ピースワンコ世田谷譲渡センター 初の卒業生・としき君に密着! by白石花絵

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「まぬけそうな(笑)、優しいんだけど、気が抜けている感じがよかった」と見初められたとしき

認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県神石高原町/以下、PWJ)のプロジェクトチーム、ピースワンコ・ジャパンが、ついに東京に進出しました。2016年12月20日、世田谷譲渡センター(東京都世田谷区)がオープン。同団体の譲渡センターは、広島県広島市、神奈川県藤沢市に続いて3つ目です。

ピースワンコは、3年前に行った「1000日で広島県の殺処分をゼロにする」という宣言どおり、2016年4月、広島県の殺処分機を止めることができました。「殺処分機が止まる」。すごく重い意味があると思います。

ただ、残念ながら、捨てる人は減っていません。これは今後、日本全体で考えていかないといけない問題だと思います。繁殖業者・パピーミルの産ませすぎ(命の大量生産)、ペットショップのあり方(命の在庫一掃セール)、そして知識と責任感が乏しい個人飼い主が、飼いきれなくて捨てたり、自分のうちで産まれた子犬や子猫を捨てることも。保健所では法律によって、簡単に引き取りをしてくれなくなったのですが、それでも地方により温度差があり、引き取っているところもあります。

4_572b世田谷譲渡センターのリビングスペースでボランティアの人に遊んでもらう子たち。順調に卒業予定

行政が引き取らないと野山に捨てられる方が困るという実情もあるでしょう。個人飼い主は、繁殖管理ができないのなら避妊・去勢などをすればいいのですが、手術のお金がもったいないとか、1回くらいお産しないと可哀想だとかまさか妊娠するとは思わなかったとか、動物の本能的な行動に無知な人がまだたくさんいます。

捨てる人を減らす。これは非常に重要な課題です。が、同時進行で、殺処分機を止めるという事実も大事。アニマル・ウェルフェアの大切さが世論に染み渡るためには欠かせないアクションだと思います。

そして保護した犬を幸せにするためには、ただシェルターに囲い込むのではなく、どんどんよい飼い主さんを見つけることが必要です。そのためには出会いの場が多ければ多いにこしたことがありません。都会の方が人口が多い分、保護犬に対する理解のある人や動物福祉に関心のある人に出会えるチャンスが増えるため、東京に進出したのです。このセンターは、ふるさと納税で集まった資金で運営されています。

5_400ピースワンコ・プロジェクトリーダーの大西純子さんと、すぐ寝たふりをするとしき

ただこのセンターでは、ペットショップのように、その日気に入った子をすぐに連れて帰れるわけではありません。まず犬と飼い主さんの相性をみます。リビングスペースで触れあってみたり、散歩したりして、むしろ「犬が、飼い主を選ぶ」といっても過言ではありません。

相性がよさそうだなとなったら、家族構成などのアンケート(調査票)を書き、そのあと家庭訪問があります。どんな生活環境なのか、危険防止をした方がいい場所はないかなどのアドバイスや、犬のケアの方法、しつけの相談などもします。

2_572×721「相談中」と書いてあるのは、飼い主候補の人と犬のマッチング確認や家庭訪問中

そうしてすべてがクリアされたとき、ようやく正式譲渡となります。この間、最低でも2週間。センターに行くと「相談中」という札が犬舎に目立ちます。つまり、ただいま「相談中」の犬は、飼い主候補の方がいて、マッチングを見極め、家庭訪問実施中ということ。「犬と暮らす」「犬と生きていく」ということを家族みんなで、本気でじっくり考え、覚悟をする期間ともいえるでしょう。

世田谷譲渡センターには、オープン時、7頭の犬が神石高原町(広島県)からやってきていました。生後4か月の兄弟犬から推定5歳の犬たちです。その中から第1号の卒業生が1月7日に旅立ちました。名前は「としき」。推定9か月のオスの日本犬雑種です。

9_400世田谷譲渡センターの目印はピースワンコのシンボル「夢之丞」の青い看板(後ろ上)。センターは年中無休

としきの家族になったのは、町田市にすむ渡邊家。お父さん、お母さん、小学3年生(9歳)の男女の双子ちゃんちです。しかも隣家におじいちゃまとお父さんのお姉さんも住んでいる、いまどき珍しい大家族。2世帯でとしきを可愛がる、散歩に行く、と約束されており、犬にとっては最高の条件です。

なぜ、としきを選んだのでしょう。お父さんに聞きました。
「自分も11歳の頃からオスの日本犬雑種の保護犬を飼っていました。自分の子どもも同じ年頃になり、迎えるなら保護犬をと思って、地元での譲渡会にも足を運びました」

その頃、奥様がピースワンコのホームページで、としきを発見!

