[獣医師コラム]猫のグルーミング 毛を舐める猫のために気を配りたい、空気中の化学物質とデンタルケア

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体をくまなく舐めて毛づくろいをするグルーミング(セルフグルーミング)は、猫の特徴的な習慣の一つです。猫は1日の3分の2を寝て過ごし、残りの時間の半分をグルーミングに費やしているとも言われ、つまり、1日4時間をグルーミングに費やしていることになります。今回は、しょっちゅうグルーミングをしている猫のために、飼い主さんに気づかってほしいことについてお話しします。

 

グルーミングの目的はいろいろ

そもそも、猫はなぜ、こんなにも一生懸命にグルーミングをするのか、ご存じですか? 毛を舐めて体をきれいにしているだけではなく、実はいろいろな目的があるのです。

抜け毛やフケなど、体についた汚れを取り除くことで皮膚の清潔を保つ。
舐めることで皮膚の血流を促進する。
狩りのときに獲物に気づかれないように、被毛についたニオイを落とす。
暑いときには体を舐めて毛を濡らし、蒸発するときの気化熱で体温調節をする。
寒いときには被毛の間に空気を入れて、保温効果を高める。
不安を感じたりイライラしたりしたときに、舐めて気持ちを落ち着ける(転位行動)。
など

 

毛を舐めればいろいろなものが体内に入る

猫が念入りにグルーミングをすれば、舌で舐め取ったものも異物として体内に取り込まれていきます。毛づくろいで飲み込んだ毛が胃や腸などの消化管の中で停滞し、吐き出すことも排泄することもできなくなる【毛球症】は、皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。

それから、空気中を漂っているさまざまな浮遊物の存在も気になります。ちりやほこり、タバコの煙なども猫の被毛の表面に付着するからです。タバコの副流煙による受動喫煙は人でも問題になっていますが、猫は鼻や口から吸い込むだけでなく、グルーミングで舐めた分も体内に取り込まれてしまいます。アメリカで行われた研究では、喫煙者がいる家庭の猫は、いない家庭に比べて、悪性リンパ腫と口腔がんの発生率が高かったと報告されています。

猫の立場にたって、空気中を漂う化学物質などについて考えてみてください。タバコだけでなく、殺虫剤や消臭スプレー、アロマオイルなども同様です。原液が直接猫の被毛につかないように注意することはもちろん、猫のいる空間ではなるべく使用を控えるなど気を配りましょう。

 

口が汚れていれば体も汚れる

また、もう一つ気にかけてほしいのは、猫が体を舐めているその口の健康状態です。歯石だらけ、歯周病の口では、舐める唾液の中に口内細菌がたくさん含まれています。汚れた口で体を舐めることで、皮膚炎や傷など皮膚トラブルが悪化したり、口臭が被毛に移って体が臭うようなったりすることもあります。猫では、グルーミングをするという点からも、歯みがきなどのデンタルケアはしっかり行いたいものです。

 

グルーミングの手助けをしよう

グルーミングは猫まかせにしないで、飼い主さんも手助けをしてあげてください。ブラッシングやコーミングで抜け毛を取り除くことは毛球症の予防になりますし、被毛の表面についた汚れを落とすこともできます。ブラッシングやコームで表面を撫でるのではなく、根元までしっかりとかしましょう。
人用の毛足が少し長くて弾力性のある歯ブラシで、猫の体をブラッシングするのもいいでしょう。歯ブラシで撫でられるのは、猫が自分の舌で体を舐めるのと似たような感触があるので、猫も喜んで気持ちよさそうに受け入れてくれます。顔周りなどを撫でて歯ブラシに抵抗がなくなれば、歯みがきを慣らすことにもつながっていきます。

また、喫煙者がいるご家庭では、被毛に付着したタバコの煙に含まれる化学物質を取り除くために定期的なシャンプーができれば理想的です。シャンプーが難しければ、濡らしたタオルで体を拭くだけでもずいぶん違います。
体を覆う被毛や皮膚は、体の中で一番大きな臓器でもあるのです。猫は体をくまなく舐めるのですから、被毛や皮膚についている異物も体に取り込みやすいということをくれぐれも忘れないでください。

 

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獣医師 内田 恵子
元ACプラザ苅谷動物病院 専務取締役 統括院長

JAHA認定獣医内科医
JAHA認定パピーケアスタッフ
日本小動物血液療法研究会会長
内科・神経科・行動学を中心に、脳と心の治療の研究がライフワーク。

 

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