今年もまもなく「フィラリア症」の予防シーズンが始まります。定期的に予防薬を投与するのは、今や犬の飼い主の常識といっても過言ではないほど広く浸透していますが、フィラリア症とその予防について、本当に正しく理解できていますか?感染すると命に関わる場合もあるフィラリア症から愛犬を守るために、今一度おさらいしてみませんか。
飼い主のみなさんから寄せられたフィラリア症や予防薬に関する疑問や不安について、バイエル薬品株式会社の獣医師・下羽麻里奈先生にお答えいただきました。
予防をしなければ、感染は避けられない


フィラリア症は、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫の感染によって引き起こされる病気で、「犬糸状虫症」とも呼ばれます。フィラリアが犬の心臓や肺動脈に住み着き、心臓や肺、腎臓などにダメージを与え、命の危険にさらされることもある犬にとって重大な病気のひとつです。
ただし正しく予防薬を投与すれば、ほぼ100%予防は可能です。予防薬の普及によってフィラリア症にかかる犬は著しく減少しましたが、「フィラリア症」という病気そのものがなくなったわけではありません。少し古いデータですが、2009~2011年の東京都の保護犬を対象とした調査では、約23%の犬にフィラリアの感染がみられたという報告があります。この数字は都心部でも何も予防をしていなければ感染する可能性があることを物語っています。

フィラリアは私たちの身近にいる蚊によって媒介されます。「うちのコは大丈夫」と思っていても、フィラリア症にかかっている犬がどこかにいる限りは感染のリスクがあるので、毎年の予防は大切です。



フィラリアは線虫の一種で、成虫はオスで約17cm、メスで約28cmにもなり、乳白色のそうめんのような姿をしています。成虫のメスは犬の血液中に「ミクロフィラリア」と呼ばれる幼虫を産みますが、ミクロフィラリアは蚊の体内でしか成長できないため、一度蚊を経由してから犬に感染します。猫やほかの哺乳類にも感染し、ごくまれに人に感染することもありますが、フィラリアにとって最適な環境(終宿主)は犬の体内です。
<フィラリアの感染経路>
①蚊がフィラリアに感染している犬の血液を吸った時に、蚊の体内にミクロフィラリアが取り込まれる。
②蚊の体内でミクロフィラリアが成長し、感染力を持つ「感染幼虫」になる。
③体内に感染幼虫をもった蚊が犬の血液を吸う時に、刺し傷から感染幼虫が犬の体内に侵入する。
④感染幼虫は皮下組織や筋肉内で成長し、最終的に肺動脈や心臓に移動して成虫となり、ミクロフィラリアを産むようになる。幼虫から成虫への成長期間は約6~7カ月。
体内の幼虫を「駆除」することでフィラリア症を「予防」する


フィラリア症のお薬は「予防薬」という名前から、蚊に刺されたりフィラリアが体内に侵入したりするのを「予防する」というイメージがあるかもしれませんが、実際には犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫を「駆除する」お薬です。幼虫が成長して肺や心臓に移動する前に駆除して、フィラリア症になるのを予防するのです。
フィラリア症予防薬は毎月1回投与するものが一般的ですが、効き方には大きく2つのタイプがあります。1つは「駆除効果が短いタイプ」で、体内に侵入してから1ヵ月の間成長していく幼虫を、毎月の投薬でまとめて駆除します。
もう1つは「駆除効果が長く続くタイプ」で、投薬してから1ヵ月間効果が持続し、幼虫が体内に侵入しても成長させることなくその都度すぐに駆除します。
特徴を理解して“うちのコ”に合う予防薬を選ぼう