「第一印象はまず顔。まぬけそうな(笑)、優しいんだけど、気が抜けている感じがよかったです。紹介文にも“優しくておとなしい”とありましたが、本当にそのとおりでした」8_572すっかり子どもたちとなじんでいるとしき。これなら新しいおうちでも安心だね

そして、実はおじいちゃまがいちばんのキーマンかも。昼間の散歩はおじいちゃまが行くことになっていますが、日本犬雑種と長く暮らした経験があるので、としきと散歩に行くのは本当に楽しみなようです。

「ほかの譲渡会では、犬はケージに入ったままで、触れないし、散歩も行けなかったのですが、ここ(世田谷譲渡センター)に来たら、リビングで遊んだり、散歩に行かせてもらえました。クルマの音にびくつくので、散歩の注意点などのアドバイスも受けました。また家庭訪問のときに、庭にある隙間に柵をつけるようにとか家の中にもゲートをつけることを勧められました。室内飼育をするのは初めてなので、いろいろ教えてもらえてよかったです。譲渡する相手を厳選している姿勢が信頼でき、だからよけいにそれに応えたいと思いました。」
と、お父さんは言います。

渡邊家は、譲渡のこの日まで、ここに通ったのは3回プラス家庭訪問1回。としきも慣れてきて、会う回が重なるごとに、しっぽが上がってきたそうです。

6_572会うたびにしっぽがあがってきたとしきと、今日からとしきの家族になる双子ちゃんたち

そして家庭訪問で指摘を受けたフェンスやゲートを設置し、いよいよこの日を迎えたとしき。卒業のときは、近所のトリミングサロンでシャンプーして、きれいにおめかしするのだそう。心がこもった手厚い卒業です。

また、譲渡の際の契約書には、万が一、譲渡後に不適切な飼い方をしているなどが判明した場合は、犬を返還してもらうという文言も入っています。譲渡にかかる費用は、サイズや年齢に関係なく、一律17,500円。混合ワクチン、今年度の狂犬病ワクチン、フィラリア予防薬、マイクロチップ、畜犬登録済みです。そしていま与えているフードの種類や分量(数日分を1回分ずつ、お弁当のようにビニール袋に小分けされて渡されていました)、としきの場合は目薬も処方されていたので、その引き継ぎも行います。それらの説明に1時間半くらいかけてしっかり申し送りをする感じです。

3_572×384「譲渡誓約書」。正しく飼養できない場合は、犬を返還してもらうという文言も

「3か月後にもう一度遊びにきてくださいね。それまでに困ったことがあったら、いつでも電話をしてください」と、最後にピースワンコ・プロジェクトリーダーの大西純子さんが笑顔で言いました。

7_572b譲渡の際の手続きと説明。接種したワクチンの説明もしっかり受ける

別れ際にスタッフともみんなで記念撮影して…あらら、スタッフが泣いています。としきはこのセンターが始まって最初の卒業生。おめでたいお別れなのですが、やはり毎日4回散歩して、可愛がっていたからこそ、涙もでます。

10_572としきの新しい家族とセンタースタッフ(左3人)。としき、幸せにね

としき、卒業、おめでとう!
としきと渡邊家に幸あれ!!

ピースワンコ・ジャパン世田谷譲渡センター
住所:東京都世田谷区桜丘3丁目23-2馬事公苑アーバンフラット1-A号室
営業時間:午前10時~午後7時(年中無休)
問い合わせ先:TEL:03-6413-7095、FAX:03-6413-7096
http://peace-wanko.jp/

 

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白石花絵(しらいし・かえ)

Writer
フリーライター 
白石花絵(しらいし・かえ)

雑文家。東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。
その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピーに共生できる社会になることを願っている。現在、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー(オス)、ボクサーのメル(メス)、黒猫のまめちゃん(オス)、熱帯魚(コリドラスなど)、そしてニンゲン2と暮らしている。趣味は、クーパーと野山へ行くこと。東京都渋谷区在住。

▶執筆サイト: dogplus.me 犬種図鑑
▶ブログ: バドバドサーカス

▶主な著書
『東京犬散歩ガイド』
『東京犬散歩ガイド武蔵野編』
『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)

『うちの犬—あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』

 

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