犬がトイレを覚えない、粗相するのはなぜ?|行動学の専門獣医師が解説

犬は、飼い主さんが教えないかぎり、自分からトイレで排泄することはありません。トイレ・トレーニングのコツは、とにかく粗相する確率の少ない環境を整えて、犬にトイレで排泄するよう仕向けること。
子犬だと、最短1ヵ月ぐらいで誘導しなくてもひとりでトイレができるようになります。成犬の場合は多少時間がかかりますが、子犬と同様の方法で根気よく教えれば、できるようになります。

失敗しにくいトイレ環境を整える

●屋根付きサークルの中にクレートを設置

犬を迎えたら、まず屋根付きのサークルを用意します。その中にクレート(※)を置いて、クレート・トレーニングも同時に行います。犬には柔らかいところで排泄する習性があるので、ふかふかのベッドを置くと粗相の確率を高めてしまいます。
※ クレート:プラスチックや金属製の扉が閉められるタイプの入れ物。

リッチェル キャンピングキャリー ダブルドア S ブラウン
 
屋根付きが望ましいのは、屋根がないと、飼い主さんは、お水を替えたり、ごはんをあげたり、子犬を抱き上げたりといったお世話を、サークルの上からしてしまうから。子犬は「うれしいことは上から起こる」と思い込み、ピョンピョン飛び出しグセがついてしまいます。また、上から子犬を出し入れしていると、自らサークルに入る習慣がつきません。

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●トイレスペースの作り方

一番おすすめなのは、サークル内のクレート設置場所以外の全面にペットシーツを敷き、どこで排泄しても良い環境を作ること。子犬は、最初はいろんな場所で排泄しますが、だんだんスペースが限定されてきます。そこで、排泄しない場所のペットシーツは取っていき、最後に残った「ここ!」というポイントにトイレスペースを作ります。

ただし、ペットシーツを引きちぎって食べてしまうクセのある犬は、この方法がとれないので、できるだけ大きい枠付きのトイレを用意してください。もし空いているスペースで粗相する場合は、そこにごはんと水を置きます。犬は通常、食べ物のある場所では排泄をしません。

●トイレサイズは体調の1.5倍以上

トイレのサイズも重要です。だいたい子犬の体長と同じぐらいのサイズのものが使われているケースが多いのですが、それでは小さすぎます。トイレに入ったときに動き回れるスペースも含めて、体長の1.5倍以上の大きさが必要。慣れてきてから小さくするならともかく、最初から小さいのはNGです。

時機を見計らって「誘導」し、正しく「褒める」!

●排泄の記録をつける

トイレ・トレーニングには、排泄の記録をつけることも大切です。ごはんをあげる時間を一定にし、3~4日つければ、そのコの排泄パターンがわかります。たとえば朝起きて「おはよう」のあいさつをすると、犬はうれしくて興奮して排泄するので、排泄を見届けた直後に「いいコだね」と褒めます。その後なら、膀胱がカラなので、サークルから出しても粗相の心配はありません。

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●時間を見計らって、トイレに誘導

そのコの排泄が30分ペースであれば、25分後くらいに「ハウス」と言って、おもちゃやおやつでサークルへ誘導し、扉を閉めます。その後排泄をしたら、褒めて外に出してあげます。この流れで犬が覚えることは、

(1)サークルに入って排泄すると、また自由になれる。
(2)外にいるときに排泄したくなったら、どういうルートでトイレに行くかがわかる。

この2点を同時に学習させられます。

一般にトイレのタイミングは、寝起きと食後30分~1時間、遊んでいる最中です。それ以外にもそわそわする行動が見られたら、トイレへ誘導してください。よく観察し、失敗させないことが最も大事です。慣れてきたら、少しずつそのコに任せ、誘導を減らしていきます。

●正しいタイミングで褒める

飼い主さんには、忙しくても「一日3回は、正しくしたところを正しいタイミングで褒める」ことをお願いしています。そうすれば、だんだんとトイレで排泄ができるようになっていきます。
また、排泄行動をコマンド化することも、トイレトレーニングを早く完了するためのコツになります。排尿している最中に、「ワンツーワンツー」などの声掛けを継続してあげることで、膀胱コントロールをコマンド化できます。

うまく行かない原因はここにある!

●誘導しなければ、自らサークルには戻らない

ほとんどの飼い主さんが、「サークルの中だとするけれど、一歩外に出ると排泄しに戻らない」と言いますが、それは当たり前。教えてあげなければ、犬は自分から戻ってはしません。そのコの排泄のタイミングを見計らってトイレへ誘導します。そのとき、抱っこしてトイレへ連れていくとルートを覚えないので、必ずそのコの足でトイレまで導いてください。また、サークルに入れた後は、犬が出たがって鳴いても、「するまで出さない!」という強い気持ちで接すること。

サークルの外で遊ぶのは、トイレを済ませてから! 

 

●叱れば叱るほど、できなくなる

犬の行動のなかで、トイレの粗相ほど叱ってはいけないものはありません。叱れば叱るほどできなくなります。叱られると、テーブルの下など見えない場所で隠れてするようになってしまいます。

●褒めるタイミングがズレている

トイレ・トレーニングがうまくいかない原因として、褒めるタイミングがズレていることも多々あります。褒めるタイミングがズレると、犬がなぜ褒められているかわからず、「トイレを正しくする=褒められる」ということが結びつかないのです。トイレが正しくできたら、その場ですぐに褒めてあげ、その後一緒に遊んであげるなど報酬を高めにするのも手です。

 

●自由を早く与えすぎた

飼い主さんは「いつもサークルに閉じ込めておくのはかわいそう」と考えがちで、トイレ・トレーニングがまだ不完全なのに、すぐにサークルから出してしまいます。本当に早く自由にしてあげたければ、できるだけ早くトイレ・トレーニングを完成することです。

 

トイレの場所を変えるには

●元あった場所から少しずつ移動

サークルの中にトイレを入れるのは、犬にとってわかりやすくするためなので、100%自分でトイレができるようになれば、別の場所に移しても構いません。場所を変えたいときは、犬が混乱しないように、元あったトイレの場所から少しずつ移動させていくことをおすすめします。またトイレはプライベート空間なので、人の動線にかからない、部屋の隅っこの安心できる場所を選びましょう。

●トイレは「位置」ではなく「素材」で教える

大事なことは、「家の中のこの場所があなたのトイレ」という位置的な教え方ではなく、「ペットシーツ、新聞紙があなたのトイレ」と、素材で教えること。それができれば、外出先でも、ペットシーツを持参して、トイレのコマンドで排泄ができるようになります。

 

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石井 香絵

獣医師、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表、AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員 麻布大学獣医学部を卒業し動物病院で一般診療を行った後、動物行動学、行動治療を学ぶために渡米。ニューヨーク州にあるコーネル大学獣医学部の行動治療専門のクリニックに2年間所属し帰国。現在はワンちゃん、ネコちゃんの問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナー・講演活動など幅広く活躍。2013年からは、アニマル・クリスタルヒーリングのファシリテーターの養成を始める。愛…

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