リアルな声”から学ぶ、保護犬・保護猫との暮らしの現実とは?〜アニマル・ウェルフェアサミット2017トークイベント「保護犬・保護猫と暮らそう」リポート

  • シェア 137
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
アニマルウエルフェア_アイキャッチ

昨年に続き、今年も8月27日・8月28日の2日間にわたって「アニマル・ウェルフェアサミット 2017」が、東京大学の弥生キャンパスを会場に、開催されました。殺処分の問題や動物愛護管理法の現状といった、保護団体や行政が直面する喫緊の課題や、保護犬・保護猫の命を守る活動をサポートするさまざまなボランティアのあり方についての講演、また猫のアート作品を作ったり触れたりできる体験教室など、多彩なイベントに多くの来場者が足を運びました。保護猫出身の猫と暮らす猫ジャーナルとしましては、初日に開催された「保護犬・保護猫と暮らそう」と題された講演に注目しまして、取材して参りました。

アニマルウエルフェア_1左から、司会の渋谷亜希さん。料理研究家の藤野真紀子さん。女優のとよた真帆さん。横浜商科大学准教授の岩倉由貴さん。

【登壇者プロフィール】

藤野真紀子:料理研究家・元衆議院議員。保護犬を引き取り暮らす一方、動物保護団体への支援活動を行うなど、動物愛護の分野で精力的に活動を続けている。TOKYO ZEROキャンペーン代表理事。現在は、6頭の犬と暮らしており、そのうち2頭が保護犬。

とよた真帆:女優。アニエスbのモデルとしてパリコレクション等に出演し、その後、女優へ転身。多数のドラマや映画、舞台等に出演。芸術への造詣が深く、個展の開催や京友禅の絵師として着物のデザインも手がける。現在は、3匹の猫と暮らしている。

岩倉由貴:東北大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経営学)。2014年4月より現任校の横浜商科大学商学部へ。現在は、准教授として研究・教育に従事している。最近、保護犬との生活を始めた。

 

殺処分寸前の犬を保護した、藤野さんのエピソード

登壇者の3名、および司会の渋谷さんも保護犬・保護猫と暮らしているとのこと。トークの幕開けはともに暮らす犬・猫との出会いのエピソードから始まりました。

藤野さんが現在飼っている6頭の犬のうち、保護犬は2頭。保護活動を行っている藤野さんの友人が茨城県内で保護したマイリー。そして、殺処分寸前のところを藤野さんに保護されたジョイです。ジョイとの出会いは、藤野さんが動物愛護活動に携わるきっかけになったといいます。

茨城で保護されたマイキーは、すでに後脚の1本を骨折し、数度の手術を施されていたものの、骨が付かず脚がプラプラとしている状態でした。その状態でマイキーを引き取ることになった藤野さんは「断脚するか、(すでに何度も失敗されている)手術にもう一度トライするか」という、決断をすぐに迫られることになります。そのとき、犬の訓練学校のトレーナーに相談したところ、「学校にいる3本脚の犬は、元気に走って、3本だか4本だか全然分からないほどだ」という話を聞きます。藤野さんは犬の気持ちになって、考えを決めたといいます。

アニマルウエルフェア_2

「そこで、私は犬の気持ちになって考えました。思いっきり走りたいよねって。まだ2歳か3歳の子なんだから、『金具があって痛いのかな?』『いつ皮を突き出してこれが出てきちゃうのかな?』って、そんなこと考えないで、思い切りはしゃいで、思い切り走りたいよねっていうことで、断脚の決断をしたんです」

殺処分の現場で荒縄で繋がれていたというジョイは、藤野さんの家に引き取られたあとも、しばらく人間不信で、夜、眠くなっても無防備には横にならず立ったままだったといいます。ようやく、心を許してくれたと思っても、脱走することもしばしばでした。そのまま隠れて出てこないジョイに対して、藤野さんは、家の玄関を夜中も開け放ち、いつでも帰って来られるようにしていました。すると、真夜中の2時や3時に、1人で帰ってくることに心を動かされたと語ります。

