[獣医師コラム]猫の震え・けいれんは侮るべからず!気になる様子は動画に撮って病院へ

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寝ているときに足がピクピクする。時々、うずくまってプルプルしている。愛猫に、そんな気になる震えやけいれんはありませんか。恐かったり寒かったりで、よく震える犬と違って、猫は普段震えることはほとんどないので、もしかしたら病気のサインかもしれません。今回は、考えられる「震え・けいれん」の原因と対処法について取り上げます。

 

猫に少ない「真性てんかん」

震えやけいれんといえば、真っ先にてんかんを思い浮かべがちですが、実は猫のてんかんは、犬に比べて非常にまれ。また真性てんかんは治療が難しく、薬でのコントロールはほとんど期待できません。ただし猫にはめったにない病気ですから、猫が震えているとしたら、多くはてんかん以外が原因です。まず、そのことを知っておいてください。

 

安心できる震えはない

「寝ているときにピクピクするのは、夢を見ているだけですよね?」とよく聞かれます。動物にもレム睡眠があるので、そのとき眼球が動いていれば、おそらくレム睡眠でしょう。しかし、震えを安易に判断するのは危険です。
犬は恐怖や緊張、寒さなどから震えることがよくありますが、健康な猫が普段、震えることはめったにありません。だから震えは侮れないんです。なぜなら、全身的な病気と関わっていることが非常に多いからです。とくに「今までなかったのに、このところ…」という場合は、何かある可能性が高い。「安心できる震えはない」と考えたほうがいいでしょう。

 

てんかん以外の「震え・けいれん」の原因とは?

それでは、猫の震えやけいれんには、どんな原因が考えられるのでしょうか。

●筋肉量の低下
最近はシニア猫の肥満が問題視されがちですが、肥満しやすいのはせいぜい11、12歳ぐらいまで。むしろ、それ以降は消化機能が衰えてきて、同じ量を食べても痩せてくるコが多い。ガリガリに痩せて筋肉量が落ち、呼吸をするのにも震えが出たり、体温調節がうまく行かずに震えていることもあります。

●関節や口の痛み
猫の震えで、一番よく目にするのは痛みから来ているケースかもしれません。比較的わかりやすいのは、関節が痛いとか、歯周病口内炎で口が痛いなどでしょうか。

●心筋症、腎結石・尿管結石
猫に多い心筋症や、腎結石・尿管結石なども痛みを伴う病気です。ひと昔前までは、猫の泌尿器疾患といえば、尿路閉塞膀胱炎などの下部尿路疾患ばかりが注目されていましたが、最近は腎結石や尿管結石が非常に増えてきており、健康診断でもレントゲンと腹部エコー検査が重要になってきています。

●糖尿病、尿毒症
糖尿病による神経障害や低血糖からけいれんを起こすこともありますし、高齢猫に多い腎不全で尿毒症からけいれんを起こすことも。

●電解質異常や内分泌異常
体内の電解質には適正な濃度がありますが、腎機能低下や内分泌異常などで、濃度に異常をきたすことがあります。「低カリウム血症」「低カルシウム血症」になると、けいれんを起こすことがあります。
また栄養不良や、非常にまれなケースですが、上皮小体機能低下症のような内分泌疾患でも起こります。

●筋肉の病気
重症筋無力症など、特殊な筋肉の病気もあります。

 

猫にも、「二次性てんかん」はある

てんかんは、発作をくり返す脳の疾患です。いろんな型がありますが、泡を吹いて倒れるような全般発作であれば、まずよだれが垂れ始め、身体が突っ張り、次にけいれんが来て、その後虚脱が起こる。これら一連の発作がだいたい3分以内に終わる。これが「てんかん様発作」と呼ばれるものです。

猫には真性てんかんは少ないと言いましたが、てんかん様発作はあります。例えば脳腫瘍があったり、血圧が高くて微細な脳内出血が起こり、それによって脳が損傷し、二次性てんかんが引き起こされることがあります。昔は、犬や猫には脳出血や脳梗塞はないと言われていましたが、今、MRIやCTが普及してきて、猫には確実にあることが、そして犬にもありそうだということがわかってきています。

 

愛猫に気になる震えやけいれんを見つけたら…

では、愛猫に気になる震えやけいれんを見つけたときは、どう対処すればいいのでしょうか?

●持続時間と頻度をチェック
震えやけいれんがどれぐらいの時間続くのか、何度も繰り返しているのか、「持続時間」と「頻度」が極めて重要なので、必ずチェックしてください。時間と頻度によっては、大ごとになることも、それほど気にしなくていいこともあります。

●動画に撮って病院で相談
時間もそれほど長くなくて、普段の健康状態も良く、食欲もあり排泄もしっかりしていて、多飲多渇もない状態であれば、気になる震えやけいれんを動画に撮って、動物病院で相談するのが最も早い解決法だと思います。今はスマホで簡単に動画が撮れますから。

●てんかん様発作なら、一刻も早く病院へ
泡を吹いているようなてんかん様発作の場合は、動画を撮っている状況ではなく、一刻も早く病院へ。人間のてんかん発作だと、舌を咬まないようにとスプーンを咬ませたりしますが、猫はそんな心配はいりません。飼い主さんが咬まれたり引っ掻かれたりしないように注意しながら、猫をそっとタオルか何かで包んでキャリーに入れて連れて行ってください。

 

原因究明には、「血液検査」と「尿検査」が必須

なぜ震えているのかは、病院で検査をして突き詰めていかないとわかりません。とくに今までなかったのに震えるようになった場合は、全般的な「血液検査」と「尿検査」が必須です。電解質、カリウム、カルシウム、中性脂肪、コレステロール…等、スクリーニングといわれる全項目を調べて、原因と考えられる可能性を除去していきます。

結果、異常が見つからなければ、そのうえでもう一度動画をチェックして、震えやけいれんが軽ければ、定期的な健康診断で様子を見て行くだけでいいかもしれません。あるいは、それでもなお明らかにおかしいと思われる震えやけいれんであれば、確定診断のために、さらに専門的な検査へ進むことになります。抗アセチル抗体のチェック、筋電図、内分泌のチェック、全身のレントゲンやMRI検査が必要になることもあります。

今、愛猫に気になる震えやけいれんがあって、ネットで検索している飼い主さんがいれば、ぜひ動画に撮って病院で相談してください。もし健康診断を受けていないのだったら、この機会に全般的な血液検査と尿検査を受けることをおすすめします。震えやけいれんを放置するのは、大変危険です。

 

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獣医師 内田 恵子
元ACプラザ苅谷動物病院 専務取締役 統括院長

JAHA認定獣医内科医
JAHA認定パピーケアスタッフ
日本小動物血液療法研究会会長
内科・神経科・行動学を中心に、脳と心の治療の研究がライフワーク。

 

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