水飲みの流儀。猫には猫のこだわりがある【猫専門医・服部幸のここだけの話】

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水飲みアイキャッチ

こっちの水がうまいぞ~!?なんでそんなところから?

「うちのコ、水入れの水を飲まないのに、洗面所で飲んでるんです」
「最近、仏壇のお供えの水がどうも減っていると思ったら、うちの猫が飲んでたんですよ!」

お風呂の水、水槽の水、洗面器のたまり水、花びんの水、コップの水、蛇口からなどなど、どうしてこんなところで飲むの?という話はよく耳にします。

飼い主さんが「水入れから飲んでほしい」と思っても、猫にとってはその水が「水入れ」かそうでないかの区別はないので、飲みたいときに自分がアクセスできるところに水があれば飲みます(ただし、花びんの水は、花が入っているときには要注意。ユリ科の植物のように、猫にとって有害な花もあるので気をつけてくださいね)。
水飲み_ティーダ水槽

僕が初めて飼った「うにゃ」ちゃんはお風呂のお湯が好きで、僕がお風呂に入るときに“一番風呂”ならぬ“一番湯”を飲みに付いてきました。夏のお気に入りは氷。製氷皿から1つ取り出してあげると、アイスキャンディみたいにペロペロ舐めて水分補給していたっけ。猫は猫なりに、水にもこだわりがあるようです。

 

それってホント?水にまつわる都市伝説!?

猫の水飲みに関して、巷で広がっている情報の中には、「うーん!?」と首をひねりたくなるものもあります。その1つは「猫にミネラルウォーターはよくない」というもの。ひとくちにミネラルウォーターと言っても種類はさまざまで、大きく分けてマグネシウムとカルシウムを多く含む硬度の高い「硬水」と、硬度の低い「軟水」があります。確かに猫に多いストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石は、マグネシウムやリン、カルシウムなどのミネラル分の過剰摂取も影響するので、硬度の高い硬水は控えたほうがよいでしょう。

水飲み_ペットボトル

でも、もっと言えば、日本でも沖縄の水は硬水ですし、フランスなどヨーロッパの硬水の地域の猫たちはその水を飲んでいるわけです。それじゃあ、沖縄やフランスの猫に尿石症が特に多いかというと、そういうデータは出ていないので、過剰に気にすることはないと思います。

だからってわざわざ硬水をあげる必要はないけれど、とにかく、日本の南アルプスとか富士山とかの天然水は軟水ですから、ミネラルウォーター=ペットボトルに入っているは水すべていけないというのは誤解です。

それから、「冬になると猫が水を飲む量が減る」という説も否定するつもりはないけれど、個人的には懐疑的。人間が冬に冷たい水を飲みたくないから、その情報を猫に当てはめているだけの都市伝説のように感じてしまうんです。猫の腎臓病、膀胱炎、尿石症などは1年中多いので、水を飲ませる工夫は冬に限らず1年中行ってほしいものです。

 

猫に水を飲ませる11のヒント

それじゃあ、水を飲ませる工夫ってなんでしょう?猫の健康を維持するためには、水をしっかり飲ませたいけど、なかなか飲んでくれないのが猫です。そこで、水を飲ませる11のヒントをまとめてみました。

1.新鮮な水を常に用意する
新鮮な水のほうがたくさん飲むとも言われています。水は減った分だけつぎ足すのではなく、1日1回は必ず全部入れ替えて。自分もその水を飲めるくらいの状態にしておきましょう。
水飲み_水置き場修正

2.さまざまなタイプの水を試す
水道水が好き、水道水も湯冷ましならOK、ペットボトルの水が好きなど猫によっていろいろなので、好みの水を見つけましょう。

3.水に風味をつける
鶏のささみのゆで汁や、ごく薄めのかつおだしなど、風味がついたものならよく飲む場合もあります(味付けは不要)。ただし、食事制限などがあるときは主治医に相談してください。

4.流水を試す
水道の蛇口から細く水を出した流水が好きな猫は結構います。流水好きの猫のために、最近では循環式の自動給水器もありますが、欠点は汚れやすいこと。水を飲んだときに入った唾液が容器の中を循環して細菌が繁殖することもあるので、こまめな掃除が必要です。
水飲み_流れる水

