[獣医師コラム]狂犬病のはなし 狂犬病ウイルスが日本に侵入しないとは限りません

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7月、台湾で野生動物での狂犬病の感染が確認され、飼い犬にまで感染が拡大しました。日本では昭和32年以来、国内での発症はありませんが、決して油断はできません。

 

すべての哺乳類が感染する可能性のある
恐ろしい病気

狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染することによって発症し、すべての哺乳類に感染する可能性のある人獣共通感染症です。感染動物に咬まれることでウイルスが体内に侵入し、抹消、中枢神経へと広がり、脳炎や脊髄炎などの神経障害を引き起こします。治療法はなく、発症すると致死率はほぼ100%という、たいへん恐ろしい病気です。“狂犬病”という名前から、「犬」の病気だと勘違いされがちですが、猫や人間も感染する病気なのです。

 

なぜ“犬”に予防接種の義務が?

狂犬病予防法ができたのは、昭和25年。その頃は多くの犬が狂犬病と診断され、人も狂犬病に感染していました。アライグマ、キツネ、コウモリなども狂犬病の媒介動物になり得ますが、人の身近で暮らし、咬傷のリスクも高い犬だからこそ、法律で予防接種が義務付けられたと言えます。その成果もあって、7年後の昭和32年以降、日本では狂犬病の発生は報告されていません。

しかし、平成23年の厚生労働省のデータによると、現在日本で飼育登録されている犬は約685万頭、そのうち、狂犬病予防接種をしている犬は約498万頭、接種率は72.8%です。登録をしていない犬もいることを考えると、接種率はもっと低いということになります。WHO(世界保健機関)によると、蔓延防止の目安は70%ということですから、万一日本に狂犬病ウイルスが侵入してしまった場合、決して油断できない状況なのです。

 

狂犬病の予防接種は愛犬・社会を守る手段

平成18年に、海外で犬に咬まれた男性が帰国後に狂犬病を発症して亡くなったケースがありました。日本では発症がない故に危機感が薄いのかもしれませんが、世界中をみれば毎年5万人以上もの人が狂犬病で命を失っています

今回、隣国の台湾でも感染が確認されました。検疫で感染動物の侵入を防ぐことが最も重要ですが、輸入品のコンテナの中に野生動物が紛れ込んでいるという可能性もゼロではありませんし、最近では住宅地でサルやアライグマなどの野生動物(あるいは野生化した動物)に人が咬まれるケースもあります。犬だってそういった動物と接触する機会があるわけですから、愛犬を守る意味でも狂犬病の予防接種は非常に重要です。

 

関連リンク

Petwell 犬の病気事典「犬の狂犬病」

 

 獣医師 小林豊和

グラース動物病院 院長

日本大学大学院獣医学研究科修了。1993年、東京都杉並区にグラース動物病院開業。生涯のホームドクターを目指し、ホスピタリティを重視した診療を実践。スタッフの得意分野を生かしたチーム医療で、きめ細かなケアをめざす。食事についての造詣も深く、オリジナル無添加ドッグフードの監修も。共著に「獣医師さんが教える手づくり愛犬ごはん(主婦の友社)」「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法(WAVE出版)」など、著書・監修は多数。

 

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