「(保護された名古屋から)連れて来られた横浜の家なんだけれども、ここを我が住みかと認めてくれた。帰って来た。ここに帰るところがあるということを、彼が認めてくれたっていうことに、私はすごい喜びがあったんです」

 

とよたさんが語る「新しい猫を迎え入れるコツ」

とよたさんが大人になってから飼った猫は、全部で8匹。すべて、捨てられて保護した猫や保護施設から譲り受けた保護猫です。介護ののち、最期を看取った猫もいたとのことで、現在は3匹の猫と暮らしています。

新しく猫を迎えるとき、気になるのは先住猫との相性です。とよたさんによれば、猫それぞれに相性があり、先住猫が新入りを威嚇する場合もあれば、出会った瞬間に気が合う猫たちもいるのだとか。その好相性の組合せはさまざまで、「もっとも長老の猫と新入り猫」だったり「一番若い猫と新入り猫」だったり。人同士の相性のようで、「(人よりも)はっきりしていますね」と、とよたさんはいいます。また、1年おきに保護猫を迎えているため、猫たちも「1年おきに新しい子が来る」となんとなく分かっている様子なのだそうです。

アニマルウエルフェア_3

新しい猫を迎え入れる際のコツを、とよたさんは次のように語りました。

「やはり1週間〜2週間は調整が必要です。大げんかにはならないですけれど、(新入りに対して、先住猫が)ウーとかシャーとか威嚇するので、様子を見ながら。ちょっと手を出すようだと、その2匹の間に入っていって、『先住猫のあなたも、新入りも、どっちもかわいいんだよ』っていうのを、行動で示すようにしています。私自身も1匹の猫みたいな感じで、仲間に入っていくような感覚ですね。それで調整すると、一番うまくいきます」

司会の渋谷さんも、犬の飼い主。犬の場合、新入りを迎えるときには「順位を付けるだけでなんとなく成立して、仲がそれほど良くなくても、うまくいっちゃうことが多い」と自らの経験を披露。それに対して、とよたさんは「猫も、なんとなくリーダーになりたがる子が出てくるですよ、年功序列とは別の感じで。そのあたりの空気を読みながら、猫の世界にはあまり介入せず、もめ事が起こらないようにする調整役、ネゴシエーターです」と補足しました。

 

岩倉准教授による、保護犬・保護猫に関するアンケート調査結果

茨城の保護センターからボランティア団体が引き取った、保護犬とともに暮らす岩倉さん。アニマル・ウェルフェアサミットの時点で、飼い始めてから4か月くらい。迎えたときと比べて、表情もかなり変わったそうです。岩倉さんがこの日発表したのは、大学で自らが担当するゼミと公益社団法人アニマルドネーションとの協働アンケート調査(プロジェクト名:HOGO animal future project)。犬・猫のいずれかを飼っている959名へ、インターネットでアンケートを行った結果 をもとに、保護犬・保護猫をこれから飼うかどうか悩んでいる人に対して、飼い主のリアルな声を紹介しました。

アニマルウエルフェア_4

アンケートに回答した犬・猫の飼い主のうち、保護犬を飼っている割合は24%に対し、保護犬ではない犬を飼っている割合は32%。保護猫を飼っている割合は23%に対し、保護猫ではない猫を飼っている割合は21%という結果 でした。

続いて、保護犬・保護猫に対するイメージの違いについてのアンケート結果に基づいて「ペットショップから、犬や猫を購入するという行動に、イメージがどのように影響しているか」を調査。次のようなイメージを抱いていると、ペットショップで購入する傾向にあるとの結論に至ったといいます。具体的には、犬の場合は「しつけをされていない」「医療費が掛かる」「子犬ではない」というイメージを抱いているケース。猫の場合は「人慣れしていない」というイメージが、ペットショップで購入する大きな要因になっているのだそうです。

