犬の「震え」。寒い?病気?原因と対策を解説[獣医師コラム]

愛犬がぶるぶる震えている。寒いの? 恐いのかな。それともどこか痛い? 原因がわからなければ、飼い主さんはオロオロするばかりですよね。そこで、今回は愛犬の「震え」から考えられる原因と対策について取り上げます。

 

「震え」の原因はさまざま

犬の震えについては、さまざまな原因が考えられます。例えば…

■シンプルに「寒さ」によるもの。

■リラックスしているはずのタイミングで震えている場合は、「痛み」から来ている可能性。

■家族がバタバタしていたり、会話の口調が強かったり、お父さんが酔って帰宅したり…、いつもと違う様子への「脅え」から。

■遠くの工事や人には聞こえない音などへの「警戒」

■嫌なことをされるなど、犬が強いストレスを感じているときに、自分を落ち着かせようとする「カーミング・シグナル」

■老犬の場合は、「筋力低下」で体を支えきれなくて。

「飼い主の気を引くため」の行動であることも。

 



「震え」別の対策を考える

【寒さによる震え】

季節の変わり目は、気温適応ができずに震えていることが多いです。寒さが原因なら、部屋を暖めたり、服を着せたりして対応できます。家の中では、暖かい場所を探して自由に歩き回れるコと、サークルなどに入れっぱなしで移動できないコがいるので、それぞれの状況に応じて防寒対策が必要です。冬は震えて熱発散が多くなり、食べさせても痩せてしまうコもいます。

 

【痛みによる震え】

震えの相談は小型犬が圧倒的に多いです。大型犬も具合が悪ければ震えますが、見た目も派手に震えるため、飼い主さんも気づきやすいです。

よくあるのは、チワワ、ダックス、トイプードルなどが、腰痛や首の痛みなどから、部屋の隅でじっと固まって震えているケース。犬自身に余裕がなく、普段なら声をかけたら来るのに来ない。おやつにも反応しない。声をかけただけで唸ったり攻撃的になる…といった場合は、痛みがあったり異常なストレス状態にあることが多いです。

「震え」と「唸る・鳴く」にタイムラグがあり、飼い主さんがその関連性に気づいていないことも多く、震えていると来院されたときに、「抱き上げようとしたときに痛がりませんでしたか?」と聞くと「そういえば、一昨日に・・・」と思い出されることも。震えの原因が痛みだけなら、鎮痛剤で治り、飼い主さんも痛みのパターンがわかってくれば、薬の内服でコントロールできるようになります。

 

【震えではなく痙攣の可能性も】

震えだと思って来院されて、てんかんだったということもあります。獣医師には、痙攣や発作のイメージができていますが、初めて見る飼い主さんには痙攣と震えの違いは難しい。痙攣は神経症状です。派手にガタガタ震えたり、急に震えてひっくり返ったりすればわかりやすいのですが、軽いものは難しい。老犬で定期的に軽い震えを繰り返す場合は、脳に何らかの障害があることが多いです。病院での相談時に、震えているときの様子や周りの状況などを動画で撮ってきてもらえると、診断しやすいです。

 

【震え以外の症状も出ている場合】

震えで病院に行っても、はっきりした回答が得られないことも多いです。様子見で大丈夫かどうかを一緒に考えてもらう、ぐらいのスタンスで相談されるのがいいと思います。どうしても原因をはっきりさせたい場合は、疑われる原因を一つずつ検査で調べていくしかありません。費用はかかりますが、しばらく検査をしていなかったり、シニア期に入ったタイミングなどで、検査に踏み切るのも一つの決断です。

本当に具合が悪いときは、別の症状を伴っていることが多いです。例えば中毒なら、震えだけでなく、黄疸や下痢、吐く、食欲がなくなるなどの症状が時間を追って出てきます。食べた直後ではなく、時間が経ってから現れます。震え以外の症状が出ていたら危険信号なので、様子見をせず、すぐに動物病院に連れて行ってください。

 

【老犬の震え】

老犬の場合は、筋力低下でじっと止まっていられず震えることがありますが、筋肉がやせてきて太ももが薄くなっているので、触診ですぐにわかります。

若いときと違って寒さにも弱くなります。在宅中はエアコンを付けていても外出時は切ってしまうお宅が多いようですが、温かいベッドに潜り込むなど、留守中ちゃんと防寒ができているのか、確認してください。若ければ、寒いなと思ったら起きて移動できますが、老犬は眠りが深すぎて、夕方になって気温が下がっているのに、冷たくなった床の上で寝続け、体が冷え切ってしまうことがあります。また咳が出たりもするので、温度だけでなく湿度の調節も必要になります。

 

思い込みによる、原因の決めつけは厳禁!

犬が震える理由は本当にたくさんあります。原因を見極めるにはよく観察するしかありませんが、観察時に、飼い主さんは原因を決めつけないことが大切です。寒くて震えているだけなのに、痛いと捉えたり、痛くて震えているのに脅えていると思ったり。動物病院での問診時にも、勝手な思い込みで原因を決めつけず、どんな状況で震えたのか、先入観のない客観的な情報を伝えるようにしてください。

 

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箱崎加奈子

獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルクリニックまりも 院長 麻布大学獣医学部卒。 気軽に立ち寄れるペットオーナーのためのコミュニティスペースを目指し、「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」を東京都世田谷区、杉並区に開業。病気はもちろん、予防を含めた日常の健康管理、ケア、トリミング、預かり、しつけなどを行う。2020年よりピリカメディカルグループの運営会社 株式会社notに参画。現在、ピリカメディカルグループ総院長を務める。 ▶アニマルクリニックまりも ▶女性獣医師ネットワーク

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