ペット連れの被災者の強い味方 PWJ(NPO法人ピースウインズ・ジャパン)の活動は続く by白石花絵

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4月14日以降、熊本県と大分県で連続して発生している熊本地震。犠牲になられた方、そのご遺族の方に心よりお悔やみを申し上げます。
発生から2週間を過ぎた29日にも、大分県中部で震度5強の地震が起きています。東日本大震災のときは、東京23区において震度5弱を観測したわけですが、あのレベルの地震が日常的に継続していると思うと、被災者のみなさんの心労はいかばかりかと胸が痛みます。

災害時には、私たちのような犬猫好きにとっては、ペットと一緒に避難したいのは当然。しかし環境省から公にペットと一緒に同行避難をすることを推奨するガイドラインもだされているのですが、自治体によっては同行避難に関する認識には温度差があります。まずは人命第一ですし、現場は本当に混乱した状態でしょうから、今の日本ではまだ致し方ないのかもしれません。

行政区を越えた広域で起きた大規模な災害のときは、公助(自治体。行政。警察、消防、自衛隊など)の強力な助けももちろん必要ですが、行政側自身も被災して機能しない「公助の限界」もあるので、やはり自分や家族(犬猫を含む)の身の安全を確保するためには、自助(自分や家族の身は自分で守る)が重要で、そして共助(近隣住民などの地域コミュニティや企業、NGO/NPO、ボランティアなどと助け合う)の力も欠かせません。

そこで共助の鑑ともいうべきなのが、認定NPO法人ピースウインズ・ジャパン(広島県神石高原町/以下、PWJ)です。そのプロジェクトチーム、ピースワンコ・ジャパンは、私も昨年夏クーパーとメルと共に、社会化トレーニングの合宿に行かせてもらいました。

 

地震発生からわずか数時間後に、レスキュー隊が出発

プロジェクト・リーダーの大西純子さんは友人なので、地震当時の状況もリアルタイムで聞いていたのですが、とにかくあの震災時の出動の速さといったらすごかった!熊本地震の1番最初は4月14日午後9時26分頃で、益城町で震度7。PWJはレスキューのプロだから 今までの経験値もあるのでしょう、大規模な被害が起きていると判断し、午後11時20分ごろにレスキュー隊第1陣が広島からクルマで出発(地震発生からわずか2時間後!)、第2陣が15日午前1時半頃に出発しました(4時間後!)。
この迅速な判断力と実行力は、日本有数といっていいんじゃないでしょうか。民間なのに。いえ、民間だからこそできるのかもしれません。

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殺処分寸前のところPWJに救われ、救助犬として訓練された日本犬雑種の夢之丞(ゆめのすけ)も出動です。大西さんは実はこのとき広島にいなくて、翌日ハルクの救助犬の昇級試験を受けるために長野県へ向けてクルマで移動中だったのですが、レスキュー隊のチームメイトから連絡が入ったため、岐阜県あたりでUターンして、そのまま夜通し走ってハルクと直接熊本へ向かったそうです(すごい体力と使命感です)。

レスキューチームは15日朝には益城町で捜索・救助活動を開始。大西さんも朝8時過ぎに益城町に入りました。そして災害対策本部の情報を元に、住民が家屋の下敷きになっている可能性がある場所など複数捜索活動に従事。

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幸い、すでに近隣の住民によって安全が確認できている世帯も多く、地域の繋がりをとても強く感じたそうです。これが共助ですね。要救助者の捜索・救助活動のニーズは低いと判断し、救助犬・レスキューチームは15日でいったん活動を終了、撤退しました。

ところが、大西さんがハルクと一緒にクルマで広島に戻る途中、16日午前1時25分頃、最大震度7を観測する地震がふたたび起こりました(後にこちらの地震が本震と発表)。熊本県と福岡県の境あたりの九州自動車道のサービスエリアでクルマの中で仮眠をとっていた大西さんでしたが、下から突き上げがあり、クルマの片輪が浮きそうな横揺れだったそうです。

その後、大西さんは広島に戻るのはやめて夜が明けるまでに出発の準備をして、少し明るくなった5時にサービスエリアを出て、南阿蘇村に向かいました。すでに第1陣が午前10時ごろに南阿蘇村に到着し、警察や消防と協力をしながら、行方不明者の捜索活動を始めていましたが、午前11時半ごろには、ヘリコプターで向かった夢之丞たちも合流し、捜索活動を継続したそうです。

kumamoto-08ほぼ毎月、他団体と合同訓練を行い、ヘリコプターに乗って被災地に入る訓練を日頃から行っています。今回その訓練の成果が示されました。災害はいつ起こるかわかりません。日々の本気の訓練が、現場で活躍し、かつ本番で犬への負担が少ない救助犬を育成するのだと強く思いました。

 

