賃貸での猫飼いに新しい風!人も猫も快適に暮らせる「Seilan Apartment」を見学してきました【後編】


 
世の中に、猫を多頭飼いできるアパートがない

木津イチロウさんが、「猫を多頭飼いできる賃貸がないなら、作っちゃえ」と、猫専用デザイナーズ・アパートメント「Gatos Apartment」を作ったのは、この記事「探せど見つからない…猫OKのペット賃貸物件」 の通りですが、「Seilan Apartment」の大家さんも、同じような考えでこのアパートを建てたそう。

「ブログなどで、『猫ちゃんと一緒に暮らしたいけど部屋がない』とか『実は隠れて飼っている』などの記事を目にして。私も猫好きでずっと猫を飼っていますし、猫と一緒に暮らせるアパートを建てられたらと考えました」

そういう大家さんも、建て替え中に愛猫と暮らす物件探しで苦労されたそう。ペットOKと書いているのに猫はダメ、敷金が通常より高くなる、退去時に返ってこない「償却敷金」や「修繕費」を追加で要求される…。そのような経験をして、ますます「猫と暮らせるアパートを建てたい」という思いが強まったといいます。ちなみに、「Seilan Apartment」では入居時に必要な予算は敷金2か月、礼金1か月という平均的なものです。

「でも、最初ハウスメーカーさんに相談したら『賃貸で猫可はやめたほうがいい』と言われて、あきらめかけていました。でも、木津さんの記事を思い出して、思い切って木津さんに連絡を取ってみたんです」

後編-1

後編-2にこやかに話す大家さん(前)と、アパートを監修した木津さん(後ろ)。

木津さん「ハウスメーカーさんに言われた段階であきらめなかったところが、大家さんの偉いところだったと思います。ぶっちゃけ、マンションやアパートが林立するこの街で、新しいアパートを建てたところで魅力に欠けます。だったら、需要のある『猫可物件』にしたほうがよっぽど引きがある。でも現状は、大家さんがハウスメーカーさんに相談する時点で『猫は不可にしたほうがいい』と諭されてしまうことが多いんです」

以前は音楽業界やIT企業に勤めていたという木津さん。マーケティングの観点から見ても、魅力のある「猫可物件」は需要がある、と考えているそう。実際、「Seilan Apartment」の内覧申し込みは、さばききれないくらい殺到しています。

「とはいっても、Gatos Apartmentを作ったときは、自分の拾った猫と一緒に住みたいという気持ちで突っ走っただけですけどね(笑)」

結局は猫バカさん?(笑)でも、猫好きなら共感できる、猫愛にあふれたプロジェクトです。

 

ハード面だけでなく、ソフト面でも、「猫コミュニティー」を作っていきたい

木津さんがオーナーである「Gatos Apartment」では、住人どうしのお付き合いが盛んだそう。花火大会のときはみんなで集まって鑑賞したり、大雪のときは自然とみんなで協力して雪かきを始めたり…。「まるで長屋のような人間くさいお付き合い」が行われているといいます。

「猫好きという共通点があるので、自然と話が合いますし、僕自身も『お隣さんの顔はよく知らない』というのが苦手で。顔見知りになることで、例えば猫の夜の運動会も許し合えるなど、メリットがたくさんあるんです」

住人どうしで旅行に行く際の猫のお世話をする、なんてこともあるのだとか!自分の猫をよく知ってくれているお隣さんがお世話をしてくれるなら、それ以上のものはありませんね。
ほかにも夜、猫の具合が悪くなったときに、救急病院を教えてあげるなど、「猫飼いさん」が固まって住むことで、猫も安心・人も安心の「猫コミュニティー」ができているといいます。

「そうした猫コミュの作り方も、大家さんに指導していきたいです。建物という『ハード面』だけじゃなく、コミュニティーという『ソフト面』の作り方を指導するのも、僕の仕事だと思っています」

木津さんのお仕事は、アパートを作ったら終わり、ではなさそうです。

後編-3最後に記念写真。大家さん(左)、木津さん(左から2番目)、一緒に見学した一級建築士の清水満さん(右から2番目)、ライターの私・富田園子(右)。

後編-4大家さんの愛猫・ふう子ちゃん(10歳)。このアパートはキミへの愛から始まったんだよ~。

後編-5Fのポーチの門扉の付け方に、一級建築士の清水さんがアドバイス。木津さんと清水さんは初対面ですが、猫のためにみんな真剣。これも「猫コミュニティー」のひとつといえるかも。

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富田園子

編集&ライター、日本動物科学研究所会員 幼い頃から犬・猫・鳥など、つねにペットを飼っている家庭に育つ。編集の世界にて動物行動学に興味をもつ。猫雑誌の編集統括を8年務めたのち、独立。編集・執筆を担当した書籍に『マンガでわかる猫のきもち』『マンガでわかる犬のきもち』『野良猫の拾い方』(大泉書店)、『ねこ色、ねこ模様』(ナツメ社)、『ねこ語会話帖』『猫専門医が教える 猫を飼う前に読む本』(誠文堂新光社)など。7匹の猫と暮らす愛猫家。 ▶HP:富田園子ホームページ ▶執筆&編集した本: 『マンガでわかる…

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