フィラリア症予防薬は、毎月1回投与する、錠剤やおやつタイプ(チュアブル)の「経口薬」と皮膚に滴下する「スポット薬」が一般的で、ほかにも年に1回だけ投与する「注射薬」があります。
「経口薬」は薬を飲む、または食べることで胃や小腸から薬剤が吸収され、「スポット薬」は滴下した薬剤が皮膚から吸収され、その下の毛細血管から血液中に広がっていきます。「注射薬」は皮下注射すると製剤が体内にとどまり、効果が長期間持続します。それぞれの特徴は次の通りです。
【経口薬】
錠剤:確実に口の中に入れて飲ませる必要がありますが、薬代は比較的安くすみます。
おやつタイプ(チュアブル):犬が好む味がついているので、おやつ感覚で簡単に投与することができます。ただし、食物アレルギーがある場合には使用できないこともあります。
【スポット薬】
犬が舐められない首~肩の部分の皮膚に薬を垂らすだけなので、犬にも飼い主さんにとっても負担がかからず、投与も楽に行うことができます。投与後、数日間はシャンプーを控える必要があることと、多頭飼育では他の犬が舐めないように注意することが必要です。
【注射薬】
1回の皮下注射で1年間予防効果が持続し利便性は高いですが、動物病院での獣医師による投与が必要になります。また、注射した時に犬が痛みを感じることがあります。
駆除効果や与え方などを検討した上で、愛犬に合う予防薬はどれか、動物病院で相談してみるとよいでしょう。
フィラリアの幼虫は駆除するけれど、犬の体には作用しない


フィラリア症予防薬に入っている幼虫を駆除する有効成分は、フィラリアをはじめとする線虫類に対してだけ作用するものであり、犬には作用しません。
健康な犬では、フィラリアの予防薬で重篤な副作用が出ることはほとんどありませんが、何らかのアレルギーがあったり、持病があり現在治療中で不安に思われる場合は、獣医師に相談してみましょう。



繰り返しになりますが、フィラリア症予防薬はフィラリアの幼虫を定期的に駆除する薬なので、投薬が遅れたり、忘れてしまった場合に感染してしまう可能性は0ではありません。万が一、ミクロフィラリアが大量にいる状態で予防薬を与えてしまうと、ショック症状などの副作用が起こる可能性があります。
また、フィラリアの成虫が感染していることがわかったら、追加で成虫駆除の治療を行わなくてはなりません。予防を始める前に毎年必ず血液検査を行ってフィラリアの感染がないことを判定し、安全に薬が投与できるかどうかを確認する必要があります。

投薬予定日の“うっかり忘れ”。間を空けずに速やかに再開を


フィラリア症の予防薬は、犬の体内に侵入して皮下組織や筋肉の中で成長を続けている段階の幼虫(第3期幼虫、第4期幼虫)に対して駆除効果を発揮します。毎月1回の定期的な投薬は、この幼虫の成長サイクルに合わせています。
実際には感染後52日くらいまでの幼虫には効くとされていますが、それ以降の成長した幼虫(第5期幼虫)は薬を投与しても駆除できず、その後成虫になってしまいます。ですから、もし投薬が遅れてしまったとしても本来の投薬日から3週間を越えないようにするのが鉄則!投薬を忘れたことに気づいたら、速やかにそこから再開してください。

投薬期間は地域によって異なるので、動物病院で相談を


毎年5月~11月頃までが一般的な投薬期間ですが、九州や沖縄のように気温が高く蚊が発生しやすい地域では、2月~12月頃までを目安にしているなど、地域によって異なりますので、お住まいの地域の動物病院に相談してください。
身近に存在する蚊に刺されることを100%防ぐことはできません。フィラリア症は発症すれば命に関わることもあるおそろしい感染症です。毎月の投薬日をしっかり守り、最後の投薬月までしっかりと続けることが、愛犬をフィラリア症から守る確実な方法なのです。正しい知識をもってしっかり予防しましょう!
今すぐ問診票の質問に答えて、動物病院で相談しよう! [PR]
うちのコに合ったお薬を選びたいと思っても、動物病院でなかなか言い出しにくいかもしれません。そんな飼い主さんは、フィラリア症予防についての問診票に答えて、その結果を持って獣医師に相談するのがおすすめです。
問診票では、数問の簡単な質問に答えることで、愛犬におすすめのフィラリア症予防薬のタイプがわかります。ぜひチェックしてみてください。
今すぐ問診票をチェック!▼
https://www.bayer-filaria-check.com/
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<お話を伺った先生>
バイエル薬品株式会社
動物用薬品事業部 学術
獣医師 下羽麻里奈先生
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