ピースワンコ・ジャパンで体験合宿!人を大好きになり、しっかり社会化して、よいパートナーに by白石花絵

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夢之丞とハンドラーの原田一兵さん(左)。ゴールデン・レトリーバーのハルクと、ピースワンコのプロジェクト・リーダーの大西純子さん(右)

 

避暑地のように涼しい広島・神石高原へ

この夏、クーパーとメルと、ピースワンコ・ジャパン(広島県神石郡神石高原町)に行ってきました。ドイツから獣医師の友人がピースワンコに講師として来日するというので、施設の犬たちとともにドイツ式のトレーニングを教えてもらうのが目的です。

クーパーは、自然豊かなお山だと生き生きするのですが、都会の散歩だとしっぽが下がりがちという問題があります。ほかの犬を見ると、怖くて吠えちゃうビビりな一面もあります。

でも犬は、何歳になっても学習できる動物。クーパーは6歳だけど、今からでも遅いということはないぞ!と、一念発起。ピースワンコのチームリーダー・大西純子さんの快諾も得て、ウキウキと東京から広島入りしました。

01_DSC_4705広島県の神石高原町にあるピースワンコ・ジャパン。広大な敷地に、現時点で200頭がのびのびと暮らすことが可能。この規模は全国有数

 

保護犬から家庭犬へ。ピースワンコの活動

さて、ピースワンコ・ジャパンとは、神石高原町に本拠地を置き、犬の殺処分ゼロをめざす動物福祉活動を行うプロジェクトチーム。1996年から国内外の災害支援活動を行う認定NPO法人ピースウインズ・ジャパンの活動のひとつとして、地域社会の活性化をめざし、かつ災害支援の仲間である犬を育て・救う活動を行っています。
ネパール2

提供:ピースワンコ・ジャパン

彼らが最初に育てた災害救助犬が、日本犬雑種の夢之丞(ゆめのすけ)と、ゴールデン・レトリーバーのハルクです。今年8月に放映された「24時間テレビ」(日本テレビ)でも取り上げられたのでご覧になった方も多いかもしれません。

夢之丞は、人間に捨てられ、殺処分される寸前に大西さんたちに引き取られ、現在では災害救助犬として活躍するほどに成長しました。昨年8月の広島市の土砂災害現場をはじめ、ネパール、台湾などの災害現場に出動しています。

02_DSC_4747ピースワンコのシンボル的存在、夢之丞。災害救助犬として、いつでもスタンバイOK(本当は災害が起きないのがいちばんだけど、いざというときにすぐ出動してくれるのは心強い)

しかし、その道のりは決して平坦ではなかったと思います。実は私は昨年9月にも取材で訪れており、そのときピースワンコの犬たちに初めて会いました。
正直ショックを受けました。東京など都市部近郊で飼育放棄される犬たちと、ずいぶん状況が異なったからです。

都市部近郊で「不要」とされる犬は、ペットショップで衝動買いされたり、途中で飼いきれなくなって捨てられる純血種や、純血種同士を掛け合わせた一代雑種が多い。

一方、広島で殺処分されそうになっている犬は、日本犬雑種や、日本犬×猟犬ミックスが圧倒的に多いのです。屋外飼育している家などで「知らない間に子犬を産んだので処分してほしい」というケースや、捨てられてそのまま野犬となり、何代も人間に飼われたことのないケースが多いように見えました。

03_DSC_4804生後2日目で動物愛護センターに持ち込まれ、捨てられた5頭きょうだい。人間の身勝手さを痛感する。捨てられた当日すぐにピースワンコが保護した。この撮影時点で生後25日目

04_DSC_4802毎日4時間おきにミルクを与え、人の手の温かみを教えていく。子犬は天使のように可愛いけれど、でも連日行き届いたお世話をするのは大変。責任重大だ

とにかく、ピースワンコに保護された犬たちの多くは、生まれてこの方飼い主は存在せず、人間の愛情を知らず、首輪とリードをつけて一緒に散歩した経験がないのです。

そのため「人間が怖い」「リードも散歩も怖い」犬ばかり。都会で捨てられた犬の多くはネグレクト(飼育放棄)なので、人間がかまってくれたらすごく喜ぶし、リードを見たら散歩に行けると飛び跳ねて喜ぶのに、反応が正反対なのです。別の生き物を見るような気持ちがしました。

人と一緒に暮らす喜びを知らない犬たちに「人間っていいもんだよ」「あなたの味方だよ」というところから伝えていかなくてはいけない。そして人間の生活にあるさまざまな刺激や事象、さらに、社会の中で出会ういろいろな出来事に対して、びびらない心の余裕、環境に適応する力もつけてもらわないといけない。

訓練・クリッカートレーニング

提供:ピースワンコ・ジャパン

レスキューとは、命さえ助ければいいというものではないんだなと強く感じました。人間を信頼し、人間と暮らすことが悦びだと感じる犬にならないと、本物の伴侶犬(家庭犬)にはなれないし、お互いの幸せな生活は実現できません。

だから、夢之丞は、災害救助犬になる以前に、まず人間への不信感を払拭し、信頼関係をつくっていくことが必要でした。ゼロからではなく、マイナスからのスタート。相当に大変だったと思います。

