間違いだらけの「しつけの常識」愛犬の困った行動が直らないのは、飼い主さんのせい? by 牧口香絵

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過去の間違った考えに基づく犬のしつけ方が、今も実践されつづけています。こうした間違った対応が、愛犬の困った行動を直すどころか、かえって悪化させているケースも少なくありません。今回は、そんな飼い主さんの間に根強くはびこる、犬の行動に対する「誤解」について取り上げてみました。

 

誤解1:言うことを聞かないときは「仰向け」にする

言うことを聞かない愛犬を叱るときに、仰向けにして押さえつけている飼い主さんをよく見かけます。犬がお腹を見せるのは服従のポーズだから、そうすることで、人間が犬より上位だということを教え込もうとしているのです。
犬どうしの場合、例えば2頭が顔を合わせてお互いの力量を値踏みしたときに、一方が「ここではむかったら負ける」と判断したら、劣勢の犬は、自分から顔をそむけてお腹を見せ、優勢の犬がそれを受け入れます。人がそれを見て、上の者が下の者に順位を認めさせるには、仰向けにしてお腹を見せるようにすればいいんだなと、まねているわけです。

しかし、これは意味のないことです。弱い立場の犬が自分からお腹を見せるのと、人に強制的にやらされるのとでは、まったく心理が異なります。犬が自発的に行うのでなければ、行動の修正には結びつきません。

 

誤解2:咬んできたら「マズルコントロール」で対応

マズルコントロールも、「仰向け」と同様、よく行われているしつけ方法です。犬が咬んだり吠えたり、飼い主にはむかってきたりしたら、犬のマズル(鼻先)をグッとつかんで、観念するまで握っているというもの。
犬の世界では、母犬が子犬に、あるいは上位の犬が下位の犬に、間違えたことをしたときにマズルを噛むということがあります。それを見よう見まねで行ったのが、マズルコントロールなんです。

しかし、犬どうしの世界で成立するからといって、犬と人の間、それも口ではなく手で行っても効果はありません。それどころか、マズルコントロールを行っている犬は、ハンドシャイ(手を近づけるとおびえる)になるし、手が出てくると咬むようにもなる。いいことは何もない、間違ったしつけ方です。

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誤解3:仲の悪い犬は、ケンカで上下関係をつける

同居犬2頭の仲が悪くて困っているという飼い主さんから、「徹底的にケンカをさせれば、上下関係がついて落ち着くからとアドバイスされ、やってみたけれど、いっこうにケンカが収まりません」という相談を受けました。
あたりまえです。犬どうしをケンカさせて、どちらかがお腹を見せて決着がつけば、その後はケンカをしないと信じている人が多いのですが、それはオオカミの世界の話であって、犬には通用しません。犬は何度でもケンカをするし、繰り返すほど、ケンカの閾値が下がって、ケンカが始まる速度も頻度もエスカレートしていきます。

もっとも仲の良くない犬たちも、いつもケンカをしているわけではありません。何かがきっかけでスイッチが入るんです。例えば、自分のお気に入りのおもちゃでもう1頭が遊んでいるとか、自分より先に飼い主さんに撫でてもらっているとか、必ず理由があるはずです。その理由を見つけてあげて、そういう状況でも2頭が仲良くできるようにトレーニングしていかなければいけません。
お互いに「オスワリ」や「フセ」をさせてフードをあげるなど、一緒にいて楽しい経験をさせること。また2頭で仲良くしているときに積極的にほめてあげることも大切です。

 

誤解4:犬は順位づけをする動物だ

かつては、犬は家族の中で順位づけをすると言われましたが、それは間違いです。犬と人の間に上下関係がないことは実証されていますし、犬同士の間でも確実な優勢、劣勢はありません。例えば、一方の犬は寝床に執着があって、他の犬に寝床をとられると腹が立つから咬む。だけどその犬は食べ物には執着がないので、食べ物に対してはもう一方の犬に譲る。犬のなかでそういう組み合わせがあって、いつも決まったボスがいるという感覚はないんです。
ただ、ごくまれに仲間の中でボスに立つ犬がいます。それは権力を振りかざすのではなく、いつも穏やかで安定していて、何かあったときに守ってくれる存在です。

 

誤解5:しっぽをクルクル追うのは楽しいから

しつけの問題とは異なりますが、犬の行動に対する飼い主さんの誤解という点では、「常同障害」への無理解も多くみられます。
常同障害とは、同じ動作を反復して繰り返す異常行動です。例えば、犬がしっぽを追ってクルクル回り続けるのも、その一種。楽しいからやっていると勘違いしている飼い主さんがいますが、これは楽しいとは真逆の感情で、ストレスから来る葛藤行動です。

“Fanny Dog”として取り上げられていますが、実際はしっぽを追っているので犬は葛藤しています。

 

床に散らばった人の毛やほこりを、掃除機のように食べ続けるというケースもありました。飼い主さんは「うちのコ、食いしん坊で」と言うのですが、そんな範疇のものではなく、明らかに直さなければいけない異常行動です。異常かどうかの判断は、その動作をどれぐらい繰り返すか、その執着の度合いなどから見極めますが、犬がティッシュをいたずらして食べるというレベルでは、常同障害とは言いません。
常同障害は、早く原因を突き止めて環境を改善してあげないと、犬にとってたいへん不幸なことです。

※編集部より
困った行動の改善策については、一律では括れず、パーソナルな対応が必要となりますので、犬の問題行動の専門家に相談することをおすすめします。

 

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◆今日の愛犬コーディー

私の愛犬、ボーダーテリアのコーディーは今年の9月で10歳になりますがいまだにたくさんのトリックやコマンドを学んでくれています。同じアクションをする際にいつも同じ言葉(コマンド)を伝えることを継続していくことで犬はすぐに頭の中 で言葉とアクションを一致させます。300単語など簡単に習得できるワンちゃん頭脳は本当に無限大だなといつも感じます。

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牧口 香絵

獣医師 牧口 香絵

ペットの行動コンサルテーション[Heart Healing for Pets]代表

1998年に麻布大学獣医学部を卒業し動物病院で一般診療を行った後、動物行動学、行動治療を学ぶために渡米。ニューヨーク州にあるコーネル大学獣医学部の行動治療専門のクリニックに2年間所属し帰国。現在はワンちゃん、ネコちゃんの問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナー・講演活動など幅広く活躍。2013年からは、アニマル・クリスタルヒーリングのファシリテーターの養成を始める。愛犬はボーダーテリアのコーディーちゃん。
・AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員

愛犬をやさしく癒す クリスタルヒーリング

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