岩倉さんは、その先入観と、保護犬・保護猫の飼育の実情とのギャップを埋める工夫が必要だと語ります。

「ボランティア団体から引き取った方たちから見ると、実際に(一時預かり等で)家庭で飼うことで、人に慣らすこともやっていますし、(保護団体で)ある程度のしつけをしてくださるところもたくさんあります。なので、『実際には、しつけもされているよ』とか、『そんなに怖がっているような猫ちゃんばっかりじゃないよ』っていうことを、もうちょっと知らせていくことによって、引き取りがもう少し進むんじゃないかなっていうのも、ここから見えてくるかと思います」

アニマルウエルフェア_5

続いて発表したのは、保護犬・保護猫を飼っている人のリアルな声。保護犬・保護猫を引き取った場所で、もっとも多いのは犬も猫も「ボランティア団体の保護施設」でしたが、猫の引き取り場所の2位は「猫カフェ」。 近年広がった保護猫カフェが、出会いの場となっていることが伺えます。保護犬・保護猫を引き取る際に掛かる費用については、犬・猫ともに「1万〜5万円未満」 との回答が最多だったとのことです。

アニマルウエルフェア_スライド1
アニマルウエルフェア_スライド2

引き取る前と、引き取ったあとの意識の変化を調査したアンケートでは、こんな結果が。

引き取るまでは、プラスもマイナスも特にイメージは持っていなかったという方が多かったのですが、引き取ったあとに、プラスのイメージに変わるケースが多く見られます。(保護犬・保護猫の飼い主に)満足度を聞きましたところ、平均、犬の場合91.9%、猫の場合は91.0%の方が、『とても満足(5段階でもっとも高い満足度)』という、保護犬の飼い主としてはとてもうれしい結果になりました」

 

保護犬・保護猫と「アニマル・ウェルフェア」

トークの最後は、「アニマル・ウェルフェアサミット」にちなみ、それぞれが実践している「アニマル・ウェルフェア」について、保護犬・保護猫と暮らす登壇者の3人が語りました。

アニマルウエルフェア_6

「私が一番動物たちと自分との関係で大事にしているのは、完璧な信頼関係を築くという絆です。あなたたちを本当に100パーセント愛しているよと伝えること。それと、動物たちの目線で考えること。この子にとって何が、一番望んでいるのかなと、常に考えることですね(藤野さん)

アニマルウエルフェア_7
「猫とか犬から幸せをもらって、それで自分が形成されていると思っています。犬とか猫と一緒に暮らすことは、人間が始めてしまったことなわけで、ちゃんとその責任をそれぞれが持たなきゃいけないって心から思います。(他の動物たちに対して)人間が一番頂点に立っていると思い込んでいるというか、尊敬が足りないところがあるような気がして。もうちょっと初心に返って、他の生き物に対して尊敬を持つと変わってくると思います」(とよたさん)

アニマルウエルフェア_8

「実際に飼ってみて、最近、反省をしたことがありました。犬のご飯の最中に、チャイムが鳴ったので、犬を追置いて玄関に行ったんです。すると、普段は絶対にえさを残さない犬がご飯を残して、玄関まで急いで来たんです。推測なのですが、食べているときに捨てられちゃったんじゃない、と、そのときに強く感じました。そこで、安心してもらえるよう、ご飯のときは、そばにいて見てあげるようにしました。保護犬だから体験した、いろいろな苦労も全部受け入れることによって、飼い主も、犬にとっても幸せに暮らしていけるんじゃないかなっていうのは、すごく感じたことです」(岩倉さん)

アニマルウエルフェア_9
トークセッションの会場には、夫婦や親子連れで参加する人たちも見受けられました。登壇者がともに暮らす保護犬・保護猫の写真に目を細めたり、アンケート結果に見入りながら熱心にメモをとる姿も。保護犬・保護猫を迎え入れるための”心がまえ”について、考えを深める時間になったものと思われます。

幸せな環境で暮らせる保護犬・保護猫が増えるとともに、そのような犬・猫と暮らす楽しさ、そして信頼を寄せてもらえるうれしさを、感じる人が一人でも増えることを願う次第です。

by
nekojournal_logo200x51

すべての猫と、猫を愛するすべての人のために、猫情報をお届けするブログ「猫ジャーナル」。管理人である猫ジャーナリストによる書き下ろし記事です。

アニマルウエルフェア_アイキャッチ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!