犬の誤飲。事例、対処法、予防策など[獣医師コラム]

ちょっと目を離したすきに、愛犬が「ボールを飲み込んじゃった!」「もしかしてチョコを食べたかも…」。飼い主さんの不注意で、命を落とすこともある危険な誤飲。今回は、その処置と予防策について取り上げます。

愛犬の“あるある”誤飲事例とは

まず、誤飲の代表的な事例をいくつか挙げてみましょう。似たような経験をされた飼い主さんもおられるのではないでしょうか?

事例1 ミニチュア シュナウザー:「大きなゴムのピーピーボール」
問診では、ゴルフボールくらいのボールを誤飲したとのこと。それなら吐けるかと思ったが、念のためレントゲンを撮ったら大きなゴムボールで、結局、開腹手術で胃を切開し、摘出することに。飼い主さんの報告を鵜呑みしてはだめというケース。

事例2 アメリカン コッカー スパニエル:「ティッシュ1箱分」
ティッシュ1箱分を食べて来院。攻撃的な犬だったので吐かせることが難しく、入院させて便で出るのを待った。このコは何度も誤飲を繰り返す常習犯。

事例3 柴犬:「庭の落ち葉」
注意しても、毎年秋に、庭の落ち葉を食べてしまう柴犬。何度も開腹手術を行い、腹筋に腸が癒着してしまっており、開腹手術の一刀目で大出血。異物は取れたものの、以後、開腹手術は難しい状態に。その後、お腹のがんにかかったが、治療が難しかった。

事例4 ミニチュア ダックスフンド:「トウモロコシの芯」
急に血の混じったものを何度か吐き、黒いものが出てきた。夜間病院で2~3ヵ月前に食べたトウモロコシの芯だと判明。食べさせてはいけないものだという認識が飼い主さんになかったのが原因。誤飲後、すぐに症状が出るとは限らないという事例でもある。

素人判断は危険、動物病院で相談を!

誤飲をした場合、食べた直後で吐けるものなら吐かせた方がいいですが、その判断は食べた物にもよるので、動物病院で相談するのがベストです。どうしても自宅での処置が必要な場合は、次のような方法があります。

塩で吐かせる
塩を飲ませて吐かせる方法が、ネットなどでも紹介されています。大量の塩を水に溶かしたり、あるいはそのまま飲ませますが、吐けないことも多く、時に塩中毒で亡くなることもあるので、安易に行うのは危険です。

オキシドールで吐かせる
私の病院ではオキシドールで吐かせています。分量は小型犬で原液30ccぐらい。吐けなくても泡になって終わりですが、それでも胃は荒れるので、その後血を吐くなどの症状が出ることもあります。

 

動物病院ではどんな処置を行うの?

誤飲の診断では、日頃から異物の誤飲癖があるかないかはとても重要なポイント。誤飲癖がある場合は、必ず獣医師に伝えてください。病院では主に次のような処置を行います。

吐かせる
レントゲンを撮って、異物の大きさや位置を確認。吐かせられそうなら吐かせます。

内視鏡による摘出
吐かせられない大きなものについては、麻酔をかけて内視鏡で取り除きます。翌日麻酔が覚めたら帰宅できます。

開腹手術による摘出
内視鏡で取れないものは、開腹手術を行います。数日から1週間の入院に。

様子見をする
本当に食べたかどうかがわからなかったり、レントゲンを撮っても何も写らなかったりで、そのまま様子を見ることもあります。経過観察する場合は、ちゃんと食べて飲んでいるか、便が出ているかをチェック。腸に詰まっていれば、飲まず食わずになるか、食べても吐いたり下痢になったりの症状が出てきて、緊急開腹が必要になります。

開腹手術は何回でもできますが、詰まった部分の腸が壊死していると、そこをカットしてつなげるため、腸が短くなります。手術をくり返す度に腸が短くなって癒着が進み、どんどん手術がしづらくなっていきます。結果、他の病気の治療に差し障りが出ることも。手術をくり返すコは、飼い主さんが誤飲をしてしまう環境に置いていることが多いんです。犬が悪いのではなく、飼い主さんの管理の問題です。

 

飼い主さんが、“誤飲をさせない”環境づくりを

よくある誤飲は、トウモロコシの芯や大きめの果実の種(桃、プラムなど)、焼き鳥の串、ボールなどのおもちゃ。それ以外に、ストッキングやメガネなど、飼い主さんのにおいのついたものを黙々と食べるコもいます。

誤飲の原因を部屋に置かない
食べることがわかっているなら、犬がいる部屋には、食べられないサイズのものしか置かない、部屋の中にゴミ箱を置かないなどの対策を。

犬を退屈させない
たいていのコは一頭で置いて行かれたときに、暇で食べてしまうことが多いので、散歩の時間や管理の仕方を見直しましょう。

「離せ」のトレーニングを
犬がくわえているものを飼い主さんが取ろうとするのが最も危険で、取られまいと思って飲み込んでしまいます。また犬が落ちたものをパッとくわえたときに、飼い主さんが「ダメ!」と言った瞬間に飲み込んでしまうこともよくあります。ボール遊びで「離せ」のコマンドを練習して、どんなものをくわえていても、落とす癖をつけておきたいですね。

腸に詰まって治療が間に合わなかったり、喉に詰まらせて窒息したり、誤飲で命を落とすことも少なくありません。誤飲は問題行動と同じで、常時やらせていると癖になってしまいます。飼い主さんが気をつけて、犬が誤飲できない環境を作るしか予防の手だてはありません。

 

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箱崎加奈子

獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルクリニックまりも 院長 麻布大学獣医学部卒。 気軽に立ち寄れるペットオーナーのためのコミュニティスペースを目指し、「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」を東京都世田谷区、杉並区に開業。病気はもちろん、予防を含めた日常の健康管理、ケア、トリミング、預かり、しつけなどを行う。2020年よりピリカメディカルグループの運営会社 株式会社notに参画。現在、ピリカメディカルグループ総院長を務める。 ▶アニマルクリニックまりも ▶女性獣医師ネットワーク

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