超・動物病院嫌いの猫でも大丈夫!? 猫専門病院の「キャットドック」初体験。東京猫医療センター・服部幸先生

まだまだ若いと思っていた愛猫・ゴロウちゃんも早4歳。人間の年齢に換算すれば30代に突入ですから、そろそろ本格的な健康診断、キャットドックを受けさせたいと思っていました。けれども、なにしろ大の動物病院嫌い。家では甘えん坊なのに、病院に行くと暴れん坊に豹変して怒りまくり、獣医さんもなかなか触れない状態になります。

病院嫌いの猫は多く、普通の診察でも大変なのに、健診なんてハードルが高くて…と思うのは、私だけではないはず。猫専門病院だったら、なんとかしてくれるかも…。そんな思いで向かった東京猫医療センターで、キャットドック初体験です!

<取材に協力いただいた先生>

東京猫医療センター院長 服部幸先生
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猫はとても我慢強い動物なので、痛みやつらさを隠してしまいます。飼い主さんが「明らかにおかしい」と気づいたときには、事態はかなり深刻になっていることがほとんど。定期的な健康診断で、病気の早期発見・早期治療をすることが愛猫の健康を守る第一歩です。7歳くらいまでは最低でも年1回、7歳以上は半年に1回の健診をおすすめします。

東京猫医療センター
2012 年開院、2013 年には国際猫学会(ISFM)よりアジアで2件目となる「キャットフレンドリークリニック」(猫に通院ストレスなどを極力減らすための基準をクリアした、猫にやさしい病院)のゴールドレベルに認定された。

 

catdog_3修正キャリーバッグは日頃から出しっ放しなので、入ることにはまったく抵抗はないのですが…。

 

どうなる!?ハラハラどきどきのキャットドック

いざ、東京猫医療センターへ。猫専門病院ですから1階の待合室に犬の姿がないだけでなく、診察室は2階でフロアが分かれているため、薬品のニオイや独特な緊張感も感じられません。いつものゴロウちゃんなら病院に入っただけで「ウーッ」という唸り声が聞こえてきますが、落ち着いていました。

catdog_2声をかけたり覗いたりせずに、キャリーバッグごとタオルにくるんでそっとしておきます。その間に私は問診票に記入。

■問診と健診プランの相談
診察室には、よく見かける金属質の診察台もありません。病院の雰囲気が苦手な猫が多いので、「診察室」の気配を消しているのだとか。ゴロウちゃんはキャリーバッグに待機させたまま、まずは、現在の健康状態や過去の病歴など、先ほどの問診票を確認していきます。

東京猫医療センターには、猫と飼い主に合わせたオーダーメイドの健康診断をコンセプトにした「にゃんにゃんドック」というプランがあります。猫の年齢や様子、予算に合わせて、トライアルプラン(8,640円)からスペシャルプラン(54,000円)まで5つのコースが用意され、検査項目の組み合わせも先生と相談しながら飼い主が選ぶことができます。

今回私は7つの検査が受けられるスタンダードプラン(19,440円)で、検査項目は【尿検査】【血液生化学検査】【腹部レントゲン検査】【胸部レントゲン検査】【腹部超音波検査】【皮膚糸状菌検査】【SDMA検査】(*)を選択しました。

*SDMA検査……2016年から始まった新しい腎機能検査(血液検査)

 

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このテーブルが診察台。かかりつけの動物病院で治療を受けた際の、過去の血液検査のデータも見ていただきながら、健診プランを相談。

ついにゴロウちゃん登場。本来ならば、問診の次は視診、触診、聴診などの身体検査なのですが、診察台に載せたとたん、バッグの中から不穏な唸り声が聞こえてきました。

「どのくらい病院嫌いなんですか?」と先生に尋ねられ、「威嚇しまくって獣医さんに体を触らせないことがあります。興奮して私の顔に本気で猫パンチをして、私が顔面流血したことも」と伝えると、「わかりました。それでは血液検査などを先にやりますとのこと。

時間が経つほどにますます嫌になっていくので、病院嫌いの猫の場合は、動きに制限が必要な血液検査など、猫にとって嫌なものを先にやってしまったほうがよいのだそうです。なるほど!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA「病院嫌いのコもうちにはたくさん来ますから大丈夫ですよ」 と服部先生

大暴れしたらどうしよう…。私の心配をよそに、猫を熟知した服部先生とスタッフの皆さんの無駄のない動きで、検査は驚くほどスムーズに進んでいきました。

catdog_5キャリーバッグの上半分を外し、上からタオルをかけてそっと抱き上げて、お互いの安全のためにエリザベスカラーをつけます。

 

catdog_6緊張の面持ちのゴロウちゃん(^^;)

 

■採血
まずは、後ろ足の内股の静脈からの採血。血液検査は内臓の機能を把握するための重要な手がかりとなります。

catdog_7初めはシャーシャー言っていましたが、上手に保定されているのでされるがまま。

 

■採尿/腹部超音波検査
新鮮な尿で正確に検査をするために、膀胱に注射針を刺して尿を直接採取する「膀胱穿刺」という方法で採尿します。エコー(超音波)で、泌尿器系(腎臓、膀胱)の内部構造を確認しながら行います。

catdog_8エコーで膀胱の様子を確認。「あまりオシッコがたまっていないけど、まあ採れるでしょう」

catdog_9エコーで確認しながら、注射器で膀胱内のオシッコを採取。痛がったり騒いだりするかと思いきや、抵抗することもなくほんの一瞬で終わりました。

 

