赤ちゃんと犬が楽しく仲良く暮らせる方法 ~出産前の準備と愛犬へのケア編~

出産前にやっておきたい共同生活の準備

私にも3歳の娘がいるせいか、ここ数年、「赤ちゃんと犬」についての質問や相談をよく受けます。これから3回にわたって、妊娠中から2歳位まで、赤ちゃんと犬と家族が快適に過ごすためのノウハウを、実体験を交えながらご紹介しましょう!

「赤ちゃんと犬」とひとことで言っても、愛犬の性格などにより、赤ちゃんとの接触のさせ方や環境づくりなどが違ってきます。

飼い主さんが妊娠すると、それに気づいて甘え度合いが増す犬がいるという話を聞いたこともありますが、そもそも、うちの2頭は私の妊娠中、いつもの様子と変化なし。

それでも、ある日突然に赤ちゃんを連れて帰ったらさすがに戸惑うと思い、入院中、赤ちゃんの匂いのついたガーゼや産着などを夫に持ち帰ってもらい、しばらく洗わずに(笑)、ソファの上や寝室など、常にどこかに置いてもらいました。「これから家族に新メンバーが加わるよ。紹介しておくね」と。
赤ちゃんの泣き声入り動画をスマホなどで撮影して、退院前に愛犬に見せておくのもいいでしょう。

As愛犬が赤ちゃんの顔を舐めたりするのを防ぐのにも、ベビーベッドや日中に便利なハイローチェアを出産前に揃えておくと良いでしょう

我が家では、犬たちはベッドサイドに置いた座布団か、私と同じベッドで夜は寝ています。なので、赤ちゃん用には、囲いのついたベビーベッドを用意しました。
赤ちゃんが来たことを機に、急にベッドに上れなくなるとか、夜はサークルに入れられるなどといった行動の制限を受けると、愛犬はストレスになるので。
そして、まだ免疫を充分に獲得していない赤ちゃんにとっても、犬に顔を舐められたりして菌に接触するのを防げて衛生的なので。

それから、私にべったりのミィミィが、授乳中にちょっかいを出してきた際の準備もしました。
クレートをソファの近くに用意して、毎日20分×4回くらい、楽しい知育トイと一緒に中で過ごしてもらうレッスンを3年ぶりにやり直したのです。

クレートトレーニング

授乳中など、みんながストレスなく愛犬に休んでいてもらえるとよいですね。出産前の時間がある時に、クレートトレーニングをやり直しておくのがおすすめ!

 

どうする?赤ちゃんとの初対面!

うちには2頭のノーリッチ・テリアがいます。猫のようにマイペースなリンリンと、飼い主にべったりで嫉妬深いミィミィとでは、予想どおり、赤ちゃんと初めて対面したときの反応が違いました。

事故があってはいけないので、まずは2頭をリードでつないで夫に持ってもらい、私が赤ちゃんを抱っこしながらそーっと近づけました。フンフンスンスンと匂いを嗅ぎまくる2頭! でも「あ、この匂い、知ってる」という表情です。

ひとしきり嗅ぐと納得したのか、リンリンは赤ちゃんから離れて行ってしまいました。が、ミィミィは、赤ちゃんを抱っこする私にストーカーのようにつきまとい、赤ちゃんが初めて「ウァァァァーン」と泣き声をあげると、「ワンッ」と吠えました。「うるさいっ、私のママにずっと抱っこされてて気に入らないワンッ」という感じでしょうか?