5.食器は常に清潔に
水を取り替えるときには、食器もきれいに洗いましょう。
水飲み_食器洗う

6.食器は共有しない
同居犬や他の猫の唾液が入ったり、ニオイがついたりした水は嫌がります。多頭飼育では、水飲みの食器を複数用意しましょう。

7.食器の材質を変える
陶器、ステンレス、プラスチックなど食器の材質にこだわる猫もいます。水がおいしくなるという触れ込みのセラミックの器などもありますから、いろいろ試してみてはどうでしょう。
水飲み_器色々

8.表面積が広い食器に変える
水を飲んだりものを食べたりするとき、食器にヒゲが触れることを気にする猫も多いので、広い器に変えてみるのもよいでしょう。

水飲み_1ちなみに、我が家の猫たちの水入れは“100均”のどんぶり。食器の口が広いので、気に入ってくれているようです。

9.食器の場所を工夫する
水入れがトイレに近いとニオイが気になって飲まないこともあるので、トイレと食器は離しましょう。本来、猫が狩りをする場所と水飲み場は分かれているので、フードのそばに水を置いておくと飲まないという説もあるけれど、僕はこれも「?」。フードのそばにも水はあったほうがいいと思うし、1ヵ所ではなく何ヵ所かに用意すればいいと思います。
水飲み_水とフード

10.ウエットフードを試す
ウエットフードの水分含有量は75%程度、ドライフードは10%程度以下と定義され、ウエットのほうが効率的に水分補給できます。研究データでも「ドライ+水」よりも「ウエット+水」のほうが水分摂取量は増えるという報告がされています。
水飲み_7

11.食事の回数を増やす
猫は食事の後に水を飲むことが多いと言われているので、食事の回数を増やせば水を飲む回数も増えます。実際に食事の回数が多いほうが飲水量も増えるというデータもあります。

これをやれば「確実」というわけではありませんが、飲水量を増やしたい腎臓病や尿石症などの猫、日頃から水をあんまり飲まない猫には、ぜひ試してみてください。

さて、我が家の猫の水飲みでも困ったことが一つ。ナイトくんの好みは水道からの流水で、自分で蛇口のレバーハンドルを器用に押し上げて飲んでいるときもあるのですが、猫ですから、自分で水を出しても止めてはくれません。日中は僕も奥さんも仕事で留守にしていますが、家に帰ったら水道が全開なんてことが何度かありました。いったい何時間出ていたんだか(汗)。

水飲み_3流水を上手に飲むナイトくん。水道のレバーハンドルを頭で押し上げて、自分で水を出して飲むこともあります。

だから、今は留守にするときはたっぷりの置き水をして、蛇口にはストッパーを付けました。ナイトくんには申し訳ないけど、留守中何時間も水が出しっ放しになっては、さすがに水道代がおそろしいことになりますから(苦笑)。

水飲み_2留守中、ナイトくんが勝手にレバーを押し上げないように、蛇口にはこのようなストッパーを付けました。ビニール製の腕章で作った特製ストッパーです!

聞き手/宮村美帆(フリーエディター)

catdog_服部先生東京猫医療センター院長 服部 幸先生
2003 年北里大学獣医学部卒業。動物病院勤務後、2005 年より SyuSyu CAT Clinic 院長。2006年、アメリカのテキサス州にある猫専門病院「Alamo Feline Health Center」にて研修プログラム修了。2012 年「東京猫医療センター」を開院し、2013 年には国際猫医学会よりアジアで 2件目となる「キャットフレンドリークリニック」のゴールドレベルに認定された。著書に『ネコにウケる飼い方』(ワニブックス PLUS 新書)、『猫の寿命をあと 2 年のばすために』(トランスワールドジャパン)、監修に『ネコの看取りガイド』(エクスナレッジ)ほか。

東京猫医療センター
2012 年開院、2013 年には国際猫学会(ISFM)よりアジアで2件目となる「キャットフレンドリークリニック」(猫に通院ストレスなどを極力減らすための基準をクリアした、猫にやさしい病院)のゴールドレベルに認定された。

 

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