくに注意が必要な感染症】
●バベシア症
バベシア原虫がマダニを介して犬の体内に入り、赤血球に感染することによって発症します。海外では人でもまれにバベシア症の発症例が確認されていますが、国内の犬のバベシアは人での感染例はありません。

犬の症状:発熱、黄疸、貧血などで、重症化すると死に至ることもあります。

●重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染します。西日本での発生が多く、マダニ以外にも犬から感染したとされる例や、猫から感染したと思われる人の死亡例が報告されています。

犬の症状:一般的に無症状のことが多く、発熱、元気や食欲の低下、白血球減少、赤血球減少などの症状が現れることもあります。

人の症状:発熱、頭痛、倦怠感、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)で重症化すると死に至ります。致死率は10~30%。
 

愛犬にマダニがついたら自分で取らずに動物病院へ!

飼い主
飼い主
うちのコにマダニがついているのを見かけたら、どうやって取ればいいですか?
土屋先生
土屋先生
無理に引っぱるとマダニの体がちぎれて大ごとに。無理をしないで、遠慮なく動物病院に来てください。

マダニは口の先にある鋏角(きょうかく)と呼ばれるギザギザの突起で皮膚を切開し、口下片(こうかへん)という突起を差し込んで吸血します。がっちりと皮膚に食い込み、セメント物質で体を固定しているため、マダニを無理に取り除こうとすると体がちぎれて口の部分が皮膚に残り、その部分が腫れたりしこりになったりします。また、マダニが病原体を持っていた場合には、体を強くつまむことで病原体を犬の体に注入してしまったり、つぶしてしまったときに人が感染症にかかってしまうリスクもあります。

マズルをマダニに咬まれる茶色い犬

犬の体でマダニがつきやすい部分は、毛の薄い頭部(耳や目の周り、鼻の周りなど)、手先や足先(指の間)などです。マダニがついていることに気づいたら、自分で取らずに動物病院で取ってもらいましょう。
 

月1回のマダニ駆除薬でしっかり予防しよう

飼い主
飼い主
マダニがつかないようにする良い方法は何かありませんか?
土屋先生
土屋先生
犬用のマダニ駆除薬を月1回投与すれば、愛犬をマダニから守ることができますよ。

マダニが媒介する感染症を予防するためには、マダニが寄生しないように対策をとることが大切です。月1回の投与で愛犬をマダニから守ることができるマダニ駆除薬がありますので、定期的に投与するとよいでしょう。
マダニ駆除薬には錠剤やおやつタイプ(チュアブル)の「経口薬」と、皮膚に滴下する「スポット薬」があり、約1ヵ月間効果が持続します。マダニだけでなくフィラリアや回虫などの線虫類やノミなども一緒に駆除できるものもあります。

【経口薬】
おやつタイプは犬が好きな味がついているので、比較的簡単に与えることができます。経口薬は、マダニを駆除する成分が愛犬の血液の中にあるため、マダニが愛犬の血液を吸うことで駆除効果が発揮されます。

【スポット薬】
背中に垂らすだけなので簡単に投薬できます。数日間はシャンプーを控える必要がありますが、マダニが皮膚や毛の上に乗っかり、薬剤と接触すると駆除効果が発揮されます。薬の中には即効性が高く、マダニに咬みつかれる前の段階で素早く駆除できるものもあります

 

原っぱで散歩するビーグル犬
しっかり対策をしてから、安心してお散歩やレジャーへ!

 

飼い主
飼い主
マダニの予防期間は、いつからいつまでですか?

土屋先生
土屋先生
マダニの発生時期が長くなっているので、少なくとも3~11月頃までは予防してください

マダニは特に夏場に活動が活発になりますが、気温が年々高まっている影響で、マダニを見かける期間も長くなっています。蚊の発生よりも早く、春先からマダニを見かけることもあるので、3~11月頃までの投薬をおすすめしています。自然豊かな環境に住んでいたり、頻繁にアウトドアレジャーに出かけたりする場合には、年間を通しての定期的な駆除を検討しましょう。かかりつけの動物病院で相談してください。

たとえばキリの良い毎月1日を予防の日と決め、1ヵ月の投薬サイクルを守るようにしてください。もし投薬のし忘れに気付いたら、その時点からすぐに投薬を再開するよう心がけましょう。

キャンプで飼い主の横に座る柴犬
キャンプやハイキングなど、自然豊かな場所へ愛犬とよくお出かけする方は、定期的なマダニ駆除を習慣に。

SFTSをはじめとするマダニが媒介する感染症は、時には人の命を奪うこともある怖い病気ですが、月1回の投薬でマダニを確実に駆除できるのですから、これを行わない手はありません。飼い主さんと愛犬の健康を守るためにも、犬のマダニ駆除対策を徹底的に行いましょう。
 

マダニ寄生が増加中!?

「当院ではノミ1:マダニ9で、圧倒的にマダニの寄生・相談のほうが多く、マダニ駆除の啓発に力を入れて取り組んでいます。室内飼育の犬でも散歩でマダニが寄生することも多く、『マダニがついた』と来院する飼い主さんは以前よりも増えています。
飼い主さんとお話する土屋文人獣医師
それは、飼い主さんと愛犬のスキンシップの時間が長くなり、ボディチェックで発見する機会も増えているとも言えます。それはよいことですが、やはりつかないように予防するに越したことはありません。愛犬にマダニが寄生した経験のある飼い主さんは、駆除薬を投与するとマダニがつかなくなることを実感し、定期的に欠かさず駆除しています。

人と犬の往来や物資の流通が全国規模になっている今、どこにいてもマダニの寄生やマダニが媒介する感染症にかかる可能性は否定できません。あなたと愛犬の生活環境にマダニを寄せつけないために、しっかりと駆除しましょう」(土屋先生)

 

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