■皮膚糸状菌検査
かつて、皮膚に生えるカビの一種、皮膚糸状菌(真菌)に感染し、なかなか治らず苦労したので、新たな感染がないか調べてもらいました。

catdog_10ときどき掻いている耳の後ろの毛を取り、培養して菌が出るかどうかを調べます。

 

■体重測定
検査の合間にささっと体重測定です。

catdog_11この日の体重は4.85kg。月1回の自宅での体重測定とほぼ変わりなし。

 

■レントゲン撮影
レントゲン検査では、心臓をはじめとする各種臓器の大きさや位置などを確認します。胸部と腹部をそれぞれ横向きと仰向けで撮影します。「ウギャー、シャーッ」と抵抗するゴロウちゃんの動きを力で押さえつけることなく、うまくコントロールしていました。

catdog_12膀胱穿刺や仰向けの撮影時に大活躍していたのが、このV字型の保定クッション。すっぽり包まれるので体が安定し、猫も安心できるようです。

レントゲン撮影もこれで終了。ここまでの所要時間はわずか10分程度で本当にあっという間。猫の負担やストレスが最小限になるようにスピーディかつ確実で、本当に「あっぱれ!」でした。検査が終わってホッとしたのか、再び「フーッ!シャーッ!!」と威嚇するゴロウちゃん。

「もう少し落ち着いていれば、もう少ししっかり身体検査をしたいのですが…。血液検査やレントゲンは保定をすればできるけど、身体検査は嫌がっているところを無理に押さえてやれば、しっかり診られないだけでなく、猫のストレスにもなるので、実は一番難しい検査なのです」(服部先生)

ということで、今はとりたてて気になる症状などもないので、ゴロウちゃんのストレスも考えて今回はここまで。最後にワクチン(三種混合)を打ってキャリーバッグへ。

catdog_13さあ、終わった終わった!はい、お疲れさまでした!!

 

検査結果〜定期的に行い、比較することが大事!

ほとんどの検査結果はその日のうちにわかります。 ほどなくして結果が出てきて、服部先生から説明を受けました。うっかり軽く朝ごはんを食べさせて来てしまったせいで、血液検査の中性脂肪と尿検査のpHが参考基準値より高く出ていました。「食後」の数値ということであれば許容範囲ですが、尿pHが高い状態が続くと結石ができやすくなるので、食事内容には気をつけるようアドバイスをいただきました。
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気になったのは、肝機能の数値、AST(GOT)とALT(GPT)が若干高めだったこと。

「肝臓がダメージを受けているとASTとALTの数値が上がりますが、この時に一緒に上がるはずの他の数値にはまったく問題なく、他に異常も見られないので、この数値だけで病気かどうかの判断はできません。数値が高めに出る体質というケースもあるので、今回の数値を判断基準として今後、様子をみていきましょう

高齢になってから、あるいは具合が悪くなって初めて検査をしてこの数値が出た場合、それが病気かどうかの判断はさらに難しくなります。けれども、4歳の健康な状態での情報があればそれと比較することができ、今後の検査の一つの指針になるというわけです

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結果報告書、超音波画像、レントゲン写真などを見ながら、一つ一つ説明を受けます。レントゲン写真にはマイクロチップもしっかり写っていました。

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今回のタイミングで検査を受けたのは、とてもよかったと思いました。将来の健康のためにも健診は大事なんですね。その他、レントゲン検査、超音波検査は異常なし。後日結果が出た皮膚糸状菌検査とSDMA検査にも問題はなく、ほっとひと安心でした。

 

病院嫌いだからこそ、自宅での管理はしっかりと

獣医師に体に触らせない病院嫌いの猫は、病院での検査とともに家庭での健康管理と日頃のボディチェックが重要であることを改めて実感しました。ゴロウちゃんは病院では怒りまくりですが、自宅ではフレンドリーでどこを触っても嫌がることはありません。日頃のボディチェックでいち早く異常に気づけるようにこれまで以上に気を配りながら、今後も年1回のキャットドックを継続していきたいと思います!

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自宅での歯磨きもいちおうできます。

 

服部先生に聞いた、キャットドックを上手に受けるコツ

■朝ごはんは食べさせない
より正確な検査結果を得るためには、人の健康診断や人間ドック同様に空腹状態で受診しましょう。12時間以上絶食できれば、なお理想的です。

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■キャリーバッグの形状も重要
特に病院嫌いの猫では、ハードタイプで上からも前からも取り出せ、さらに上下に分かれるキャリーバッグがおすすめ。

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猫を洗濯ネットに入れても、レントゲンやエコーの際には結局ネットから出さなければならず、嫌がる猫にはそこでまた負担がかかります。上半分がはずれるタイプのバッグなら、タオルをかけて猫をスムーズに出すことができ、そのまま検査を行うこともできます。

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こんなに怒っていても、上を外してタオルをかければキャリーバッグから出すことができ、そのまま注射や診察も受けられます。

 

宮村美帆

フリーエディター、愛玩動物飼養管理士 動物好きの両親の影響で、子どもの頃から、犬、小鳥、ハムスター、鈴虫、錦鯉など、何かしら生き物がいる環境で育つ。動物看護師として2年間の動物病院勤務を経験した後、猫の月刊誌『CATS』の編集者に。その後、人と動物の今を考える雑誌『季刊リラティオ』の編集などを経てフリーランス。エディター、ライターとして、ペット(動物)、児童書(図鑑)、実用書、デジタル情報辞典などを手がける。 ずっと犬派だったが、動物病院勤務で猫の魅力に目覚め、猫雑誌の編集でどっぷりハマる。獣医…

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