愛犬が足を痛がる、かばう。骨・関節のトラブルと家庭でできるケア(ヘルニア、膝蓋骨脱臼、骨折など)[獣医師コラム]

犬は足に痛みがあると、キャンキャンと鳴いたり、足が地面につけられなかったりします。小型犬なら痛くても、ぴょんぴょん跳んで3本足で歩けますが、大型犬だとそうはいかず、痛い方の足をかばうような歩き方をします。

今回は、犬の足のトラブルについて、よくある病気と、家庭でできるケアについて取り上げます。

 

愛犬の歩き方に、こんな異常はみられませんか?

例えば、椎間板ヘルニアだと、抱っこすると痛がって鳴いたり、足の甲を地面につけて歩く“ナックリング”がみられることがあります。
膝蓋骨脱臼はスキップするような歩き方が特徴ですが、痛みがなければ普通に歩いていることも多く、飼い主さんが気づかないことも多いです。膝蓋骨脱臼が引き金になって十字靭帯が切れると、足が上がったまま下りなくなることも。

骨折や靭帯の断裂、股関節がはずれているときは、足をつくことができず、歩けないので、飼い主さんにもすぐにわかります。骨も靱帯も異常がないのに足がつけないときは、捻挫かもしれません。

歩く様子をチェックするときのポイントとしては・・・

4本足で歩けているか。
足を上げている場合は、いつもなのか、たまに上げているだけなのか。
足を上げているのは止まった時だけで、歩き出したら4本足で歩けるのか。
4本足で歩いていても、足を引きずったり、足が震えていたりしていないか。

普段から愛犬の歩き方を観察して、異常がみられたら動物病院へ。
また膝蓋骨脱臼の素因があると診断されているコは、とくに異常はなくても、病院に行く機会があれば、その都度、経過を診てもらうことをおすすめします。

 

犬に多い骨・関節のトラブルとは

●椎間板ヘルニア
好発犬種であるMダックスの飼育頭数が減っているせいか、診断件数も麻痺を起こして手術するケースも減少してきています。
椎間板は、背骨を形成する椎骨と椎骨の間でクッションの役割をしており、椎間板ヘルニアとは、ゼリー状の椎間板物質が骨のように硬くなり、脊髄側に飛び出して神経を圧迫する病気です。
Mダックスの場合は腰椎に症状が出やすく、最初は腰の痛み、次に足のもつれ、麻痺の順で進行していきます。

●膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝のお皿が正常な位置から外れやすかったり、外れっぱなしになったりする病気で、小型犬に多くみられます。先天的な病気であることが多く、子犬のときに触診すればわかります。
膝蓋骨脱臼は必ずしも症状が出るわけではなく、そのままで問題なく生活しているコもいます。犬自身が外れない歩き方、痛くない歩き方を身につけてうまく付き合っているケースもみられます。
手術をするか否かは、進行度合いを示すグレード評価で判断します。

●骨折
骨折原因の多くは、ソファからの飛び降りや、抱っこしていての落下など。犬種的に多いのはイタリアングレーハウンドで、骨が細いためちょっとしたことで折れます。治療は、手術、またはギプス固定のケースバイケースです。

●関節炎/その他
関節炎はシニア犬や、他の関節疾患のあるコが二次的に発症しやすいです。
その他、足の痛みが想定される病気としては、リウマチ、レッグペルテス(大腿骨頭壊死症)、骨肉腫など。
リウマチはシェルティに多く、レッグペルテスは2~3歳の若いトイプードルやヨーキーに。骨肉腫、股関節形成不全は大型犬に多くみられます。

 

家庭で心がけたい骨・関節のケア

●運動制限は大事だが、動かさないのもNG
家庭でできるケアとしては、太らせないことや運動制限をかけること。
まったく運動をさせないのではなく、スポーツ選手が靱帯や関節を傷めても筋肉で補強するのと同様、犬もリードを付けての適度な引き運動を痛がらない程度に行うことをおすすめします。
1カ所だけに負担がかかる行動や、ドッグランで極限まで興奮させて走らせることなどは厳禁です。

足に痛みが出たときは、足を使わせず、安静を保つのが基本。普段から家の中で大人しくできるトレーニングや、ケージに入る習慣を。でないと、いざというとき、安静を保つことができません。
膝蓋骨脱臼の素因のあるコはとくに、ケージの習慣をつけておくことが大切です。

●床材や家具にも配慮を
滑りやすい床はカーペットを敷いたり、コーティングするなどの配慮を。床はコーティングしても滑るので、普段いる部屋や、ケージ管理をするならケージ内だけでもカーペットを敷くといいでしょう。足裏のパッドの毛や爪も切っておくこと。

ベッドやソファからの飛び降りで骨折するケースが増えています。犬用のステップやスロープを置いたり、ベッドやソファを高さの低いものにするのも危険防止につながります。

●サプリメントは成分量をチェックして
グルコサミン、コンドロイチン、MSM、緑イ貝などのサプリメントは、関節炎や老化で関節の動きが悪くなってきているコには効果があるようです。
ただし、サプリメントは有効成分の含有量がポイント。飼い主さんは「〇〇入り」と書いてあればどれも同じだと考えがちですが、商品によって質が全然違います。私は「この体重なら、これぐらいの量が入っているものを」と、選ぶ目安をお伝えしています。きちんと量を摂らなければ効果は出ません。

 

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箱崎加奈子

獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルクリニックまりも 院長 麻布大学獣医学部卒。 気軽に立ち寄れるペットオーナーのためのコミュニティスペースを目指し、「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」を東京都世田谷区、杉並区に開業。病気はもちろん、予防を含めた日常の健康管理、ケア、トリミング、預かり、しつけなどを行う。2020年よりピリカメディカルグループの運営会社 株式会社notに参画。現在、ピリカメディカルグループ総院長を務める。 ▶アニマルクリニックまりも ▶女性獣医師ネットワーク

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