それは、いまピースワンコにいる多くの犬たちにも同じことがいえます。今までの総保護数470頭。いまも205頭の犬がいます(8月月末現在)。新しい未来が待っているはずの彼らは、スタッフから愛情と手間と声をかけてもらいながら、社会化のためのトレーニングを続けています。

訓練・オビィディエンス2

提供:ピースワンコ・ジャパン

 

クーパーと私も、社会化グループレッスンに挑戦

今回クーパーもピースワンコの犬たちに交じって、グループレッスンに参加させてもらいました。ピースワンコの犬たちも恐がりさんは多い。そこで、ほかの犬を見てもびびらない、吠えない、平常心でいられるようにする練習をしたのです。

05_DSC_4812チラリと黒い犬を見るクーパー

やれば、できるものですね~。クーパーでも30分もしないうちにその状況に慣れて、ほかの犬が見えても静観できるようになりました。

「こわくない、こわくない、やればできるっ、おれでもできるっ」とでも言うような表情のクーパー

次のステップは、ほかの犬と道路でのすれ違いざまにクンクンとニオイをかぎ、軽くご挨拶する練習。こりゃー、私の方がびびりまくり。なにしろ都会ではクーパーのような強面の犬は嫌がられることが多く、よその小型犬に挨拶なんてさせたことがありません。

でも、それもいけなかったんですね。ほんの数秒間、すれ違いざまにお互いがクンクンして、チェックすることが、犬に自分の生きる社会の中でアイデンティティーを確認させ、精神の安定につながる役目をしているのだとか! いやはや、犬の社会化トレーニングは奥が深いです。(事故につながりかねないので、無理強いはいけないし、全部の犬と挨拶する必要はないですけどね)

一緒にレッスンした修行中のピースワンコの犬たちも、クーパーと同じく、ほかの犬が怖い→怖いから吠える→吠えるから相手も興奮してケンカになりかかる、というレベルなのですが、そういう臆病な犬同士でも、リードを持つハンドラー(クーパーの場合は飼い主の私)が冷静に犬を導き、練習を繰り返すうちに、ちゃんと犬も平常心を保てるようになっていくではありませんか。これは驚きでした。

クーパーって、やればできる子だったのね。やらない飼い主が、クーパーの社会性のチャンスの芽をむしっていたんだと反省しました。

07_DSC_4817何回も繰り返しているうちに、クーパーが状況に慣れて、リラックスしてきたのがわかる。ただし油断は禁物。いつスイッチが入るかわからないから、ハンドラーはよい意味の緊張感は保ち続けないといけない(でもハンドラーがビクビク、ドキドキした緊張状態だとそれは犬にも伝わるのでNG。堂々と冷静に、だけど気を抜かないことが大事)

そして、時間をかけて(びびりの子に無理強いしたら人との信頼関係はすぐ壊れちゃいます。保護犬はガラスのハートの子が多いから、一度の失敗が尾を引くので、失敗は許されません)、家庭犬になるためのトレーニングを丁寧にしてもらっているので、いずれここを卒業していくピースワンコの犬は、きっと飼いやすい、いい犬になっていると思います。

またそうすることにより、終の棲家を得られるようにする。ふたたび捨てられることは、犬の心のダメージを考えるとあってはならないことですから。

「家庭犬になる準備は万端!」と太鼓判を押された犬たちは、以下のところで会えます。

ピースワンコ・ジャパン広島譲渡センター(広島県広島市西区)

ピースワンコ・ジャパン湘南譲渡センター(神奈川県藤沢市)

 

09_DSC_472008_DSC_4780合宿中、クーパーはお勉強以外にも楽しい時間を満喫。池のドッグランは、豊富な井戸水を使っているから、水がきれい。小魚やアメンボもいるし、トンボも飛んでいて、里山の自然を感じられる

 

犬や動物と共に地域活性。犬連れレジャーにも

神石高原町のピースワンコには、西日本最大級のドッグランがあります。さらにドッグランに隣接したエリアに、この夏「神石高原ティアガルテン」がオープン。「いのちを慈しむ」をコンセプトにした、牧場、農園などがある自然体験型の公園です。この公園内にも犬と一緒に入ることができます。

ドッグランで遊び、牧場でのんびり過ごしつつ、保護犬の幸せに思いを馳せる……そんな1日を愛犬と一緒に過ごしてみてはどうでしょう。

06_DSC_4821神石高原ティアガルテンのレストランのテラス席は、犬もOK。オーガニック野菜や搾りたての牛乳を使ったメニューは都会では味わえない美味しさ

 

白石花絵(しらいし・かえ)

Writer
フリーライター 
白石花絵(しらいし・かえ)

雑文家。東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。
その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピーに共生できる社会になることを願っている。現在、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー(オス)、ボクサーのメル(メス)、黒猫のまめちゃん(オス)、熱帯魚(コリドラスなど)、そしてニンゲン2と暮らしている。趣味は、クーパーと野山へ行くこと。東京都渋谷区在住。

▶執筆サイト: dogplus.me 犬種図鑑
▶ブログ: バドバドサーカス

▶主な著書
『東京犬散歩ガイド』
『東京犬散歩ガイド武蔵野編』
『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)

『うちの犬—あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』

 

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