Cs私が赤ちゃんを抱っこしていると、足元から「なんで私は抱っこしてもらえないのよ~」とでも言っているかのようなミィミィの視線が……(笑)

犬連れ里帰り出産をした友人の愛犬は、赤ちゃんが泣くたびに吠え、ママが赤ちゃんを抱き上げると嫉妬した様子で赤ちゃんに飛びつこうとしていたとか。
友人の両親など、みんなで「コラ! いけない。赤ちゃんにやさしくして」と愛犬を叱っているけれど、行動が改善されないと悩んでいました。

このような反応を示しても、決して愛犬を叱ってはいけません。赤ちゃんに対するイヤな印象を強めてしまうからです。「今までどおり大切に思っているよ」と愛犬に態度で示して、愛犬を安心させてあげるのがベスト。
赤ちゃんが泣いたら、愛犬を呼んでオヤツをあげます。泣き声で吠えなかったときも、ご褒美を忘れずに。赤ちゃんに飛びつきそうになったら、オスワリなどをさせて、落ち着いたら褒めてあげましょう。

「私はもちろん、家族全員の意識が赤ちゃんに集中していて、愛犬がさびしい思いからストレスを感じていたのね。愛犬をたっぷりかまってあげて、叱らないようにしたら、すごく落ち着いてきたよ」と、友人。

 

【実例】愛犬&ママのストレスを軽減させるためには

赤ちゃんは1ヵ月検診までは外出することができません。その間、夫や実家のサポートを受けながら、今までどおり愛犬の散歩ができる状況があれば良いのですが、むずかしいことも。
私も、愛犬が満足できる散歩の量や質をキープしてあげられなかったので、お散歩代行サービスを活用しました。

<実例①>
動物のために活動する団体へのオンライン寄付サイト「アニマルドネーション」の代表・西平衣里さんは、赤ちゃんとの生活で体調不良になった愛犬が元気になるまでの日々を、次のように振り返ります。

「母に赤ちゃんの面倒を見てもらい、愛犬の散歩にはできるだけ私自身が行きました。それでも、自宅では大きな泣き声などがストレスになったようで、赤ちゃんが泣くと愛犬は別の部屋に行ってしまうように……。
ついには、私と赤ちゃんがいる部屋には入ってこなくなり、廊下から悲しそうな目をして私を見つめていました。

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私も心が痛み、なんとかしてあげたいと思っていた矢先、愛犬が血便をするようになったのです。病院では異常なしと言われましたが、動物の整体師の方から『ストレスで極端に背中が凝っているのが、血便の原因かと思われる』と告げられました。

それからは、赤ちゃんに話しかけたら必ず愛犬にも話しかけたりスキンシップをとるようにして、楽しそうな雰囲気を作るように心がけました。
それから数ヵ月、息子が生後半年になった頃には愛犬も明るくなり、今では仲の良い兄弟のように生活しています」

<実例②>
愛犬家向けの情報誌「ONE BRAND」の編集長・小川類さんは、出産前に自宅安静や管理入院をしたことがきっかけで、出産後も数ヵ月ほど妹に愛犬を預ける選択をしたとか。
「おかげで、いっぱいいっぱいにならず、子育てに専念できて良かった」と語ります。

昼夜を問わず数時間おきに授乳するのは、本当に大変です。睡眠不足や赤ちゃんの夜泣きなどで疲労が蓄積していくなか、愛犬に手が回らなくなる罪悪感なども加わり、飼い主がストレスを抱えた状態は、愛犬にも悪影響。

犬は、飼い主の感情を敏感に感じ取ります。赤ちゃんも同様で、母親のイライラや不安感に同調して泣いてしまうことも多々。

ママが心にゆとりを持てるような生活環境づくりも、愛犬にとっても赤ちゃんにとっても重要ですね。

 

さて、次回は、赤ちゃんと愛犬をどの程度触れ合わせたら良いのか。気になる衛生面などについてまとめたいと思います。

Ds赤ちゃん特有の匂いを嗅いで、ちょっとお世話モードに入ったかもしれない(!?)、未避妊メスのミィミィ

臼井京音

ドッグライター、写真家、東京都中央区の動物との共生推進員 ドッグライター・写真家として、およそ20年にわたり日本各地や世界の犬事情を取材。毎日新聞の連載コラム(2009年終了)や、AllAbout「犬の健康」(2009年終了)、現在は『愛犬の友』、『AERA』、『BUHI』など、様々な媒体で執筆活動を行う。オーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、2007~2017年まで、東京都中央区「犬の幼稚園 Urban Paws」」の園長・家庭犬のしつけインストラクターとしても、飼い主さんに…

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