公助が整ったら、人命救助から避難所支援へ

その後も余震が続き、災害救助犬・レスキューチームは天候や捜索活動のニーズを見ながら、熊本県内で待機していましたが、捜索可能な場所はすでに警察や自衛隊が多く配備されたことから、17日をもって、夢之丞ハルクと隊員たちのレスキューチームは熊本を撤収したそうです。「公助」が整ったから、「共助」のPWJは撤退というように見えます。いち早く駆けつけ、活動し、行政側のシステムが回り出したら、次の手薄なところに着手する。実に見事です。今度は、人命救助に代わり、避難所の人々のニーズの調査が開始されました。

17日には、益城町総合体育館の芝生広場に緊急支援活動用の大型テント「バルーンシェルター」を2基設置。1基あたり70人程度を収容することができる大きなテントです。1基は女性専用、1基はペット連れの方専用の避難所としました。

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体育館などの避難所では、犬の苦手な人もいるので気を遣うなど飼い主としてもストレスが多いと思いますが、ペット連れ専用シェルターなら少しは気が楽になるかと思います。

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また蛇足ですが、被災地では、性的な被害も多く発生すると聞きますので、女性専用のシェルターというのも非常に心強い取り組みです。しかもスタッフが24時間交代で見守りもしているそうです。新潟中越地震以降国内にとどまらず、インド震災支援やアフガニスタン避難民支援など数多くの過酷な現場を見てきたPWJならではの配慮だなと感じました。

そして現在もPWJは、パートナー団体の公益社団法人Civic Force との合同チームで、支援活動をしています。24日時点で、益城町総合体育館芝生広場に設置した災害用避難テントは計35張りとなり、妊婦さんを含む女性やペット連れの方計140名と、ペット計40頭が避難しています。現在すべてのテントが埋まっているので、次のテントを張る場所の準備をしています。場所の確保など行政との折衝や、住民のニーズなどいろいろと複雑な事情がからんで調整は大変かもしれません。また仮設トイレ、シャワーブースなどの手配、これからの暑さ対策も準備中。やることは山積みです。

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kumamoto09企業との協力も取り付け、下着や肌着などを無償で配布したり、ビタミン不足を懸念し、佐賀県の甘夏60箱を運んだり、「エコノミークラス症候群」の対策として、運動すると同時に摂取すれば有効とされるサプリメントを企業から提供を受けて配布したり、きめ細やかな対応をしています。ストレスフルな生活を少しでも和んでももらおうと、PWJが東ティモールで活動して販売しているピースコーヒーを飲んでもらうコーヒーコーナーも設置。淹れ立てのいいコーヒーのいい香りが漂えば、少しは心が明るくなるかもしれません。

 

私たちにできること

いまも超多忙に熊本と広島を行ったり来たりしている大西さんに、飼い主としてやっておくべきことは何か尋ねてみました。

●避難セット
自分が被災した時に、犬猫のための避難セットの用意をしておくこと。1週間分くらいのフードと水。(ケージ、マイクロチップなどもあるとよい)

●トレーニング
他人との生活ができるように、犬も人もトレーニングしておくこと。(狭い避難所スペースで、ワンワン吠えたり、ブルブル震えたりしないように、社会化トレーニングをしておく。少しでも心の強い、環境適応力のある犬に育てておくことが大事)とのことです。

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そのほか4月30日午後時点での情報としまして、
県外からのボランティアは、団体以外では受け入れていないので、個人参加は難しい。
物資の送付は需要と供給があわず、粗悪フードが大量にあり、困っている。
お店もほぼ開店し始めた。物資はもう手に入る。物はいらない。

という状況だそうです。では、ほかに私たちに手伝えることはないのでしょうか。

「やはり募金と、国に対して仮設住宅にペット同行を要望する声をあげていくことではないかと思います」と、大西さんは言います。益城町などでは多くの住宅が壊れており、住宅を再建しない限り、帰る家がないことに不安を抱えられている方も多いそうです。仮設住宅や仮の賃貸住宅がペット禁止なら、動物たちは行き場を失います。

復興には募金もやはり大事ですね。ただし、地震に便乗して詐欺まがいの募金活動や愛護団体の暗躍がすでに噂されています。寄付先は、信頼のおけるところにしましょう。ふるさと納税(個人が2,000円を超える寄附を行ったときに住民税のおよそ2割程度が還付、控除される)での支援も始まりました。被災地のいたみを風化させないよう応援していきましょう。

 

《関連コンテンツ》

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【ピースウィンズ・ジャパン】熊本地震・緊急支援 ふるさと納税

そのほかPWJではありませんが、集められた寄付を被災自治体に送る「代理受付自治体寄付」のふるさと納税もあります。

 

白石花絵(しらいし・かえ)

Writer
フリーライター 
白石花絵(しらいし・かえ)

雑文家。東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。
その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピーに共生できる社会になることを願っている。現在、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー(オス)、ボクサーのメル(メス)、黒猫のまめちゃん(オス)、熱帯魚(コリドラスなど)、そしてニンゲン2と暮らしている。趣味は、クーパーと野山へ行くこと。東京都渋谷区在住。

▶執筆サイト: dogplus.me 犬種図鑑
▶ブログ: バドバドサーカス

▶主な著書
『東京犬散歩ガイド』
『東京犬散歩ガイド武蔵野編』
『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)

『うちの犬—あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』

 

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